授業中、先生の言葉だけでなく、動きも大きな意味をもつ!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑦】

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全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話
授業中、先生の言葉だけでなく、動きも大きな意味をもつ!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑦】

全国での取材校数900に及ぶ「教育技術」担当記者が、取材時の学校現場で見聞きした、先生方の役に立つ、ちょっとしたネタを披露します。

同じことを実現しようとしても、先生のちょっとした行為の違いによって、子供たちの反応が大きく変わることはよくあると思います。先生が「子供たちをこう育てたい」と思っている方向が同じで、同様のことを伝えているし、そう行動しているつもりなのに、子供たちの反応が大きく異なる二つの事例を紹介してみたいと思います。

子供たちは一生懸命話す先生に向かって発表を続ける

一つ目は、とある県の比較的中心部に近い学校でのお話です。その学校は学校全体で学び合いに力を入れている学校ということで、10年ほど前に学校全体の取り組みについて取材に伺いました。そのため、いくつかの学年の授業を拝見したうえで、放課後から先生方への聞き取り取材となったのです。そのときに拝見した複数の授業のうちの一つがこの授業でした。

それはベテランと言うにはまだお若く、中堅と呼ぶには経験豊富そうな先生で、この学校の研究にも深く関わる方の低学年国語の授業でした。説明文を読んで、そこから読み取ったことを発表してもらい、表に整理していく形で授業を進めていたのです。

何しろまだ学び合うことに十分には慣れていない低学年ですから、子供たちは読みを発表するにも、どうしても先生に向かって意見を伝えようとします。考えてみれば、学齢も低く、承認欲求も強い時期でしょうから、それは仕方のない面もあると思います。

しかし「学び合いに力を入れている学校」なわけですから、先生はどうしても、子供たち同士で意見を伝え合うようにしたいわけです。そこで、子供たちが先生に向かって発表するたびに、真剣な顔で、「みんなに伝えるんだよ」「学び合うんだよ」と説明します。しかし黒板を背に、その先生が熱心に伝えれば伝えるほど、子供たちは一生懸命話す先生に向かって発表を続けていくのです。

もちろん、先生に言われた通り他の子のほうを向いて話す子が、全くいなかったわけではありません。しかし、一生懸命話す先生に向かって発表し続ける子供たちが大半でした。

腕を大きく動かして、子供の視線から外れていく

もう一つの授業を見たのは、別の県の中心部から離れた自治体の、落ち着いた住宅地にある学校でした。やはり10年近く前のことですが、その学校も子供たち同士の対話を大事にし、学びを深めることに力を入れている学校でした。

その学校に在籍するベテランの先生に授業を拝見したいとお願いをしたところ、事情があって、他学級での飛び込み授業でよければということになり、二つ返事で快諾し、お願いをしたのです。

授業は中学年国語の授業でした。そのクラスは、ベテランの先生が担任しているクラスではありませんが、対話を通して学び合うことを大事にしている学校らしく、机を二重のV字型に、常に互いの顔を見ながら話せるように机を並べてありました。

授業は物語文の学習で、登場人物の心情について叙述を基に読み取っていくものでした。ある場面について、まず自力で読み取ってノートに書き出した後、全体で交流をしていきます。その交流場面の最初に、ちょうどV字型の右側先端(教室の右側最前方)にいた子が発表しようと挙手し、指名されて立ち上がりました。

まだ中学年になったばかりの年度はじめでしたし、その子たちを担任していた先生が日々、どんな指導をしていたのかは分かりません。しかし、その子はちょうど子供たちの意見を聞こうと、黒板を離れて近くまで来ていたそのベテランの先生に向かって、「私は~のところから…」と意見を発表し始めたのです。

すると、そのベテランの先生は笑顔で、「みなさんに(向かって)どうぞ」と話しながら、腕全体を下から前方の子供たちへ向けて大きく動かして示し、ちょうど発表し始めた子の視線から外れるくらいの1歩半程度、後ろに下がったのです。

そう言われた子は、その動きに反応するように他の子たちのほうに向き直り、自分の意見を発表していきました。そこからは、相互指名で意見交流が進められていきましたが、どの子も先生のほうではなく、クラスの友達に向かって、自分の読みを伝えていったのです。

先生ご自身の動きに対しても自覚的に

この二つの事例は、言葉だけではなく先生の動き(立ち位置も含め)が大きな意味をもつことの表れだと思います。

「みんなに向かって発表するんだよ」と言いながら黒板を背に、子供たちに向かって熱心に言えば言うほど、子供たちはそれに応えようとして、先生に向かって一生懸命発表をする。もう一方は「みなさんに」と言って、大きく手を動かして指し示すことで教室にいる子供たち全体を意識させ、自分は視線の外へ消えることで、子供たち同士が互いの対話の対象となる。

子供たち同士の交流場面で、自然に子供たちの後ろに立ち位置を変えるベテランの先生。

おそらく、すべての先生は自分の言葉には自覚的だと思うのですが、はたして自分の行動(動きや立ち位置)に対してどれだけ自覚的でしょうか?

つい先日、ある高名な先生に取材をお願いしたとき、若手教師として現場にいた頃、自分自身の授業を動画に撮って見直すことが何度もあったと話しておられました。それはもちろん、自身の授業自体について見直しを図り、次の授業改善につなげるためだったのですが、そうやって客観視することで、ご自身の行動(動き)についても見直しも図られたようです。

今は研究授業などでは必ずといってよいほど、動画を撮っています。おそらく、それはきちんと見直されていることでしょう。しかし、それ以外のごく日常の授業も動画で見直してみると、新たな発見があるのではないでしょうか。

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執筆/矢ノ浦勝之

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