これでバッチリ 理科室のICT環境 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

1人1台端末がスタートし、子どもを取り巻くICTの環境が大きく変化しました。観察、実験の様子を簡単に撮影したり、瞬時にインターネットで調べたりすることができるようになりました。そのような中、理科室の環境もアップデートできる部分はあると思います。今回は、1人1台端末時代の学びを支える理科室のICT環境について考えてみましょう。

執筆/北海道公立小学校教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1 実物や映像をより見やすくするための工夫

理科では、実物や画像を見せながら授業を進めることが多いと思います。しかし、広い理科室で、後ろの方に座っている子は本当によく見えているのでしょうか。もしかしたら十分に見えていない子もいるかもしれません。

そこで、ICTの出番です。最近では、大型テレビを活用して画像を見せる機会も増えてきましたが、さらに見えやすくするために次のような機器の用意をしてはいかがでしょう。

単焦点レンズのプロジェクター
マグネット式のホワイトボード

ホワイトボードをスクリーンがわりに活用し、液晶プロジェクターを用いてホワイトボードに映像を投影するのです。こうすることで、テレビの画面よりも大きく全体に見せることができます。もちろん、ホワイトボードの代わりにスクリーンでも良いのですが、ホワイトボードの場合は、マーカーで画面に書き込むことができる良さがあります。

マグネット式のホワイトボードは、必要な時に広げ、活用する必要がないときはしまっておけば良いので、便利っです。なお、下の写真のように、収納が可能なロール式のホワイトボードもあります。

2 安全に観察、実験をするための工夫

観察、実験において、初めて使う実験器具がある場合は、その使い方を事前に指導しなくてはなりません。また、細かい作業が必要だったり、正しい手順通りにやらなければ失敗したりする観察や実験もあります。そのような際に活用するのが、実物投影機です。

実物投影機は、最近では教室に設置されることが増えてきましたが、理科室にも用意しておきたい機器の1つです。

例えば、5年の「物の溶け方」の学習では、ろ過を取り扱います。道具の準備や配置、ろ過の仕方などは、なかなか説明しにくいものです。その際、実物投影機を活用し、実際の道具を使ってろ過の様子を見せることによって、子どもは正しい操作方法や手順、留意点の確認を行うことができ、正しい観察、実験を行うことにつながります。

この他にも、気体検知管の使い方や電磁石の作り方など手元の細かい技能の習得が必要な場合も実物投影機の活用は有効です。

3 観察したものを共有するための工夫

最近では、顕微鏡もデジタル化しています。そこでデジタル顕微鏡を導入してはいかがでしょう。HDMI端子で高画質出力が可能な機器や、USBケーブルでパソコンに接続できる機器、さらには、片手で手軽に撮影できるデジタル顕微鏡もあります。価格もさまざまですが、デジタル顕微鏡は、観察したものを瞬時に全員に見せることができます。これまで1人ずつにしか見せてあげられなかったことを考えると大変な時間の短縮につながります。また、記録しておくこともできるので、画像を活用したいときにいつでも見せてあげることができます。

今回紹介した機器を準備するには予算が必要ですので、即座に導入していくことは簡単ではないと思います。それぞれの学校の理科室の実態に応じて少しずつ整備していく計画を立てるなど、子どもにとって少しでも理科を学習しやすいICT環境が整備されるといいですね。

イラスト/難波孝

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<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校教諭/北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる“GIGA”全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科3・4年」(日本標準)等


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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