学級経営に生かす自然教室、修学旅行
子供たちの人間関係を広げ、さまざまな力を育てられるような自然教室や修学旅行にするポイントを紹介します。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・青木洋俊
目次
事前の指導で目的意識を高める
5年生の自然教室や6年生の修学旅行などの集団宿泊的行事と学級活動との関連を図ることで、一人一人が目的意識を持てるようにすることが大切です。
学級活動(2)イ「よりよい人間関係の形成」板書例
人間関係を広げるグルーピング
集団宿泊的行事におけるグループは、多岐にわたります。
そこでは、人間関係を広げる視点で学級や学年の友達とかかわりを広げられるように配慮することが大切です。
例えば、平素と異なるかかわりが生じる部屋グループを最初に決めた上で、「同じ人と一緒にならない」という条件で行動グループなどを順に決めていきます。比較的親しい友達と部屋グループを一緒にし、行動グループをそれとは違う友達と一緒にするようにすれば、友達とのかかわりを広げるチャンスとなります。多様なグループを決めることをあらかじめ伝えるとともに、制限時間を設定してグループづくりをしていくと、比較的スムーズに決められます。
オリエンテーリングで絆を深める
自然教室でオリエンテーリングを行う場合は、チェックポイントごとに、人間関係を深めるための簡単なグループワークを行うと効果的です。
森の中で迷って不安になったときの合い言葉を決めておくことをお勧めします。大きな声で合い言葉を言うと、遠くから他のグループの声が返ってきて安心できます。
心を燃やせ! キャンプファイヤ
「出し物」づくりを現地で行う工夫
キャンプファイヤーでの「スタンツ」(出し物)を事前に準備する場合もありますが、当日、現地で、行動グループごとに1分程度の「スタンツ」を考えて練習する活動の場を設定すると、よりグループ内のかかわりが深まります。
キャンプファイヤーでは、盛り上がる場面だけでなく、後半には、しっとり語り合う場面を設定することも大切です。活動を振り返りながら、心が揺さぶられる場面をつくれるとよいですね。
役割を通して責任感を育てる!
集団宿泊的行事のねらいは、人間関係を広げ、深めるだけではありません。さまざまな役割を担うことで、一人一人の責任感を育てていく場にもなります。
野外炊飯で協力を学ぶ!
野外炊飯では、役割分担をして取り組むことが、協力につながるということを改めて学ぶチャンスです。食材を扱う役、米を炊く役、火を起こす役、食器や器具を準備する役など、それぞれが責任を持って取り組むことで、よりおいしい食事ができあがります。
感動体験が子供を育てる
集団宿泊的行事は、学校行事として、主として学年単位で行う教育活動です。自分の学級だけで進められるものではありません。グルーピング方法など、学年での共通理解を図った上で進める必要があります。
実施に当たっては、実地踏査、使用物品の準備、旅行会社や現地施設との連絡、児童の健康管理等、さまざまな配慮事項があります。そのため、そうした準備に追われ、「引率」することが目的となってしまいがちです。
忘れてはいけないのは、集団宿泊的行事が「教育活動」であるということです。集団宿泊的行事を通して、子供たちの何を育てていくのかを念頭に置き、指導していくことが大切です。
「小学校生活の思い出は?」と聞くと、多くの児童が自然教室や修学旅行等を挙げます。新型コロナ禍においても、感染症防止対策を講じつつ、子供たちにとって、素敵な集団宿泊的行事にしていきたいですね。感動体験が子供たちを育てるのです。
集団宿泊的行事に向けた「めあて」と「振り返り」を「キャリア・パスポート」として蓄積しておくことで、次の集団宿泊的行事の際に活用することができます。
イラスト/菅原清貴
『教育技術 小五小六』2021年6/7月号より