卒業式アイデア|自分たちの思いを後輩に伝える「クラスカフェ」

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卒業特集ー6担初心者もこれで安心!ー 
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卒業式まであと2か月。限られた時間のなか、卒業に向けて何ができるのか? 最高学年としての自覚を高める取り組みとは? 元東京都公立小学校校長・清水弘美先生が子供たちと実践したのは「オリジナル劇」と「クラスカフェ」。カフェと言っても、お茶を出すわけではなく、下級生と交流する場なのだそう。どのような取り組みかご紹介します。

「友情」の思いを伝えた演劇

特別活動で6年間鍛えられてきた6年生は、卒業する学校に対し自分たちで「何が残せるか」を考え、話し合って、実行しました。

清水弘美先生が校長をしていたときのことです。2クラスあるうちのひとつは、「私たちは劇をして、この学校にある思いを残したい」と言って、演劇を行いました。

児童文学作家、浜田廣介の代表作である『ないた あかおに』を題材にした『ないた あかおに その後』というオリジナル脚本です。脚本をはじめ、大道具、小道具、ライト、演出など、すべて子供たちの手で行いました。体育館のフロアを舞台に、ひな壇を客席にして、中休みの20分間で見事にやってのけました。

「圧巻は、学校にあるパーティションをいくつも活用して、次々と舞台転換を短時間で行ったところ。30人もの子供全員が自分の役割分担をきちんとこなしていたのはすばらしかった」(清水先生)。

学校にあるパテーションをいくつも活用して、次々と舞台転換を短時間で行った
6年生によるオリジナル劇『ないた あかおに その後』

人間と幸せに暮らしていた赤鬼のところに青鬼が戻ってきたところから物語は始まります。青鬼は「ぼくだけこんな思いをして……」と心がすさみます。最初は赤鬼や村人とトラブルを起こしますが、いろいろなやりとりがあり、仲よくなるという結末です。

そして、最後に観客である下級生の子供たちに「私たちが一番伝えたいのは、友情です」と言って幕が閉じられました。

「この言葉は印象深かったですね。下級生の子供たちは感動の嵐でした。心にじーんと響いたでしょう」(清水先生)。

自分たちの尊敬する先輩たちからのプレゼントは何よりも心に残る。この「友情」という言葉を心に刻み、自分たちの小学校をよりよくしていこうという思いになったようです。

「つながり」をテーマにした「クラスカフェ」に下級生が殺到

もうひとつのクラスが学校のために行った活動は「クラスカフェ」。これは、ドリンクを出すカフェではありません。ドリンクも何も出ないが、休み時間に「いつでも遊びに来ていいよ」と言って、6年生の子供たちが、下級生の子供たちとおしゃべりをするという活動です。

「演劇のような華やかな活動とは打って変わって、ちょっと地味な活動なので、下級生の子供たちに受けるのかどうか最初は疑問だったのです」(清水先生)。

ところが、机を並べ替えて、カフェ風にした教室には、休み時間になると下級生の子供たちがひっきりなしに訪れ、おしゃべりを楽しんだといいます。6年生の子供たちは「学校は楽しいの?」「悩んでいることはある?」など、下級生の子供たちの悩みを聞き、下級生の子供たちはとてもいやされたそう。

テーマは「つながり」。今、一番大事だと思っていることを、残すという取り組みです。

「卒業をしていく6年生の子供たちは、後輩のことを考え、自分たちの思いを残し、後輩たちは、卒業していく先輩の思いをつないでいきます。卒業が迫るこの時期、卒業プロジェクトなどの行事で子供たちはとても成長します。教師は、子供たちの思いが実現するように、子供たちを信じ、子供たちに任せ、思い出深い取り組みを支えることが大切です」(清水先生)。

6年生の子供たちは6年間の学校生活で一番大事だと考えた「思い」を下級生に残していきます。なかでも5年生の子供たちは、その思いを受けて最高学年として伝統をつないでいくことでしょう。

教えてくれたのは……


東京都公立小学校校長・清水弘美先生

このアイデアは子供たちが発案し、自分たちで企画を立て、学級全員の役割分担を自分たちで決め、そして学級全員で実践したことに意義があります。教師は「この活動は時間がないので無理だよ」と言うことなく、子供たちの思いを汲み取り、子供たちができるようにバックアップをしました。

取材・文・撮影/浅原孝子 イラスト/フジコ

『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より


いかがでしたか?
他校の取組も参考にして、卒業までの貴重な時間を充実させることができるといいですね。
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