小3国語「こそあど言葉を使いこなそう」板書の技術
今回の教材は「こそあど言葉を使いこなそう」です。小3の板書は、感想の交流をしたり、発言を位置付けたりします。表やカードなどを工夫して、分類・整理する力を付けましょう。
監修/元京都女子大学教授・同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/埼玉県八潮市立八條小学校教諭・櫛引千恵(せせらぎの会)
単元名 こそあど言葉を使いこなそう
教材名 「こそあど言葉を使いこなそう」(光村図書 3年)
目次
単元の計画(全2時間)
1 こそあど言葉の使い分けを整理する。
2 文章中の言葉を指し示すこそあど言葉について考える。
板書の基本
○分類・整理する力を付ける板書
ふだん、あまり意識せずに使っていた言葉を分類・整理してみると、「言葉のきまり」を見つけることができます。「こそあど言葉」も、その1つです。
子供たちは、「こそあど言葉」を、会話の中で日常的に使っています。しかし、使うときには、特に「きまり」を意識することなく、「これ」や「それ」などと使い分けて話しています。
そこで、黒板に表を貼り、28個のこそあど言葉を分類・整理する学習を位置付けます。この学習を通して、分類・整理する力を付けるとともに、ゲームの要素を取り入れて、「言葉のきまり」を見つける楽しさを体験できるようにします。
○学習成果を確かにする板書
学習の終末には、本時を振り返る時間を設定します。子供は、板書を見ながら今日の学習で大切なことやわかったことを振り返り、ノートに書きます。
そのときに、大切なことがわかるように、大切なことは◎を付けてから書き始めたり、キーワードを赤チョークで書いたりします。
「今日の学習で、分かったことは、」のように、振り返りの書き出しの言葉を板書すると、書き出しに悩むことなく、すぐに書き始めることができます。◎の内容や、赤チョークの言葉を読み返し、自分の言葉で書くことで、学習成果を確かにすることができます。
板書を活用した授業の進め方(1/2時間目)
1 「こそあど言葉」とは、どんな言葉かをつかむ
「こそあど言葉」の例を示し、どんな言葉かをつかませます。
本時のめあてを板書し、絵の吹き出しにある□の中に、どんな「こそあど言葉」が入るかを考えさせます。「あれ」「どこ」が入ることを確かめ、□の中に書き入れます。
2「こそあど言葉」の表の項目をつかむ
「こそあど言葉」の表を貼り、「あれ」「どこ」など、5つの「こそあど言葉」カード(マグネット式)を提示します。このカードが、表の中のどこに入るかを考えさせ、表に貼りながら、「物事」「場所」「方向」「様子」を表す「こそあど言葉」を捉えさせます。(写真①)
3「こそあど言葉」ゲームを行い、「こそあど言葉」の表を完成させる
ゲームの概要と進め方を説明し、ゲームを行います。
〈ゲームの概要〉
学級で、2つのチームを作る(ここでは、1つを北チーム、もう1つを南チームとする)。
北チームは、前面の黒板に貼った「こそあど言葉」の表に、南チームは、教室の後方 に置いた移動黒板に貼った「こそあど言葉」の表に、28枚の「こそあど言葉」カード を貼って、表を完成させる。どちらのチームが正しく早く完成するかを競う。
〈ゲームの進め方〉
①ゲームは、写真②のような表から、開始する。
写真②
②28枚のカードの順番がばらばらになるように、カードをよく切る。
このカードをそれぞれのチームの子供たちに1枚ずつ配り、28枚を全て分ける。
③スタートの合図で、最初の一人が、自分の持っているカードを1枚、表の当てはまると思うところに貼る。貼り終わったら、次の人がカードを貼りに行く。28枚のカード全てが貼り終わるまで続ける。
④話し手・相手との距離について書かれた4枚のピンクのカードをどこに貼るか、チームで相談して貼る。
⑤28枚の「こそあど言葉」「ピンクのカード」の位置を確かめて完成したら、「終わりました」とチームの全員で言う。
4 完成した「こそあど言葉」の表を見て、「きまり」を見つける
表を基に、「こそあど言葉」について、気付いたことをノートに書かせます。
子供の発言を基にして、表の左側に「こそあど言葉」の役割、使い方(きまり)について整理して板書します。 子供は板書したことをノートに視写します。
5 習得した「こそあど言葉」を使って、教室にあるものについて、友達とやり取りする
〈例1〉
A:「あの絵を、見て。」
B:「Mさんの絵?」
A:「いいえ。その隣の絵だよ。」
B:「Nさんの絵だね。」
〈例2〉
C:「あれ、とって。」
D:「え、これ?」
C:「ちがうちがう。」
D:「どれ?」
C:「そっちのだよ。」
D:「あ、これね。」
6 「こそあど言葉」を使うときに、気を付けることを考える
友達と自分が、同じものを指すことができるように、会話をするときに気を付けることを考えさせ、子供の発言を板書します。
板書を活用した授業の進め方(2/2時間目)
1 本時のめあてを確かめる
前時に作成した表から、物事、場所、方向、様子などを、実際に指し示す「こそあど言葉」について想起させます。本時のめあてを板書し、本時は文章中にある「こそあど言葉」について学習することを確かめます。
2 教科書の例文を読み、「それ」が指し示すものを見つける
例文を書いたシートを貼り、シートの赤い□の中に、「おばあさんからもらった赤いぼうし」と書いたカードを貼ります(写真③)。この文章を子供たちに声に出して読ませ、気付いたことを発表させます。
話し合いから、言葉が重複していてくどい感じがすることに気付かせ、「おばあさんからもらったぼうし」というカードを、「それ」という「こそあど言葉」カード に貼り替えます(写真④)。この文章を声に出して読ませ、「それ」に替えると、すっきりわかりやすくなることに気付かせます。
写真④ 写真③
「おばあさんからもらった赤いぼうし」のカードと「それ」のカードを黒板に並べて貼ります。「それ」は、「おばあさんからもらった赤いぼうし」を指し示していること確かめ、「それ」から「赤いぼうし」に向けた矢印を青チョークで書きます。
「こそあど言葉」を使うと、16文字で説明する内容を「それ」という2文字で短く書き表すことができることを確かめて板書します。
3 練習問題を各自で行い、板書で確かめる
教科書P.89の練習問題の1を各自で考えさせます。その後、板書しながら確かめます。板書するときは、どの問題も、「こそあど言葉」、青い矢印、「指し示すものや事柄」の順に左から右へ板書します。
4 〈チャレンジ〉として、既習教材から「こそあど言葉」が指し示すものを確かめる
最初に、既習教材「言葉で遊ぼう」の1段落目を読んで、カード1の「これら」が指し示すことは、「しりとりや早口言葉」であることを見つけさせます。青チョークで矢印を書き、指し示すことを書き加えます。
次に、「言葉で遊ぼう」の5段落目を読んで、カード2の「このように」の「この」が指し示す事柄を見つけさせます。青チョークで矢印を書き、「この」は、②段落から④段落に書かれた内容全てを指し示していることを確かめ、指し示す内容を書き加えます。
最後に、既習教材「きつつきの商売」の最初の5文を読んで、カード3の「こう」が指し示すことを見つけさせます。「こう」が指し示すことは、「こう」の文より後に書いてあることに気付かせます。青チョークの矢印の向きが今までと反対になることを確かめ、「こう」が指し示すことを「おとや」と書き加えます。
5 文章中の「こそあど言葉」が指し示すことについて、まとめる
最初に、「赤いぼうし」の例文や練習問題、カード1の例から、青チョークの向きが、左から右に向いていることを確かめます。指し示す事柄の多くは、「こそあど言葉」の前にあることを、カード1の下に板書します。
次に、カード2の例から、指し示すことは、前の文にある言葉だけでなく、前に書いてあるたくさんの内容を指し示す場合もあることを確かめ、カード2の下に板書します。このとき、例外もあるということを意識付けるために、「しかし」という言葉を書き入れます。
最後に、カード3の例から、指し示す事柄の多くは、「こそあど言葉」より前にありますが、この例のように、「こそあど言葉」の後の事柄を指し示すこともあることを確かめて板書します。
6 板書を見返し、本時の学習の「振り返り」を書く
赤チョークの◎が本時の大切な学習内容であることを確かめて、今日の学習の振り返りを書かせます。このときに、「今日の学習で、分かったことは、」と書き出しの言葉を板書します。
〈参考図書〉
𠮷永幸司『𠮷永幸司の国語の強化書』(2015 小学館)
𠮷永幸司監修『日本語の力がのびる ことばあそび ④ことばをあつめよう』(2016 ポプラ社)
構成/浅原孝子