小6特別活動 学級活動編「夏休み発表会をしよう」指導アイデア

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【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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夏休みあけの学級経営リスタート特集

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小6特別活動の指導アイデアです。9月は、<夏休み発表会をしよう>を扱います。

久しぶりの学校に緊張感をもつ児童が安心感をもてるようにし、友達との関わりをもち、2学期もクラスの友達と協力しながら学級生活への意欲を高めていくという発表会の実践を紹介します。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・野村一葉
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 埼玉県公立小学校校長・大澤 崇

年間執筆計画

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4月 学級活動⑶ ア 6年生になって
5月 学級活動⑴ 6年〇組スタート集会の計画を立てよう
6月 学級活動⑵ ウ(イ) SNSとの付き合い方
7月 学級活動⑴ 1学期がんばったね集会をしよう
9月 学級活動⑴ 夏休み発表会をしよう
10月 学級活動⑶ ウ 自主学習の工夫
11月 学級活動⑴ 学級読書祭りをしよう
12月 学級活動⑵ ウ 病気の予防
1月 学級活動⑴ オリジナルカルタをつくろう
2月 学級活動⑶ ア もうすぐ中学生
3月 学級活動⑴ 学級お別れ会をしよう

本時のねらい

長い夏休みが終わり、久しぶりに会うクラスの友達や学校の雰囲気に緊張感をもつ児童が安心感をもてるようにします。また、夏休みの楽しかったことやがんばったことを互いに伝え合いながら意図的に友達との関わりをもてるようにすることで自己肯定感を高めるとともに、多くの行事がある2学期もクラスの友達と協力しながら取り組もうとする、学級生活への意欲を高めていきます。

事前の活動【計画委員会で学級会の準備】

① 話し合うことを見付ける

夏休みが終わりに近付くと、学校が始まることへの緊張や学校へ向かう気持ちの切り替えができない子供もいるのではないかと思います。そうした子供が、2学期も学校へ行くのが楽しみになるようなメッセージを伝えられるとよいでしょう。

<ICT端末の利用>
ICT端末を活用し、夏休みが終わる前に子供たちへメッセージを送ります。夏休みにがんばったこと、楽しかったこと、宿題で製作した作品などを夏休み明けに紹介し合うことを伝えておきます。また2学期の行事を事前に伝えておくことで子供たちに見通しが生まれ、学級会で話し合いたいことを考えるきっかけにもなります。

②話し合う内容を決める

話し合う内容は、時期に合うものや必要感があるものなどから、学級全員で決めていきます。計画的に話合いを行うために、学期を見通して議題案を考えておく方法も考えられます。

夏休み明けすぐの学級会で話し合ったほうがよい議題は何かな。

みんなの夏休みの思い出を聞いて、学校とは違った友達のことを知りたいな。

今しかできないし、夏休み発表会について次の学級会で話し合ったほうがいいと思うな。

活動計画をつくる

活動計画は、教師と計画委員の児童で作成します。提案理由は提案者を交えながら必要感のある話合いとなるようさらに推敲し、全体で話し合うべき内容(「話し合うこと」)も考えていきます。「話し合うこと」は、①「何を発表するか」、②「発表会の工夫」、③「役割分担」などが考えられます。

<提案理由>
楽しかった夏休みが終わって、学校が始まりました。久しぶりに友達に会えてとてもうれしかったけれど、少し緊張してしまいました。そこで、お互いが夏休みにがんばったことや楽しかったことを発表する夏休み発表会をしたいです。そうすると、クラスの友達と話すきっかけにもなって、たくさんの学校行事がある2学期もクラスみんなで仲良く協力できると思い、提案しました。

本時の展開【学級会をしよう】

話合いは、話し合うこと①~③のそれぞれについて「出し合う」「くらべ合う」「まとめる(決める)」の流れで進めていきます。
「くらべ合う」で意見交換をしていくと、子供たちの話合いがいくつかの意見に絞られてきます。そこから意見をまとめていくための大切なこととして、以下の点に配慮していきます。

〇提案理由や決まっていることに沿った意見になっているか。
〇学級全体のことを考えながら意見をまとめようとしているか。
〇多数の意見にとらわれず、少数意見も大切にしながら意見をまとめようとしているか。

自分にとっても、学級にとってもよりよいものとなるよう安易に賛成の多い意見に決めず、一人一人の考えや思いを理解し合いながら合意点を見付けていきます。

(司会)
そろそろ意見をまとめていきたいのですが、どうですか。

何を発表するかについては旅行に行った思い出がいいと思います。いろいろ楽しい思い出ができたと思うからです。

確かに旅行に行った思い出は伝えたいけれど、旅行に行ってない人が話せないので反対です。夏休み中の家での過ごし方についての発表なら全員話せるのでみんなのことが知れると思います。

それなら、夏休みで楽しかった思い出発表はどうですか。旅行に行ったことの意見も、家でしたことの意見も理由に楽しかったからと入っています。楽しかった思い出ならみんなが話せるし、友達の楽しかったことを知ることができて、お互いが話すきっかけにもなります。

私も○○さんの言った意見に賛成です。学校でもできそうな楽しかった思い出があれば、学級会などにも生かせそうだからです。

(司会)
それでは、夏休みで一番楽しかった思い出発表に決めて困ることはないですか。
……ないようなので夏休みで一番楽しかった思い出発表に決めたいと思います。

意見をまとめるための合意形成の流れとして、以下のようなものが考えられます。
〇新しい考えをつくる……複数の意見のよいところを合わせて、別の新しい考えをつくります。
〇意見を合わせる(合体)……それぞれの内容を少しずつ全部行えるようにします。
※意見を合わせる際には、「熱いコーヒーと冷たいコーヒーを合体してぬるいコーヒーにする」のように、誰も求めていない意見にならないようにしなくてはいけません。意見をどのように合体するかなど共通理解を図ることが大切です。
〇優先順位を決める……今回の議題ならではの意見を優先して決定し、今回取り扱わない意見をどうするか確認をします。
〇条件を付ける……心配意見を解決する条件を明らかにしながら決めていきます。

学級会で使ったまとめ方を子供が思い出せるように記録しておくことも考えられます。まとめ方を学級会コーナーに掲示したり、学級会ノートにプリントとして貼ったりすることで、話合いのまとめ方についての指針となることもあります。
最初から「こうしたまとめ方があります」と示してしまい、まとめ方を教えてその形に当てはめるのではなく、子供たちが話合いを通してまとめ方に気付いていくようにすることが大切です。
実践するために話し合っていることを確認し、合意形成することが目的にならないようにしましょう。

事後の指導【話し合って決めたことを実践しよう】 

集会に向けた準備

実践に向けて、学級会で話し合った熱が冷めないうちに準備を進めていくようにします。話し合うこと③の役割分担も学級全員が担当することで、学級への所属意識や自己有用感を高めることができます。また、夏休みの課題で製作した作品などを飾るスペースなどをつくり、集会に向けた気持ちを高めていきます。

集会

夏休みの思い出や楽しかったことをお互いに語り合い、「2学期もこのクラスのみんなでがんばりたい」という思いをもてるようにします。学期初めで1時間として集会をとることが難しい場合は、キャンペーン期間として、休み時間などを使って数回に分けて行うことも考えられます。

振り返り

実践の様子を撮影した写真などをもとにしながら、振り返りを行います。「夏休み発表会を通して、友達の違った一面を見ることができた」「2学期の学級生活がさらに楽しみになった。これからも友達と協力していきたい」など、実践のめあてを達成できた児童や次回へ生かしたい点などに気が付いている児童の振り返りは、全体でも共有するとよいでしょう。

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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