生成AI 【わかる!教育ニュース#29】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第29回のテーマは「生成AI」です。

文部科学省が学校での生成AI活用についての指針を策定

対話型人工知能(AI)「チャットGPT」といった生成AIを使ったことはありますか。質問を投げかけると、すぐさま答えてくれる便利なものとして、話題になっています。でも、安易に使ってよいものでしょうか。

文部科学省がこのほど、学校での生成AI活用について指針をつくりました(参照データ)。生成AIを使いこなす力を意識的に育てる姿勢は重要だ、という考えに立ってまとめています。ただ、何かと懸念も多いのが、生成AI。指針は利用規約の年齢制限や、発達段階を踏まえるよう促し、学校での利用も「有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めるのが適切」と、慎重な構えです。

とはいえ、学校の外で使っている子供も少なくないと言われています。「限定的な利用」を掲げた指針も、社会に広がっている現実を見据え、情報の真偽を確かめる「ファクトチェック」の習慣付けを指導する必要性を訴えています。

具体的に、どう使えばよいのでしょうか。

指針では例として、グループの考えのまとめや、アイデアを出し合う途中で足りない視点を見付ける一助にすることを挙げています。誤りを含んだ生成AIの回答をあえて取り上げ、限界に気付かせる指導も勧めました。一方、不適切な使い方は、情報活用能力が養われていない段階で自由に使わせること。詩や俳句の創作にも、適さないとしました。

夏休みなど長期休み期間の宿題にも言及。読書感想文やリポートを含め、生成AIが出した答えを自分でつくったように提出するのは、不正行為だと理解させるよう求めました。

指針は今後、機動的に改訂する

「活用のメリットを指摘する声がある一方で、懸念も指摘される中、社会で急速に普及している。夏休みの課題に不適切に活用されることを懸念する声もあった。学校現場での活用の適否の考え方を早く示したかった」。永岡桂子文科相は7月4日の定例会見で、指針をつくった背景をそう説明しました。

生成AIを学校でどう扱うかは、中央教育審議会の特別委員会で5月から議論を重ねてきました。国際社会も教育現場での活用の問題に着目しています。5月に富山、金沢両市で行われた主要7か国(G7)教育大臣会合では、「生成AIを含めた近年のデジタル技術の急速な発達が教育に与える正負の影響を認識する」と掲げた「富山・金沢宣言」を採択しています。

安易に使えば、思考力や創造性を損なう反面、考えをまとめる際の手がかりになる情報を集めたり、思いがけない発想に出合えたりすることもあります。学校では、校務への活用も期待されています。悩ましさをはらむ中でつくり上げた指針を、永岡文科相は「暫定的なもの」と語りました。指針も「一律に禁止や義務づけを行うものではない」と注意書きし、今後「機動的に改訂」するとうたっています。便利さに頼りすぎずに機能を最大限生かす使い方は、いまだ手探りが続いているということでしょう。

【わかる! 教育ニュース】次回は、8月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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