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STEAM化で探究型授業をデザイン!同志社中学校・反田任先生のICT実践

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今あちこちの学校で実践が始まっているSTEAM教育。STEAMは、Science(科学), Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字で、これらの違う分野の教科を繋ぎ合わせて行う教科横断型の教育手法とされています。

同志社中学校の反田任先生は、このSTEAMの要素を取り入れて、授業をリデザイン(再構築)する“学びのSTEAM化”を提唱しています。生徒たちが多角的な視点を持って学ぶ探究型の授業の実践について、詳しくお話を聞きました。

反田 任 (たんだ たかし)
同志社中学校 EdTech Promotions Manager(教育ICT推進担当)
担当教科は英語。英語の授業でiPadを積極的に活用し、英語で動画・プレゼン制作などに取り組んだり、英語のコミュニケーション能力向上のためにAIアプリやオンライン英会話を取り入れている。また最近ではSTEAMの要素を授業に取り入れた授業デザインを試行している。Apple Distinguished Educator 2015, Adobe Education Leader 2022。

学びを“STEAM化”した「ごんぎつね」の実践

今回お話ししたいのは、“学びのSTEAM化”についてです。いろいろな教科を単に繋ぎ合わせて行うSTEAM教育ではなく、STEAMの視点を取り込んだ探究型の授業をデザインすることが、学びのSTEAM化だと私は考えています。

まず、授業をSTEAM化した実践例として、本校の「学びプロジェクト(課外特別講座)」で、PBL型(Project Based Learning)の学びとして行った「STEAM化ごんぎつね」をご紹介します。これは、経済産業省「未来の教室」事業のSTEAM Libraryのコンテンツにもなっています。

この授業は、冬休み期間中にオンラインで、ビデオ会議(Zoom)を利用し、ワークショップ形式でグループ活動と個人ワークを行いながら実施しました。TeamsとiCloud Driveを活用しながら、調べた内容、作品、教員からのコメントなどを全てオンライン上で共有してプロジェクトを進めました。参加したのは、この授業に興味を持った中学1、2年生約20名です。

授業のゴールは、「ごんぎつね」の物語をSTEAMの視点で分析し、テクノロジー(3D)とアート(抽象画)で表現することでした。私は抽象画制作のプロジェクトを担当しました。

生徒たちは、「ごんぎつね」を小学校4年生の時に国語で学習していて、物語はよく知っています。ただ、小学校の授業では、教科書や絵本の挿絵から物語のイメージを植え付けられてしまったり、「この時のごんの心情は?」とか「兵十とごんの心のすれちがいは?」といった定番の読み取りを求められたりして、自分なりに自由に物語を解釈することはしていません。

そこで、今回は、すでに学習した教材を中学生の視点で見直すため、まず文字情報だけで「ごんぎつね」を読み、そこに描かれた情景をSTEAMの視点から分析し、その結果一人ひとりが抱いた心象風景を色彩で表現することにしました。あえて抽象画としたのは、いろいろ調査をする中で見る写真や映像に表現が引っ張られないようにするためです。

「文章中に登場するものを実際に調べてみよう」からスタート

授業では、文章中に登場するものを実際に調べるところから始めました。文章を解釈する上で、物語の背景を理解していると、さまざまな視点からの読解ができるようになると考えたからです。そこで、社会科(地理や歴史)、理科(生物、地学)などの観点から、物語の舞台となった、新美南吉の生家がある愛知県半田市岩滑地域について知るフェーズを設けたのです。

最初は、どうやって調べるかわからないので、教員が、さまざまなツールや事例を提供しました。たとえば、権現山付近の地形を調べるのに、今昔マップ on the webや、タブレットのAR地図などを使って、水田だったのか丘陵地帯だったのかなどを調べ、さらに立体地図に変換してイメージを掴むといったことを行いました。

生徒たちは一人ひとり、自分が興味を持った教科の分野を選んでさらに深掘りしていきます。教員が予想しないような視点も出てきました。たとえば、うなぎが生息する川のきれいさはどのくらいか、墓地に彼岸花が咲いていたのはなぜなのか、影を踏みながらごんが兵十を追ったシーンから、狐の大きさや、当時の大人の男性の身長はどのくらいだったのかなどを調べる生徒もいました。

抽象画は色彩で表現するので、文章の中から色を探すことも行いました。兵十の母親の葬儀の場面で使われている色を表すことばは、「赤」と「白」だけです。しかし、子供たちは、「赤い井戸」「赤いきれ」「赤いさつまいものような元気のいい顔」はそれぞれ微妙に違う赤であることや、「いいお天気」「彼岸花」という表現に、青空や、彼岸花の赤や茎の緑など、隠れた色彩があることにも気づきました。さらに、キツネの黄色系統やうなぎの黒など、色の記述がなくても、いろいろな情報から色をイメージして、より情景を深く広く想像することができたようです。

私からの働きかけは、「文章中に登場するものを実際に調べてみよう」だけでしたが、子供たちは、さまざまなことがわかってくると、今度は自ら物語の中の謎を見つけだして、謎解きに没頭していました。調べたことは参加者全員で共有したので、お互いに見つけた謎を交換しあうといった協働もありました。まさに「主体的で対話的な深い学び」が実現できていたと思います。

美術の観点も統合することで変化していく抽象画のイメージ

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