「教職員定数の改善」とは?【知っておきたい教育用語】

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子どもたち一人ひとりに対するきめ細やかな指導や教員の負担減につながると考えられている「教職員定数の改善」。その意味とメリットについて紹介します。

執筆/茨城大学大学院教育学研究科教授・加藤崇英

「教職員定数」とは?

「教職員定数」という場合、特に断りがなければ、全国の公立小学校や公立中学校などに配置すべきとされる教員や校長、教頭、その他の職員などの総数を指します。

この総数は、法律(「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」[以下、義務標準法])に従って、全国の公立小中学校等に配置される教職員の総数として算出される基礎定数と、政策目的に応じて措置される加配定数を合わせた総数になります。基礎定数と加配定数については、後述します。

では、これを「改善」するとは、どういうことでしょうか。これは端的には、教職員の総数を増やすことを指します。ここで最も期待される効果は、教員が増え、学級が増えることです。つまり、教員定数の改善により、1学級当たりの子どもの数を減らすことができ、よりきめ細かい授業や指導による教育効果が期待できるのです。

同時に、教員の負担を減らすことにもつながるといえます。よって、「40人学級」を「35人学級」にすることは「教職員定数の改善」(さらに基礎定数の改善)の代表的な例といえます。

法制度と財源

公立の学校とは、市町村や都道府県が設置する学校です。そして義務教育諸学校とは、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の小学部・中学部が該当します(義務標準法第2条)。よって、義務教育諸学校の大部分は、市町村が設置する公立小中学校ということになります。

ここでいう教職員とは、校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師、寄宿舎指導員、学校栄養職員、事務職員を指します(義務標準法第2条第3項)。このうち、もっとも多いのは教諭や講師になります。

よって、冒頭に述べたように、教職員定数の大部分は、公立小中学校の先生の数ということになります。ここでは算定方法の詳細は省きますが、それぞれの教職員の算定方法などは、先に挙げた義務標準法に定められています。そして国は、義務教育費国庫負担金という形で、この教職員定数に基づき算定された教職員の給与などの3分の1を負担しています。かつては2分の1の時代がありましたが、地方分権化が進み、負担割合が見直されました。

義務教育費国庫負担金は、およそ1兆5000億円になり、これは令和4年度文部科学省予算(一般会計)に占める割合でいえば、約28%になります。このように「教職員定数」は、国の教育財政に大きく関わる仕組みになっています。

学級編制と教員の数の関係

今度は逆に学級から見て、単純な計算を例に考えてみます。

例えば、一学年120人の児童がいる場合、「40人学級」の学級編制の制度では、単純に当てはめると3つの学級がつくられることになります。ここに「35人学級」の新たな制度を当てはめるとします。この学年の場合、35人のぴったりの学級をつくるのではなく、35人を超えると学級を増やすということになります。

つまり、1学年120人の場合は、3つの学級から4つの学級に増やすことになります。すると、各学級が30人ずつになることになります。よって、「35人学級」という政策は、この学年の場合には、配置される教員の数が3人から4人に増え、さらに児童数から見ると、実際には30人の学級を実現したことになります。

「40人学級」の場合、40(人)×3(クラス)で学級担任3人がつきます。「35人学級」では、35人を超えると1クラス増えることになります。従って、30(人)×4(クラス)となり、学級担任が4人つきます。この学級数、つまり学級の数が、教諭や教頭などの総数を計算するうえで重要な基となるのです(基礎定数)。

一方、学校にはさまざまな教育課題があります。生徒指導、特別支援、いじめや不登校問題、あるいは指導方法の工夫改善、小学校の教科担任制など、これらの課題の目的に応じて予算措置されることで教職員定数に加えられるものがあります(加配定数)。

つまり、教職員定数は、学級数に応じて機械的に算出される総数である基礎定数と、政策目的に応じて措置される加配定数によって構成されていることになります。

小学校「35人学級」の実現

2021年3月31日、国会で「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」が可決、成立しました。これまで、小学校の第一学年は35人、それ以上の学年については40人を、学級における児童数についての国の学級編制の標準と定めてきました。しかし、この法律改正によって、小学校(義務教育学校の前期課程を含む)の学級編制の標準を5年間かけて段階的に40人から35人に引き下げることになりました。これによって、小学校の全学年の学級を、国の「標準」として35人以下にしていくことになります。

なお、国の「標準」に対して、都道府県は「基準」を定めています。都道府県が、「標準」を下回る「基準」を独自に設定することで教員を多く配置することが可能です。ただし、その分の財源は都道府県の予算から支出することになります。

▼参考資料
文部科学省(ウェブサイト)「令和3年 義務標準法の一部改正等について(小学校35人学級の段階的な実現)」

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