小4 国語科「広告を読みくらべよう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「広告を読みくらべよう」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等、授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司・兵庫県三田市立ゆりのき台小学校・小玉直人
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では「C読むこと」(1)オ「文章を読んで理解したことに基づいて、感想や考えをもつこと」を重点指導事項とします。
『小学校学習指導要領解説国語編』には、「文章を読んで理解したことに基づく」とは「文章の内容や構造を捉えて精査・解釈しながら考えたり理解したりしたことを基にするということ」であると示されています。
また、「感想や考えをもつ」については「文章を読んで理解したことについて、自分の体験や既習の内容と結び付けて自分の考えを形成すること」とあります。つまり、指導事項オは、文章を的確に理解すること・理解したことを基にして自身の体験やこれまでに学んできた内容と関連付けて、自分なりに納得の考えを生み出すことであると言えます。
本単元では、2種類の広告を教材として取り上げ、それらを比較することによって、そうした資質・能力を身に付けていくことを目指します。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では「広告を読み比べて、特徴や効果を検討する」という言語活動を行い、それを通して指導事項を指導していきます。
教科書に掲載されている2種類の体温計の広告教材を読み比べて、広告内の言葉や写真・図、色などの各要素やその構成に目を向けながら、それぞれの広告の特徴を整理し、そうした特徴が読み手にもたらす効果を捉えていきます。
そして、子供一人一人が各広告のもつ良さを感じたり、作り手の意図について考えをもったりできるようにしていきます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 広告を読み比べる学習に見通しをもつ
同じ品物を宣伝する広告であっても、宣伝の仕方によって印象は大きく変わります。
広告の作り手は、広告を届けたい相手や届けたいイメージなどに合わせて、広告上に配置するキャッチコピーや説明文、写真、色使いを変え、レイアウトを工夫していきます。
本単元では、そうした広告の作り手の工夫に気付き、そこに織り込まれた意図を推測していきます。
作り手の工夫や意図に子供たちの目を向けさせ、「なぜ」「どうして」という知的好奇心をもたせるとともに、それを単元を通して維持するための仕掛けとして、単元の導入時に次のような教師の投げかけがあるとよいかもしれません。
例えば、新聞の折り込み広告を見せながら、「この広告は何だか温かい感じがするよ」「これは高級な雰囲気があるね」など教師が感じたことを紹介し、同時に子供たちが感じた印象についても聞き出します。そして、「どうしてそのような感じをもつのかな」と質問することで、子供たちに問いをもたせていきます。
さらに、抱いた問いをより強固なものにするために、同じ品物を宣伝した2種類の広告(教科書の「広告1」「広告2」)を取り上げ、「全く同じ体温計を宣伝している広告なのに、印象が違うね」「印象の違いはどうして生まれるのかな」のような投げかけを行い、2種類の広告を比べてみようという道筋をつけていきます。
〈対話的な学び〉〈深い学び〉 友達との交流の機会を設けて気付きや考えを磨く
子供たちがもった問いを深め、それに基づいて感想や考えをもてるようにしていくためには、多様な考えを知ったり、各自の問いに関して友達や教師と話し合ったりする場が必要です。
本単元では、全く同じ品物「体温計」を宣伝する2種類の広告を読み比べて共通点や相違点を整理する中で、それぞれの特徴やもたらしている効果を考えていきます。
その上で、広告の作り手がどのような意図をもって各広告を制作したのかを推測していきます。
こうした学習活動においては、広告がキャッチコピーや写真、色づかいなどの多様な要素によって成り立っていることに気付くとともに、それぞれの要素が各広告内にどのように配されているかを丁寧に捉えながら「広告1」と「広告2」の特徴を整理し、それぞれから受ける印象やメッセージの違いを深く考えていく必要があります。
そのためには、個々の子供が個別に思考し続けるのではなく、個々に気付いたことや考えたことを友達と交流して視野を広げたり考えを深めたりする機会を設けていくことが重要です。
もちろん、「キャッチコピー」や「レイアウト」などの未知・未習の用語については、教師が丁寧に説明をすることが当然求められますし、広告内に配された要素に子供たちがなかなか気付けない場合なども教師が上手に発見に導くことが必要となりますが、常に教師がリードするというのではなく、ある程度の時間的な裁量を与えて、その中で子供たちがゆったりと対話的な学びができるように単元を工夫することが重要です。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)指導と評価の速やかな一体化に繋がるオンライン上での共有
子供たちが気付いたことや考えたことは、従来のようにノートに記録したり、付箋に書いてワークシート上に貼り付けたり、口頭で共有したりしていっても構いません。言うまでもなく、そのような方法を選択しても指導事項の指導は可能です。
けれども、タブレット等を活用できれば、例えば、Jamboardなどを用いてノートやワークシートに手書きするのとは違った形で考えを整理したり、チャット機能を使って他者と気付きを共有したりすることもできます。
ICTの活用によって、思考整理や交流などの方法の選択肢が増えるので、個々に思考している時の交流には音声ではなくチャットを使うなど、状況に応じて柔軟に方法を使い分けたり、複数の方法を並行して行ったりすることもできるでしょう。
友達の気付きや考えを知ったり友達と交流したりする場が対面以外にも生まれることになるので、対話的な学びの充実に繋がります。
また、教師は子供たちの学びの過程や成果を一覧できるので、確認した内容に基づいて必要な手立てを速やかにとったり、日頃あまり発言しない子供がもっている興味深い気付きや考えを授業中に紹介して教室全体で共有したりすることもできます。
プールされた気付きや考えの中から共通するものを指摘して、それらをまとめて見せたり、新しい視点を見付けたりすることも比較的容易にできるはずです。
※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。
(2)対面以外で考えを共有する場があることの安心感
学級には、対面での直接的な交流に苦手意識をもっている子供もいることでしょう。
国語科の学習においては、音声を使って対面でやりとりする力を身に付けていくことも求められますが、今回のように音声言語に関する目標が掲げられていないような単元では、対面での交流に必要以上にこだわる必要はないでしょう。
音声でのやりとりにこだわるあまり、友達との交流の大切さが十分に分かっていながらも、そうしたことに苦手意識をもっている子供が見出した貴重な気付きや面白い考えが埋もれたままになってしまうことの方が問題です。
対面でのやりとりに加えてICTを活用した交流の場があれば、直接的な交流に消極的な子供への配慮にもなるはずです。
6. 単元の展開(7時間扱い)
単元名: 広告を読みくらべよう
【主な学習活動】
・第一次 広告の構成要素に気付き、それらを観点として読み比べる見通しをもつ。
(1時、2時)
◯ 折り込み広告を見せながら、そこから感じる印象を紹介し合う。
◯ 教科書掲載の広告1と広告2を見て、印象の違いが生じていることに気付く。
◯ 広告がどのような要素によって構成されているかを考え、それらを観点として広告1と広告2を比較整理していくという学習の見通しをもつ。
◯ 教科書p86-87の「広告を読みくらべよう」を読む。
・第二次 広告1と広告2を読み比べて、「言葉」「写真」「色」「レイアウト」の4点から特徴を整理する。
(3時、4時)広告1と広告2に書かれている「言葉」を読み比べて、それぞれの特徴をつかむ。
(5時)広告1と広告2に使われている「写真」を見比べて、それぞれの特徴をつかむ。
(6時)広告1と広告2に使われている「色」「レイアウト」を見比べて、それぞれの特徴をつかむ。
・第三次 第二次の読み比べによって見出したことを踏まえて、自分の考えをまとめて紹介し合う。
(7時)2種類の広告について整理して見出した特徴を踏まえて、「言葉」「写真」「色」「レイアウト」による表現効果を考えたり作り手の意図を推測したりする。
全時間の板書例と指導アイデア
1時間目と2時間目においては、 広告の構成要素に気付き、それらを観点として読み比べる見通しをもちます。(板書例は1時間目と2時間目を分けたものを提示しています。しかし、第一次の2単位時間は内容的に連続しますので、実際には90分間をかけてゆったり行うようにしてもよいでしょう)
まず、教師が用意した新聞の折り込み広告をいくつか示して、その広告から受ける印象を簡単に紹介し合います。
「この広告を見ると何だか安心する」「とても高級な感じがするね」「家族向けの広告に見えるよ」というような印象を教師が紹介するとともに、子供にも意見を求めていきます。
印象を出し合ったら、教師は子供たちに「どうしてこの広告を見ているとそのような感じを受けるのかな」と問いかけてみましょう。しかし、教師に質問されても、そのように感じる理由はよく分かりません。この時に生まれたモヤモヤした感じが単元を通す問いの種となっていきます。
イラスト/横井智美