教師も子どももハッピーに! 授業と学級経営を楽しくする5つのアイデア

連載
松下隼司の笑って!!エヴリディ

大阪府公立小学校教諭

松下隼司

夏休み真っ只中。思いっきり羽を伸ばしている先生もいれば、教材研究や研修に頑張っている先生もおられることでしょう。過ごし方は皆さんそれぞれですが、こんなときこそ、学級づくりや子どもたちとの関係づくり、そして自分が教師となった原点について、思いを巡らせてみてはどうでしょう? きっと皆さん多かれ少なかれ、教師も子どもも全員が楽しくハッピーであることを考えておられるのではないでしょうか。今回は松下先生が、ハッピーになれる5つのアイデアについて、ご紹介します!

指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司

劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。

1. 「ゲームやSNSよりも楽しい」と感じるような学級経営や授業を目指して

楽しいと感じることは人それぞれですが、「ゲームやYouTube、TikTok、LINEなどのSNSが大好きな子どもが多いな~」というのが私の実感です。

ゲームやSNSのやり過ぎから遅刻や欠席をする子どもは年々増えてきており、さらには、これらが原因でのトラブルも増えています。低年齢化も進んでいます。

私は、「学校生活に悪影響になるほどやらんといて!」と、教師目線で怒りを感じることがありました。

でも、俯瞰して子ども目線で考えると、責任の根っこは子どもにはないと気づきました。親のせいでも、ゲームを作っている会社のせいでもありません。

私自身の授業や学級経営が楽しくないことが根本的な原因だと思ったのです。

そして、『ゲームやSNSよりも楽しい』と子どもが感じるような学級経営や授業をできるようになりたい、という思いが、常に心の中を占めるようになりました。

私はかつて、子供たちに学校の決まりを守らせるため、常に監視しながら威圧的な指導をし、学校生活の安心・安全を保障しようとして、失敗した経験があります。

その年の前年度に荒れていた学級の担任となり、休み時間は、子どもがトラブルを起こさないか、遠くから見張り続けました。でも、いくら私が「見守っている」と子どもに伝えても、子どもは楽しくありません。私自身も楽しくありません。

ある時、「どうして一緒に遊ばないの?」「そんな先生になりたかったの?」と、ベテランの先輩に言ってもらい、やっと気づきました。子ども目線で考えると、私の行動は不気味でした。だから、子どもの表情は暗くなり、問題行動が余計に陰湿化・深刻化したのです。

教師として大切にしなければならないことを忘れていました。それは「楽しく」学力を伸ばす授業づくりです。「楽しく」学級経営をすることです。

学習を「楽習」に♪  そして、学級を「楽級」に♪

2.学習を「楽習」にする3つの工夫

楽しい授業ばかりしていたら、子どもが落ち着かなくなるのでは? と不安に思われるかもしれません。私も同じ不安をもっていました。

でも、初任の頃より、少しずつ楽しい授業ができるようになってきた私の実感は、「楽しい授業が増えれば増えるほど、クラスが落ち着く」ということです。前年度は荒れていた子どもたちが、授業を真剣に受けるようになり、子ども同士のトラブルも減っていきます。

ここでは、日々の授業づくりで、おすすめの工夫を紹介します。

(1)「My教科書」を用意

教材研究用として、教科書を1冊購入します。そして、購入した教科書に、発問や指示、補助問題などを書き込みます。

子どもと同じ教科書なので、授業で教師が手に持っていても、子どもにとって違和感がありません。

教科書のコピーや、コピーを貼ったノートを教師が手に持っていると、子どもは「何が書いてあるのかな?」と気になるものです。  

しかし教科書であれば、コピーしたりノートに貼ったりする時間も省けますし、教科書を忘れた子どもに貸すこともできます。

1年間が終わったら、次年度の学級文庫に置いて、予習や復習に子どもに読んでもらうこともできますよ。

(2)楽しくない内容を楽しく

小学校高学年の国語の教科書に、孔子の論語が載っています。中学や高校でも授業で取り上げられています。

子日わく、
吾十有五にして学びに志す。
三十にして立つ。
四十にして惑わず。
五十にして天命を知る。
六十にして耳順(したが)う。
七十にして心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こえ)ず。

【口語訳】
私は、十五歳のとき、学問に志を立てた。
三十歳になって、自立できるようになった。
四十歳になると、心に迷うことがなくなった。
五十歳になって、自分の使命が自覚できた。
六十歳になると、人の言うことを素直に理解できるようになった。
七十歳になると、自分のしたいと思うことをやっても、人の道を踏みはずさなくなった。

孔子が自分自身の人生を思い返して、人間形成の過程を述べたものです。

指導書は、「孔子って、すごいね!」と解釈させる授業の展開になっています。「孔子はすごい」「自分は孔子みたいにはなれないな……」と、ありきたりの感想を持つ子どもも多いかと思います。

しかしこれでは、全然楽しくありませんよね!

そこで、論語と口語訳を何度か音読させてから、子どもに論語の内容を評価させる授業をするのです。

「孔子のことを一番すごいと思うのは、何歳のときですか? 」と子どもに考えさせてから、次の発問をします。

孔子の論語って、教科書に載るほどすごくない! と思うのは、何歳のときですか?

子どもは、「教科書に載るような言葉を、自分が評価してもいいの!?」と驚き、子ども同士で熱中して検討します。そして続々と、孔子に対して上から目線の意見が出てきます。

ぼく、12歳で中学受験するから、15歳の孔子に勝ってる!

30歳まで親のすねかじりだったのか!?

60歳まで素直に聞けなかったの!?

70歳まで人の道を踏み外してたの!?

中には、

自分は、孔子みたいにならないようにします。

と、孔子を反面教師にして意見を述べる子どもも出てきます。

隣の席同士や、班やクラス全体で検討してから、

「子(孔子)日わく」の部分を「私(自分)日わく」にして、自分バージョンの論語を書いてごらん。

と言って、論語を書かせると、さらに楽しくなります。

私日わく、
年長にして(     )。
小一にして(     )。
小二にして(     )。
小三にして(     )。
小四にして(     )。
小五にして(     )。
小六にして(     )。
中一にして(     )。
中二にして(     )。
中三にして(     )。
(  )才にして(    )。
(  )才にして(    )。

すごいこと、すごくないこと、面白いこと、恥ずかしいこと何でもいいよ♪

と説明します。

子どもが書いたノートを集めて、子どもの名前を伏せて読み上げて誰が書いたものかを当てるクイズ形式にすると、相互理解にもつながります。未来予想にもなります。卒業文集などの年度末の文集づくりのテーマにしても、楽しくなりますよ。

(3)教材研究や授業づくりは夏休みや冬休みに

私は、教材研究や授業づくりは、夏休みや冬休みの間に行っています。

放課後は会議や研修などで埋まりがちですし、子どもが学校にいる間は、子どもといることを最優先したいので、教材研究に充てられるような、まとまった時間が取れないからです。

私は、夏休みに、2学期分の教材研究と授業の準備を全てやってしまいます。丹念にしっかり時間をかけて行います。子どもが分かる・楽しい授業こそが、学級の安定と楽しさにつながると思うからです。

育児や介護などで学校に残れなかったり、家庭ではなかなか自由に使える時間をとれなかったりする方もいらっしゃると思いますが、長期休みの期間中であれば、ある程度は自由な時間を作れるのではないでしょうか? そんな時間をぜひ、子どもたちの学びの向上のために使ってみませんか?

2.学級を「楽級」にする2つの工夫

(1)教師自身の目標も子どもたちに示そう

教室内の目立つところに、クラス目標を掲示することは、皆さんよくやられているかと思います。学級目標を振り返り、今の自分たちの学級は目標の達成に近づけているか、どんな状態なのか、成果と課題を考えることができるからです。

私は、さらに、「子どもたちに求めてばかりで、自分はどうなの? 自分の教師としての目標を、ちゃんと見失わずに意識している? 振り返っている?」と思うようになりました。

そこで、学級目標と同じように、私が教師として常に意識しておきたいことも、教室の後ろの黒板に大きく掲示しました。私はイライラしやすい性格で、クラスの雰囲気を暗くしてしまうことがあるので、「笑顔」と「楽級」にしました。 

背面掲示することで、授業中、子ども越しに何度も、私の目標が視界に入ります。この掲示が、説教が必要以上に長くなってしまったり、強い叱責の口調になることを防いでくれました。教師として、温かな表情で子どもの前に立つことができ、クラスの雰囲気を良くすることにつながったと思います。

子どもだけでなく教師の目標も視覚化することで、年度当初の教師としての志を忘れないでいることができますよ。

(2)休み時間一緒に遊んで、どんな子にもアクセスしよう

私は毎日、休み時間1回は、子どもと運動場や講堂で遊ぶようにしています。

授業での教師と子どもの関係は基本、「教える側」と「教わる側」です。でも、休み時間に子どもと一緒に遊ぶと、子どもとの距離がぐんと近くなります。

これは職場での関係にも似ていますね。仕事を離れて一緒に食事をしたり、休日も会ったりすると、親しくなりますよね。

また休み時間には、学習面だけではなく、叱った子どもや、丁寧に見てあげられなかった子どもとの関係性もフォローできます。 

  • 授業で教師に叱られた子ども
  • 授業で発表しなかった子ども(おとなしい子ども)
  • 授業で教師がほめなかった子ども 

には、しっかり関わっておきたいですよね。休み時間に遊ぶと、それが達成しやすくなりますよ。

たくさんの子どもと関わることができる外遊びでおすすめなのは、鬼ごっこ(増え鬼やケイドロ)です。運動量もあり、短い時間でも体を動かしたという満足感があります。

教師は鬼として追いかける側になった方が、たくさんの子どもと関わることができます。また、教師が子どもの名前を呼びながら追いかけると、子どもはとても嬉しそうに逃げます。大人も、ほめられるとき、名前を呼ばれた方が嬉しく感じるのと似ています。

さらに、

〇〇さん、待って~!
〇〇さん、下の名前、何やったけ~?
〇〇さん、誕生日いつやったけ~?
え? 聞こえな~い。もっと近くで言って~!

などと言いながら追いかけると、子どもたちの大喜び度はさらに上がります。教師がやんちゃに鬼役を楽しむ姿を見て、子どもも嬉しく感じるようです。鬼ごっこは、休み時間だけでなく、体育の時間に行うこともできますね!


ここで紹介した実践が、先生方の楽しい授業づくり、楽しい学級づくりに少しでもお役に立てれば嬉しいです!

(引用:拙著『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』)

松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ 横井智美

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