読書指導のアイデア ⑩辞書で遊ぼう
10回目のテーマは「辞書で遊ぼう」です。国語辞典を使って、言葉集めをしたり言葉で遊んだりして、辞書の楽しさを感じる活動をしてみませんか。改めて紙の辞書のおもしろさを知り、子供の知的好奇心をくすぐってみてください。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
辞書を使って言葉遊びをしよう
辞書で言葉比べをしよう
国語辞典には小学生向け国語辞典や大人向け国語辞典、さらに大辞泉といった中型国語辞典などがあります。小学生向けは全員持っていると思いますので、大人向け国語辞典や中型国語辞典を可能ならグループに1冊ずつ用意できるとよいでしょう。
いろいろな言葉を調べると楽しいですが、最初は1文字の言葉を調べてみましょう。
今回は「“気”になる言葉」にかけて「き」で調べます。
「き」の見出し語には、「木」「生」「気」「黄」などが記載されています。大人向け国語辞典にはもっと多く掲載され、中型国語辞典にはさらに多く載っています。
このように、同じ言葉でもいろいろな漢字があり、言葉があることがよく分かります。同じ言葉でも辞典によって見出し語の量が違うことなどの発見があるでしょう。
子供たちが辞書を引くことに慣れてきたところで、同じ言葉を3種類の辞典を使って、グループで調べ合ってみましょう。同じ言葉でもいろいろな意味があることをノートに書いたり、グループで話し合ったりすることによって、さらに子供たちの考えが広がります。
周りにある言葉に注目しよう
気になる言葉を調べたら、「その周りにある言葉にも注目してみよう」と子供たちに伝えてみましょう。子供たちはいろいろな言葉を見付けてくれます。「自分はこの言葉が気になった」と言って、グループや学級で共有してみてください。様々な言葉探しができ、「辞書ってこんなに楽しいんだ」ということを実感するのではないでしょうか。
言葉集めをしよう
グループ別に言葉集めをするのも楽しい活動です。例えば、「空」の言葉を集めるグループ、「植物」の言葉を集めるグループ、「雨」の言葉を集めるグループなど、身の回りの言葉をみんなで集めてみてはいかがでしょう。また、例えば「色」に限定し、「赤」「青」「緑」などを割り当てて調べるという方法もあります。
言葉と調べた言葉の意味をカードに書いて掲示すると、もっと言葉を集めたくなる動機付けにつながります。
知っている言葉を調べよう
「先生」「友達」など、知っている言葉をあえて辞書で調べると、知っているけれど説明することは難しく、辞書の説明を見て納得できるでしょう。少しレベルアップするには、知っている言葉の意味を子供たちが書いておいてから、調べるという方法もあります。ゲーム感覚で楽しんでみてください。
凡例を確認しよう
普段はあまり見ないかもしれませんが、凡例(この辞典の使い方)のページを見て、その辞書のルールを知ることは大切です。拗音や促音、半濁音や濁音などがどの位置に並んでいるのかなど、見出し語の並べ方が辞書によって異なっています。また、品詞やアクセントなど様々な情報が記載されています。この機会に凡例を確認してみてください。いろいろな発見につながるでしょう。
松岡みどり司書からのメッセージ
国語辞典というのは、分からない言葉の意味を調べるために使う場合が多いと思います。国語辞典を使って、言葉集めをしたり、言葉で遊んだりして、国語辞典を分からない言葉を調べるためだけにしないで、改めて紙の辞書のおもしろさを知ってほしいですね。楽しい活動によって、辞書の引き方がスムーズになったり、語彙が広がったりすることにつながります。
辞書を使ったしりとりや子供たちが好きな言葉を集めた作文、辞書の中のイラスト集めなど、目の前の子供たちに合った先生のアイデア満載の活動を仕組んでみてください。1つの言葉を知ることで未知の言葉が広がり、知らない世界がいっぱい詰まっていることを子供たちは知ることでしょう。山登りをするときに頂上を目指すだけではなく、風を感じたり自然の美しさに気が付いたりするように、辞書にも目的の言葉だけではなく、周りにある言葉や用例などから新たな出合いがあるとよいですね。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。