『学級目標降下の儀』【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑫
1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、より良い人間関係を築きましょう。この連載では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。
第12回(最終回)は、『学級目標降下の儀』を取り上げます。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
目次
寂しさを味わうことも尊い経験
学級のシンボルである学級目標をはずす瞬間を全員で共にします。
教室が閑散とし、寂しさを感じることでしょう。しかし、この寂しさを味わうこともとても尊い経験と考えます。
1年間を過ごした教室環境にも子供たちといっしょに「区切り」を付けることが大切です。「終わり」を丁寧に迎えることで、気持ちも新たに「始まり」を迎えることができると考えるからです。
①修了式の「前日まで」に学級目標を「降ろす」
【学級目標降下の儀】手順
①修了式の「前日まで」に、学級目標を「降ろす」
②修了式の「当日」に、学級目標を「外す」
「降ろす」と「外す」を別日に分けて行うことで、修了式当日は落ち着いて過ごすことができます。
まずは、修了式の前日までに、学級目標を降ろします。高い所から低い所に貼り替えるのです。修了式当日には外すため、掲示は簡単で構いません。1週間前ぐらいがおすすめです。
「願いごと」と「合言葉」でインパクト大の3D学級目標(連載第2回参照)のように、学級の象徴的な掲示物の類は「教室の上方」に掲示することが多いもの。高所の作業となるため、安全に十分注意して行う必要があります。
運動会の閉会式で旗を降納するようなイメージで、教師が取り外したものを子供たちが受け取ったり、その様子を学級のみんなで見届けたりできると望ましいでしょう。難しければ、教師による作業の様子を記録した写真や動画を紹介する形でも構いません。
降ろした学級目標は直接手で触れることができます。学級のシンボルに手を触れながら残りの日々を過ごすことで、1年間の思い出や共に過ごした級友への親しみが湧いてきます。
降ろした学級目標と一緒に、学級全員の記念写真を撮影しましょう。この学級じまいの集合写真と学級開きの集合写真を対比するように教室に掲示します。最後の学級通信に掲載するのもよいでしょう。どの子もたくましい顔つきになっていて、1年間の成長を実感できます。最終日当日に撮影して印刷するとなると慌ただしくなってしまうため、「前日まで」に行います。
②修了式の「当日」に学級目標を「外す」
修了式の当日は、手が届く所に降ろしていた学級目標を外します。(学級目標に貼っていた)個人目標を書いたカードも、私はこのタイミングで一人一人の手元に返却しました。
「一人一人の自己実現(個人目標)を達成できる集団の道しるべ」が、「学級目標」でした
個人目標は達成できましたか? 学級目標は達成できましたか? みんなで育ててきた願いごとがどうなったのか、振り返りを聴き合いましょう
外す前に、『要約までペアトーク』と『出席番号リレー』(連載第1回参照)を用いて、振り返りを聴き合います。学級目標を指差しながら、話す子もいるでしょう。「目標が達成できなかったと思う」などのネガティブな振り返りが出てきても構いません。新たな目標につながるからです。次年度のスタートにつながるように、爽やかに背中を押しましょう。
1年○組はゴールを迎えるけれど、この素敵な学級を超えたい、超えなければという新たな目標が私にはできました。みなさんが目標です!
過去を振り返りつつも、過去に依存してはいけません。新たな「始まり」につながる「終わり」にしたい、と私は考えます。
いよいよ学級目標を子供たちと一緒に外し、学級じまいです。
外した学級目標は、子供たちが下校した後に「1年間ありがとうございました」と心を込めて処分します。時間を置くとタイミングを逸してしまうため、その日のうちに行うようにしています。余韻に浸りながらも、「区切り」を付けることはとても大切です。
「学級開き」は力を入れて行われるけれど、「学級じまい」はあまり力が入れられていないように感じます。「終わりよければ全てよし」ということわざがあるように、1年間を締めくくる「学級じまい」の演出は「学級開き」と同じくらい大切だと私は考えます。年度末の慌ただしさからないがしろにしてはいけません。その他の実践を、「学級解散式にもおすすめ!学級じまいにとっておきの演出アイデア8選」にも紹介しています。
「終わり」を丁寧に迎えることで、気持ちも新たに「始まり」を迎えることができるのは、子供たちだけではありません。私たち教師も同じです。子供たちと「一緒に」教師もおもしろがって実践していくことが、特別活動では特にポイントになるでしょう。この1年を超える未来のために、「学級じまい」に力を入れてみませんか。
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)
イラスト/高橋正輝