フレッシャーズ期を乗り切るV.S.O.P.

今回は、喫茶室のポリシーに反してお酒の話? いえいえ、教員にとって大切な素養を表す英単語の頭文字です。V.S.O.P.は、おもに年齢によって進化していくべき教員のキャリアステージを表す言葉として使われますが、若手の先生に是非覚えて欲しい、若手専用のV.S.O.P.もあるんですよ。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
学級担任は経営者
新規採用、若手の先生方は突然担任を命じられ、学級を経営するという経営者になります。まだよくわからないのに、児童やその背景にいる保護者の皆さんと相対することになります。この時期はすべての人がうまくいくとは限りません。特に大きなウエイトを占める授業は、なかなか児童が満足レベルまでに達するのが難しいです。幾多の課題に直面し、課題を解決しながら進んでいくことになります。
二十数年前、わが国の教育界では学校教育法施行規則が改正され、教員免許がない民間人校長を任用する仕組みができました。民間の企業ノウハウを取り入れ、マネジメント力を駆使した学校経営をしてほしいという狙いからです。
わたしの居住地近くの学校ではスーパーの営業総務部門で活躍された方や新聞記者経験者などが、それぞれの学校で手腕を発揮されました。その中のお一人をあるマネジメント系の研修会でお呼びし、お話を伺いましたが、発想が豊かで教員の世界では考えつかなかったことばかりでした。
民間人校長さんの指摘に、「学級担任はまるで中小企業の経営者だ」ということがあります。つまり、学級を「経営する」という視点から見ると、児童は経営者である教師にとっては部下であり社員です。すべて社員が円滑に活動し、業績を伸ばすことで経営は順調に推移します。そして、その経営理念を理解してもらい、支持賛同を得る相手が株主である保護者になります。児童生徒、その背景にいる保護者に対して、うまく自分の経営方針をたて、進めていかなければならないわけです。
そして、新人なのに、突然はじめから担当(担任)として、顧客の前に立たされるということは民間企業では絶対ないということです。ある意味、教育界は一般的な社会とは違っている、つまり社会常識からかけ離れているとも言えます。これに対応していかなければならないわけです。では、いったいどうしていけばいいのでしょうか。
教職のキャリアにおけるV.S.O.P.とは
Very:非常に、
Superior:優良な、
Old:古い、
Pale:琥珀色に透き通った
の略で、いかにもおいしそうな雰囲気を醸し出しています。
教職員のキャリアに当てはめると、『教職のV.S.O.P.』としてこんな解釈ができます。
20代はVitality (バイタリティ)
とにかく、「元気」で乗り切る。くよくよしない、失敗しても当たり前と開き直る。時間があればクラスの子たちと元気に遊ぶ。思ったことをやろうとして、拙いながらもやってしまう。いろいろなことをたくさん学ぶなど、20代の体力と活力ある時期のよさを最大限に生かしていこうとする年代。なお、20代は、Variety(バラエティ・多様性)とする方もいらっしゃるようです。
30代はSpeciality(スペシャリティ)
20代でやってきたことを少し凝縮し重点化して学んでいく。自分の所有免許教科はもちろん、興味のある教科や領域を深めていく。長期研修などのチャンスを生かして、自分のモデルとする教師や研究者などを追ってどこまでも深く学んでいく。それを市町村教委が主催する研究発表会や所属する研究会などで発表し、批正を受けながらさらに高めていく。「あの人は○○○のスペシャリスト」と言われるまでに自分の専門性を追求し努力する年代。
40代はOriginality(オリジナリティ)
30代で培った専門性に、先行実践を踏まえて自分の実践を上乗せし、より高い教育技術や教育方法を身につけていく。自分のオリジナル実践などを全国レベルの大きな研究会や学校の教育実践に近い学会、あるいは出版社や企業が募集する論文発表の場などの機会を利用し、より高い次元に極めていく。できれば、広く後輩の皆さんに伝えていこうとする個性を発揮する年代。
50代はPersonality(パーソナリティ)
この時期は、自分の専門分野をより高いものにし、勤務校だけでなくより広いエリアで実践を伝えていく。また、マネジメントの職に進み、学校のリーダーになって力を発揮する。自分のことだけではなく、ほかの多くの人や後進の皆さんへ自分の個性を発揮しながら学んできたことや教職の道を伝えていこうとする人間性溢れる年代。
このV.S.O.P.は、キャリアステージを説明するのにぴったりです。ただ、人によっては年代を超えて、1ランクも2ランクも上に進んでいるすごい方はたくさんいます。