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新時代に求められるマネジメント型リーダーとしての校長

2019/10/6

新学習指導要領全面実施直前。新時代の学校課題に直面する学校組織のリーダーとして、いま校長にはどのような役割が求められているのでしょうか? 人材育成や保護者・地域との連携など、多様な教育課題の克服のみならず、校長として自身の理念をどう周知し、周囲の人材と連携していくことができるか。いま求められる令和時代のリーダーシップとは?

校長室の看板

「チーム学校」時代の新しい学校リーダー像

新学習指導要領への確実な移行と児童生徒の学力向上、優秀な教員の育成に保護者・地域との連携、さらには社会的にも大きな関心事になっている教員の働き方改革まで、数多くの課題に直面している学校現場。これらの課題にしっかり向き合い、一つひとつ解決していくには、当然、スクールリーダーたる校長の強いリーダーシップが欠かせません。

その一方で、「チームとしての学校」という新たな学校像が示される現代では、校長に求められるリーダーシップのあり方も変わりつつあります。2015年の中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、これからの学校管理職には「多様な専門性を持った職員を有機的に結びつけ、共通の目標に向かって動かす能力や、学校内に協働の文化を作り出すことができる能力などの資質」が求められるとし、学校の教育活動の質を高めるためには、教育指導等の点で教職員の力を伸ばしていくことができる教育的リーダーシップが重要であるとしています。

また、校長がリーダーシップを発揮して学校の教育力を向上させていくうえでは、副校長・教頭を含めたチームとしての管理職体制を整備すること、また学校の裁量拡大、保護者や地域住民等が学校運営に参画するコミュニティ・スクールの活用も重要になるとしています【資料1】。

【資料1】管理職のリーダーシップの在り方等(校長のリーダーシップ発揮の在り方等)

校長は、学校の長として、リーダーシップを発揮するために、まず、子供や地域の実態を踏まえ、学校の教育ビジョンを示し、教職員の意識や取組の方向性の共有を図ることが重要である。

それに当たって、「チームとしての学校」における校長には、多様な専門性を持った職員を有機的に結びつけ、共通の目標に向かって動かす能力や、学校内に協働の文化を作り出すことができる能力などの資質が求められる。

また、学校の教育活動の質を高めるためには、校長の教育的リーダーシップが重要であり、教育指導等の点で教職員の力を伸ばしていくことができるような資質も求められている。

校長は、学校という組織で求められるマネジメントの能力と、組織一般で有効なマネジメントの能力をバランス良く身に付ける必要がある。

あわせて、校長がリーダーシップを発揮し、複雑化・多様化した課題を抱える学校を変え、学校の教育力を向上させていくためには、校長の補佐体制を強化することが必要である。例えば、副校長の配置や、教頭の複数配置、事務長の配置など、校長の権限を適切に分担する体制や校長の判断を補佐する体制の整備によって、管理職もチームとして取り組むことが学校の改革のためには有効である。

さらに、校長が、自らの示す学校の教育ビジョンの下で、リーダーシップを発揮した学校運営を実現できるよう、校長裁量経費の拡大等の学校の裁量拡大を一層進めるとともに、保護者や地域住民等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール等の仕組みを活用しつつ、「チームとしての学校」の力を一層高めていくことも重要である。

中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(2015年12月)より

これを見る限り、これからの「チームとしての学校」では、強い力で組織を統率・変革していくタイプのリーダーではなく、めざす学校像に向けて必要な人材、組織を適切にマネジメントできるタイプのリーダーが求められていることがわかります。

深刻な「管理職志願者の減少」問題

学校に求められるリーダー像が変容していく中、そうした管理職をいかに養成していくかという課題もあります。特に深刻なのは管理職志願者の減少であり、たとえば東京都の公立小中学校の副校長選考試験の競争率は、この数年、1.1倍程度という低水準が続いています。その背景にあるのは管理職の業務負担の大きさで、職階別の勤務時間の長さは小・中学校ともに副校長・教頭が最長となっています(文部科学省「平成28年度教員勤務実態調査」より)。

業務に追われているのは副校長・教頭だけではありません。2019年6月に公表されたOECDの「国際教員指導環境調査(TALIS)2018」の結果では、校長が自らの職能開発に参加するにあたっての障壁として最も多かったのが「職能開発の日程が自分の仕事のスケジュールと合わない」で、OECD各国と比べてもこの回答の割合がきわめて高くなっています【資料2】。そのほか、職能開発の費用や支援が障壁になっているとの回答も多く、スクールリーダーがその資質・能力を思うように高められていない実態がうかがえます。

【資料2】校長の職能開発への参加の障壁

校長の職能開発への参加の障壁
OECD「国際教員指導環境調査(TALIS)2018」より中学校校長の調査結果を抜粋
クリックすると別ウィンドウで開きます

新時代の学校現場を担うスクールリーダーをどう確保し、育てるかということも、日本の教育界が抱える大きな課題です。

構成・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2019年10月号より


*この特集の全記事は、『総合教育技術』2019年10月号でお読みいただけます。

【総力大特集】新時代に求められるスクールリーダーの役割とは? 校長のリーダーシップで学校を変える!

PART1 識者インタビュー&セミナーレポート

学力向上、人材育成、保護者・地域との連携……令和時代の学校課題とリーダー像

〈新時代に求められるリーダー像とその育成〉

マネジメント型リーダーが求められるも管理職志願者の減少が大きな課題

〈識者インタビュー〉

自身に合った学校経営スタイルを確立し人材を効果的に活用できるリーダーに(九州大学大学院教授・元兼正浩)

〈セミナーレポート 集中速習セミナー「管理職研修」〉

学力向上のポイントは校長のマネジメント 理想と現実を近づける「陰山メソッド」

PART2 スクールリーダー連続提言「校長のリーダーシップ、私はこう考える」

提言① 特別対談「自ら行動し、人の力を活用する。まずは校長が『やり直し』の実践を」(大阪市立大空小学校初代校長・木村泰子×大阪市立南港桜小学校校長・市場達朗)

言②「子ども中心主義が学校経営の基本 やって見せる力が校長には不可欠」(東京都世田谷区立桜丘中学校校長・西郷孝彦」

提言③「『ケア』と『サーバントリーダーシップ』で『カラフルな学校』づくりをめざす」(神奈川県横浜市立日枝小学校校長・住田昌治)

提言④「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる『笑育』で明るい学校づくりを目指す」(兵庫県芦屋市立宮川小学校校長・俵原正仁)

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