絵日記からの成長 【小1国語 京女式書くことの指導】12
今回は、「絵日記からの成長」をテーマに書くことの指導術を紹介します。小一の子供たちの書くことは、絵日記に始まり、だんだんと文が多くなり、文の形が整い、育っていきます。この時期、子供の書くことの成長に合わせた指導も大切です。単行本『はじめてのひらがな、カタカナ 1年生担任の京女式国語の教育技術』(小社)を再編集して、1年生の国語ポイントをわかりやすく紹介するシリーズです。
執筆/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
目次
絵日記から文へ書く力を育てる
●この絵日記のココがよい
印象に残ったことが多いので日記ではまとめ切れません。その大変さを乗り越え、絵ではかわうそ、文ではジンべイザメを使い分けているところも一年生の知恵です。書くことで自分の1日を器用に上手に整理しています。
「かわうそ」と文字を書いたり、魚に色を塗ったり、イカを描いたりして、印象をどのように伝えようかという心の揺れが絵に表れています。伝えたい気持ちが伝わる楽しい絵です。
ジンベイザメを中心に文を書いています。絵と文とを切り離しているので、日記として落ちつけています。一年生後半になると、絵日記から作文への移行期の姿が見えます。
「大きかったのでびっくりした」というように、表現の仕方に幅が出てきています。そのため筋道が整ってきました。文章としての形が二年生に近付き、順序よく文も事柄も書こうとする兆しが見えます。
文章から見える一年生から二年生へ成長する過程を父親のコメントを借りて意味付けをしています。成長という具体的な姿を親や担任教師とともに喜び合えるコメントにするために、行動に着目して赤ペンを入れます。そのポイントは「共感」と「納得」です。
絵日記の指導術 子供の成長に合わせて
絵日記が書ききれない子 →最初に絵を描かせる。
絵日記が十分書ききれない子には、まず絵を描かせます。何から描き始めるかに注目します。それが書きたいことなのです。絵を描くことに時間をかける子が多い時は、急がせないで、絵が描けるまで待ちます。絵を描く力が思い出す力になるからです。ゆとりをもって考えさせることが発想力を育てるスタートです。
絵は描けるが文が書けない子 →絵を話題にして話合いを進める。
絵が描けるが、文は書けない子は、絵で表現したことで満足しています。その結果、発想が広がらず、完結してしまいがちです。「一番上手に描けたところはどこ?」「何のお話ですか?」など、具体的に絵を話題にして話合いを進めると、絵で描き足りないことを思い出します。思い出したことを順に書かせると文章になっていきます。書くことの経験が大切なので、細かい指摘は控えます。
スラスラ書ける子 →表現の仕方に注目させる。
絵や文がスラスラ書ける子には、一年生としての力である事柄の順序や経験の順序が書けているかどうか、その時々の様子がわかりやすく書けているかどうかに注目して、書く力を評価します。絵から文へ移行する段階なので、表現したことは、例えば日ごろ使い慣れていない言葉、主語・述語の整い方など、表現の仕方に注目をさせます。そのことががんばって文を書こうという意識を高めていきます。
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吉永幸司(よしながこうし)
京都女子大学附属小学校特命副校長
滋賀大学学芸学部卒業。滋賀大学教育学部附属小学校教諭(26年間)、同副校長、公立小学校校長、京都女子大学教授・同附属小学校校長。国語指導、道徳指導に長年携わる。国語教育、道徳教育の大家として定評が高く著書も多数。『教育技術ムック 考える子どもを育てる京女式ノート指導術 小学校国語』小社ほか。
構成/浅原孝子