読書指導のアイデア ③紙芝居・大型絵本
3回目のテーマは「紙芝居・大型絵本」。お楽しみ会を兼ねて「紙芝居」や「大型絵本」を楽しんでみませんか。子供たちはワクワクして、物語の世界に誘われていくことでしょう。読書離れが進みつつある現在だからこそ、子供たちが本を好きになるきっかけが必要となります。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
紙芝居でワクワク感を共有しよう
紙芝居は中学年、高学年でも楽しめる
紙芝居は1930年頃、日本で生まれた日本の文化です。紙芝居と言えば、小学校低学年のイメージがありますが、日本の昔話や防災を扱ったものなど、様々なテーマがあるうえ、すばらしい絵が展開されるので、中学年、高学年になってもおすすめです。紙芝居を読む人を「演じ手」と呼びます。演じ手と観客とが向かい合った空間に作品世界が広がっていきます。
紙芝居をエンターテインメントとして楽しむところから、本の世界へとつなげていきましょう。
紙芝居 準備~実践
1 紙芝居を選ぶ
紙芝居を選ぶところから始めます。紙芝居には「物語」「民話」「科学・知識」「生活・行事」「平和・環境」など、いろいろなジャンルがあります。また、物語で完結するもの、観客が参加するものなどもあります。
紙芝居を実際に手に取って、子供たちに何を伝えたいか、子供たちは何に興味をもつかなどによって選ぶとよいでしょう。季節や行事、そのときに学習しているテーマに合わせて選ぶのもおすすめです。
2 紙芝居を下読みする
演じる前には紙芝居の下読みをして、作品に描かれているテーマや内容を理解しておくと、落ち着いて演じることができます。
意外に忘れるのが、紙芝居のページの順番の確認です。本番で順番が違っていると、紙芝居が台無しになってしまいます。横に抜いて、スライドさせ、一番後ろに入れる手順も試しておくとよいでしょう。
可能なら舞台を使うことをおすすめします。舞台を使うことで、空間が仕切られ、作品への集中が高まるからです。舞台がある場合は、教壇に舞台を置くと子供たちがいすに座って見ることができます。観客が床に座る場合は、少し低いテーブルを用意し、教室の前半分くらいに子供たちを集めるとよいでしょう。舞台がない場合は、紙芝居をぐらつかないようにすることが大切です。
3 実践する
「紙芝居を始めるよ!」という言葉を聞いただけで、子供たちはもうワクワク。子供たちの期待感が高まったところで、紙芝居の世界へ誘います。今回は舞台がある場合を紹介します。舞台を開けるところから始めます。
演じ手は、舞台の脇に立って、子供たちに対面します。子供たちにしっかりと聞こえるような声のボリュームを心がけます。おおげさな演技は必要ありません。男性と女性、大人と子供など登場人物の違いで、少しだけ声のトーンを変えるとよいでしょう。例えば、登場人物が長老や大きいものなら声のトーンを低めでゆっくり、子供や小さいものなら若干高めで早いテンポにするのが秘訣です。
紙芝居は抜くことが重要な要素の1つになります。抜くとひと言で言っても、さっと抜く、ゆっくり抜く、ガタガタ抜く、途中で止めるなど、場面の様子によって変化を付けていきます。途中で止める場合は、抜くところまでの印を付けておくとやりやすいでしょう。紙芝居にはそのような印が付いているものも見かけられます。抜いた紙芝居は舞台の後ろに差し込みます。
紙芝居は演じ手からも子供たちの表情が見やすいので、反応をダイレクトに知ることができます。紙芝居の話が終わったら、少し余韻を残し、舞台を静かに閉じて終わりにします。
4 本につなげる
紙芝居はエンターテインメント性が高いので、みんなで物語を共有して「楽しかった!」で終わってもよいのですが、せっかく物語の世界に浸ったので、本につなげるようにしてはいかがでしょう。子供の楽しみがもっと広がっていくでしょう。
紙芝居が終わったら、「図書館に同じタイトルの本があるよ」とつなげたり、動物や昆虫の物語なら、「その動物や昆虫を調べに図書館に行こう」と言って、図書館に行くことを促したりするのもよいでしょう。
本を読むのが苦手な子の入り口が紙芝居で、紙芝居から本につながる場合もあります。子供が興味をもったときに、少し後押しするようにします。
2学期末におすすめの紙芝居
松岡みどり司書おすすめの、2学期末に教室で読みたい紙芝居(12月の例)を紹介します。
『なぜ、クリスマスツリーをかざるの?』
岩倉千春 脚本/アリマジュンコ 絵/常光徹 監修
童心社
クリスマスが近付いた、魔物たちのお話。お話を追いながら、なぜ、クリスマスツリーを飾るのか、魔物たちのこと、クリスマス飾りのことなど、様々なことが楽しみながら分かる。
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『かさじぞう』
松谷みよ子 脚本/まつやまふみお 画
童心社
日本の昔話の1つ。国語の教材にもなっている。もうすぐ正月。もちを買うお金もない。貧しくとも心優しいじいさまとばあさまが、地蔵に親切にしてその恩返しを受けるという心温まるお話。
松岡みどり司書からのメッセージ
紙芝居はエンターテインメント性が高いので、お楽しみ会や節目のときにも最適です。1本10~15分程度で終わりますので、朝の時間に読むことも可能です。演じ手は、基本的にオーバーリアクションはしなくてもよいのですが、先生の個性を生かしても子供たちが喜ぶと思います。私が紙芝居を行うときには、最初に「みんなが一所懸命に聞いてくれると、読むときのパワーになるので、力を分けてね!」と子供たちに伝えるようにしています。そうすると、子供たちも一生懸命に聞く姿勢が見られます。
最初は先生が演じ手になって紙芝居を行ったときに、もし子供たちが「演じたい!」と言えば、子供たちにも紙芝居の演じ手になってもらうとよいでしょう。その場合は、3人程度で1チームにし、紙芝居大会を行っても楽しいでしょう。
大型絵本で興味をもたせよう
エンターテインメント性の高い大型絵本は、その存在だけでインパクトがあり、子供たちは「わー、大きい!」と絵本の大きさに圧倒されて、関心をもつことでしょう。絵本は幼児や小学校低学年の読み物のように思われている傾向もありますが、とてももったいないイメージです。豊かな言葉が凝縮されているうえ、絵もすばらしいものが多いです。「もう大きくなったんだから、絵本を読んだらだめよ!」という大人の声を聞くことがありますが、この言葉がけで子供の読みたい気持ちが止まってしまうのは気がかりです。絵本から本が好きになり、いろいろなことに興味をもつことにつながるからです。
大型絵本で、子供たちに「楽しかった」という思いを抱かせて、「図書館には同じタイトルの手にとりやすい絵本もあるから、興味があったら見てみてね」と、本につなげてみてはいかがでしょう。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。