リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #1 日本最古の観覧車|藤原友和先生(北海道公立小学校)

連載
リレー連載 明日の授業に生きる!「一枚画像道徳」のススメ

北海道公立小学校教諭

藤原友和

子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットをカリキュラム・マネジメントのハブとして機能させ、教科横断的な学びを促していく……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載です。毎回、錚々たる執筆者たちが続々と登場。ご期待ください。

執筆/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和

みなさん、こんにちは。
北海道・函館市で小学校の教員をしております、藤原友和と申します。教員生活は早いもので20数年を超え、そろそろ中堅からベテランと言われる年齢に近づいてきました。

とはいえ、日々の授業に悩みあれやこれやといろいろ模索しているのは若い頃と変わりません。「成長しないなー」と苦笑いしながらそれでもなんとかやっているというのが実態です。

さて、今回からリレー連載という形でそんなあれやこれやの試みをお伝えしていくことになりました。テーマは「一枚画像道徳」です。毎週木曜日に更新する予定でいます。それではどうぞよろしくお願いします。

1 「一枚画像道徳」とは

その名の通り、「1枚の画像でつくる道徳の授業」のことです。子供たちの身の回りや学校内、地域にあるものなど、広く対象となる画像素材を集めて、道徳の授業に活用していこうと考えています。

もちろん、たった一枚の画像資料ですから、それだけで45分、50分の授業として成立させるのは難しいです。せいぜい10分から15分といったところでしょう(長年、道徳の授業づくりを研究してきた鈴木健二先生には、「小さな道徳授業」の提案があります。本連載の開始にあたり大いに参考にさせていただきました*1)。しかし、この10分、15分といった「ユニット」はいろいろな場面で使えるものと思われます。

例えば、教科書教材を読む前の導入として「価値への方向付け」を担わせたり、逆に教科書教材を読んで話合いをしたあとで、「多面的・多角的な思考」のための比較材料にしたりすることが考えられます。また、授業で使用した画像を総合的な学習の時間や特別活動でも活用し、探究的な学びや体験的な学びにおける補助資料にすることもできるでしょう。

ちょっと大げさに言えば「カリキュラム・マネジメント」のハブとなる具体的な部品というイメージです。

キーワードは「10分・2発問・1画像」です。10分間でできるくらいの小さな道徳を、発問二つで子供たちの頭と心に働きかけるように、1枚の画像を用いて行うもの。それが「一枚画像道徳」です。

次項ではその具体的な例をお示しします。

2 「一枚画像道徳」の実践例

対象:小学6年
主題名:ふるさとを愛する心
内容項目:C-17 郷土愛

以下の写真を提示します。

発問1 何か違和感はありませんか?

なんか小さい
乗っていても楽しくなさそう
屋根がついている
ゴンドラになっていない
乗る人が横に並んでいる

「皆さん、よく気が付きましたね。普通の遊園地にあるものよりもずいぶんと小さいようです。そして、椅子が横向きです。いいところに気が付きました。」

子供たちが画像の細部まで検討し、「?」をたくさん思いついたところで、下記のような説明をしました。

説明

この観覧車は、函館公園にある遊園地「こどものくに」に設置されている。
現役稼働中の観覧車としては日本最古であり、北海道文化遺産に登録されている。
形状は長いす型と言われるもので、日本にある144基の観覧車中、唯一の形状である。

子供たちは、「そういえば乗ったことある!」「あれってそんなに珍しいのか!」と口々に感想を言っています。丁寧にメンテナンスしながら大事に稼働させていることや、コロナ禍で観光客が減って存続が危ぶまれたときに、クラウドファンディングで乗り切ったことなども伝えました。

ここで「こどものくに」のマネージャー、加藤大地さんのことを紹介します。

加藤さんは元プロのテニスプレーヤーですが、競技を引退後に出身地である函館に戻り、観覧車を国の有形登録文化財にするための手続きを進めたり、クラウドファンディングを主導したりした観覧車保存の「仕掛け人」です。

発問2 なぜ、加藤さんは観覧車を守ろうと考えたのでしょうか。

子供の頃に遊んで楽しかったから。
函館が好きだから。
函館をもっと有名にして、観光客を呼んで、まちを儲けさせたかったから。
大事だから。

「元プロテニス選手」という異色の経歴に驚いた子供たちは、様々に思考を巡らせます。
私は、「どうしてそう思ったの?」「そうかぁ、だから帰ることにしたのかもしれないね」と、子供たちの言葉の奥にある道徳的価値を受け止めながら話合いを続けていきます。

「じつはね、加藤さんのおじいさんが、函館公園『こどものくに』の創設者だったことが大きかったということでした。ふるさとって、もしかしたら場所のことだけではなくて、人とのつながりのことかもしれないね。」

このようにまとめ、「教科書のお話もおなじかな。それとも少し違ったふるさとが描かれているのかな。では読んでいきましょう。」と、教科書での学習につなげていきました。

3 「つながる!」一枚画像道徳

ここでは教科書教材につなげる例をお示ししましたが、教材開発にあたっては、総合的な学習の時間の単元「道南の魅力を見つけ隊」において子供たちが探求した内容を参考にしました。

「日本最古の観覧車」に、修学旅行(コロナ禍による函館近郊での実施でした)で訪れた折のことでした。たまたま私たちをみかけた加藤さんが、全員を無料で乗せてくださったことがきっかけです。
しかも、クラスの子には「私の親戚、ここで働いている!」というものですから、そのつてを頼りに総合のゲストティーチャーとして学校に来ていただきました。つまり、総合から道徳につながったのです。

一枚の画像をハブとして、教科・領域がつながる。人と人とがつながる。子供たちとまちがつながる。このことはコロナ禍で失われてしまった「ひと・もの・こと」とのつながりを取り戻すきっかけになるのではないかと考えています。

この連載は今後、毎週木曜日に公開します。どうぞお楽しみに。

【参考文献】 
*1 鈴木健二 『道徳授業をおもしろくする!――子どもの心に響く授業づくりの極意』 2017年 教育出版(pp.20-21)

今後の連載予定
第2回 森岡健太(京都府・京都市立桂坂小学校)
第3回 中村優輝(奈良県・大和郡山市立平和小学校)
第4回 戸来友美(北海道・千歳市立桜木小学校)
第5回 山崎太輔(北海道・千歳市立泉沢小学校)
第6回 岩田慶子(兵庫県・神戸市立星陵台中学校)
第7回 瀬戸山千穂(群馬県・前橋市立大胡中学校)
第8回 郡司竜平(北海道・名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科)
第9回 葛西もえ(岩手県・奥州市立佐倉河小学校)
第10回 小林雅哉(北海道・室蘭市立地球岬小学校)
以下、続々と執筆進行中です!

※この連載は、毎週木曜日に公開します。お楽しみに。

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