先生といっしょに水の恐怖を克服だ!【4年3組学級経営物語11】

8月②「具体的な支援」にレッツ・トライだ!
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。アンテナを張り、子ども達の悩みに寄り添う大切さを知った渡来先生。泳げないことに悩むハジメを支えるため、個に応じた支援をしっかりと実践し、悩みの解決へ一歩一歩進んで行きます。
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
目次
<登場人物>

主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。

教職20年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。

教職3年目。4年2組担任。新採のトライだ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。
トラウマ脱出大作戦、開始!
「えっ、洗面器で練習するの! それも屋上で」
校舎屋上に、水を満たした洗面器が二つ。
海パン姿の二人が、その前に座ります。
「今日の課題は基本中の基本の体得。水中では絶対に息を吸わない、吐くだけ。…それだけ」

思い切り息を吸い込んだ渡来先生が、洗面器に顔を突っ込みブクブクと泡を吹き出します。
「水の中では息を吸い込まなきゃいい。横にいるから安心して」
うん、と頷き洗面器に顔を入れるハジメ。
最初は恐々。でも暫くして慣れてきました。
勢いを増していく泡を、先生は見守り続けます。
「吸うのは空気だけ…、それを守れば大丈夫!」
ハジメが納得できた時、暑さでフラフラになりながらも先生はニッコリ微笑みました。
「よし明日から浮く練習だ。プールに入るぞ!」
「俯せの姿勢で、お腹の下にビート板を入れると絶対浮く。フロートも増やすから大丈夫だ」
プール開放後の二人だけの秘密練習。
最初はしがみついていたハジメが、徐々に水平な姿勢になってきた時、新たな課題が示されました。
「今度は重心のコントロール。頭を上げればお尻が沈む。下げれば浮く。…見本を見せるから」
浮いたり、沈んだりして見せる渡来先生。
「頭を下げると体は浮く。これは泳ぐ姿勢の基本だ」
頭を上げ下げする練習を続け、浮く姿勢を実感します。
それから数日後、フロートの数も怖さも減少したハジメ。
「人の体は浮くことが納得できれば、もう怖くない。明日からいよいよ壁キックにトライだ」