低学年の二学期は万全の事前準備で完璧リスタート!

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夏休みあけの学級経営リスタート特集
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埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者

稲垣孝章

長い夏休みを過ごしてきた子供たち。ずっと集団生活から遠ざかって、家庭での生活を基盤としていたために、課題の提出状況等、個々に状況が大きく異なってしまう現状があります。このような実態も踏まえ、学級担任としてどのように事前準備をしておくことが必要なのかについて考えてみます。

文・埼玉県公立小学校校長・稲垣孝章

夏休みの思い出を発表する子供

子供を迎える前の環境整備をしよう

学習環境の整備は、教師の重要な責務です。特に、長期に及ぶ夏休み後の学校の環境は極めて厳しい状況にあります。

⑴教室環境の再確認

換気、水道水には十分な注意が必要です。

夏休み中、高温にさらされ、密閉された環境の教室は、空気の入れ換えをする必要があります。また、しばらく使用しなかったエアコンのフィルターの清掃等についても配慮が求められます。さらに、水道水もしばらく水を流し続けなければ飲めないという状況にあることが考えられます。まずは教師が教室に赴き、環境の現状を把握することが大切です。

⑵黒板への板書の準備

板書の言葉は、子供の意欲を喚起します。

今日から二学期がはじまります。
二学期は、うんどう会やたてわりえんそく、じきゅうそう大会やお楽しみしゅう会もあります。
楽しいことがたくさんあって、わたしも今からわくわくしています。
二学期も、みんなでなかよく、楽しい毎日にしましょう。

   たんにん ○○より

二学期も楽しいことがいっぱいあって、とても楽しみだな。

提出物の区分けの準備をしよう

夏休み後の提出物は、多岐にわたります。

全員が共通して取り組んだプリント類は、箱などに種別ごとに表示して提出するコーナーを設置しておくことが求められます。

しかし、大きな立体作品や、模造紙にまとめた作品などについては、事前に場所を明示することが難しい場合もあります。せっかく持ってきた力作も、ロッカーの上から落ちて形が崩れたり、他の子供が触って壊してしまったりするケースも考えられます。

まずは、提出物の区分けの準備を行い、子供たちが混乱しないように明確な指示をしておくことが大切です。

そして何よりも、夏休み後、初めて登校してくる子供たちを、学級担任が教室で一人ひとりに声をかけながら、笑顔で迎えることが最も大切な準備となります。

先生、おはようございます。

プリントは、この箱の中、絵はロッカーの上に置きます。大きな作品は、廊下の長机の上に置いてください。

夏休みの提出物を持っている子供と先生


夏休み明けの子供の実態を把握しよう

子供の実態把握が指導の基盤となります。

夏休み明けに登校してくる子供たちの様子は様々です。真っ黒に日焼けして笑顔で登校してくる子、何となく疲れた様子の子、何か不安を抱いている素振りを見せる子など多様です。

家庭での生活を主とする長期の夏休みは、子供を大きく成長させる面もありますが、夏休み前の学校生活の習慣に、なかなか戻らない子供もいるのが実状です。

まずは、学級担任が個々の子供の実態を把握することが大切です。その実態把握をもとに、事前に構想しておいた指導の手立てを再調整していくことが求められます。

夏休み明けの子供の実態

子供たちの実態を把握するためには、どのような視点をもつことが必要なのかしら。

【夏休み明け実態把握チェックポイント10か条】

生活面

  • 通学班での登校時刻に遅れていないか。
  • 朝から眠そうな顔をしていないか。
  • 靴や上履きのかかとを踏んでいないか。
  • 体調不良を訴えることがないか。
  • 顔色や表情に心配となるかげりはないか。
  • 服装や持ち物に際立った変化はないか。
  • 爪や髪型、身体に大きな変化はないか。
  • 言葉遣いに著しい乱れはないか。
  • 友人関係でのトラブルはないか。
  • 家庭環境の状況に心配な変化はないか。

学習面

  • 話を聞く態度は乱れていないか。
  • 学習用具の忘れ物は増えていないか。
  • ノートの文字は乱れていないか。
  • 学習時の姿勢は悪くなっていないか。
  • 授業中の私語、手悪さは増えていないか。
  • 学習用具の整理整頓はなされているか。
  • 提出物等の忘れ物は増えていないか。
  • 授業での発言の様子に変化はないか。
  • グループ学習等での学びはできているか。
  • 図工や観察等の作品に変化はないか。

学級経営として、再確認していくには、どのような視点をもつことが必要なのだろう。

【学級経営再確認チェックポイント5か条】

「知育」としての学力面

・子供の主体的な学びを創造できるように

  • 指導計画の再確認は行っているか。
  • 指導方法の再構成への手立ては講じたか。
  • 目標の達成状況は把握できたか。
  • 評価方法について確認できたか。
  • 個々の子供の変容に目を向けたか。

「徳育」としての心情面

・子供の主体的な活動を創造できるように

  • 規律ある生活態度の状況はどうか。
  • よりよい人間関係は構築されているか。
  • 思いやりの心の育成に取り組んだか。
  • 公共心を育む活動を取り入れたか。
  • 子供の自主的な活動を推進しているか。

「体育」としての体力面

・子供の主体的な運動を創造できるように

  • 体育の授業の構想を立てたか。
  • 子供の外遊びの状況はどうか。
  • 保健に関する指導は適切であるか。
  • 給食指導の徹底は再確認されたか。
  • 登下校、安全指導は徹底されているか。

夏休みの成果を認め合う活動をしよう

努力の称賛は次の活動意欲に直結します。

夏休み中は、家庭での生活を基盤とするため、個々の子供の努力は、完成された作品等から把握するしかありません。

そこで、子供の努力の成果だけでなく、過程での思い等を含めて、互いの努力を認め合う活動を展開していくことが大切です。

⑴夏休みの成果を発表する会の計画

成果発表会は、事前の計画が重要です。

学級として、どの時間を活用し、どの程度の発表会を行うのかを明確にしておく必要があります。

具体的には、朝の会や帰りの会、給食の時間を活用して、順に発表することも考えられますが、可能であれば学級活動等を活用して1単位時間を確保して実施することが求められます。

例えば、学級会で次のような議題で話し合うことで子供の活動意欲を高めます。

(議題)「夏休みがんばったね会をしよう」

(話し合うこと)
①どのような賞をつくるか
②盛り上げるために何をするか
③役割分担はどうするか

学級会の様子

⑵夏休みの成果を発表する会の運営

成果発表会は全員が称賛される場にします。この成果発表会は、どの子も称賛される活動にすることが前提です。仮に、作品の出来映えが十分でなくても、発表内容や発表方法が稚拙なものであっても、互いに個々の発表のよさを見取り、称賛し合う活動にしなければ、本来のねらいを達成することはできません。

具体的には、次のようなプログラムで実施することが考えられます。

「夏休みがんばったね会」
1 はじめの言葉
2 クラスの歌
3 めあての発表
 がんばったことのスピーチ
 がんばったで賞の発表
6 感想発表
7 先生のお話
8 終わりの言葉

…「ランキング形式・クイズ形式・実物の提示・実演方式・拡大提示・体験の活用」等、多様な発表方法を提示しておくとどの子も発表しやすくなります。

…全員が何らかのかたちで「がんばったで賞」をもらえるように、夏休み中の日記や生活表を活用すると、努力を見取る視点となります。

夏休み思い出ランキングをしよう

係活動の活性化は、学級文化を創造します。 夏休みの作品コーナーを設置して、個々の作品を展示することは、互いの努力を認め合う貴重な場となります。

さらに、その活動の一環として、係活動として学級全体のランキングにまとめることも効果的です。具体的には、次のような内容のランキングが考えられます。

「夏休みの思い出」「夏休みに読んだ本」「夏休みに見た生き物」「楽しかった遊び」「おいしかった食べ物」「きれいな場所」など

【夏休み思い出ランキング】

●新聞係

夏休みの思い出で一番多かったのは、プールに行ったことで、二番目は…

●図書係

夏休みに読んだ本の中で、みんなに紹介したい本の一位は、この本でした。

●生き物係

みんなが夏休みに見た生き物の中で、一番多かったのは、セミでした。二番目は…

夏休み思い出ランキング

係活動再編成の構想を立てよう

夏休み明けの係活動の再編成は重要です。

係活動の再編成は、編成の仕方によって、子供たちの活動意欲が大きく異なってしまいます。例えば、教師が一方的・機械的に係活動の再編成を行ってしまうのと、学級会での話合いをもって全員で再編成を行うのでは、その後の活動に大きな違いが見られることになります。

まずは、「学級会の議題」として取り上げて、学級全員の合意形成によって係活動が再編成できるような指導の手立てを講じていくことが大切です。

【学級会での流れ】
1 これまでの係活動を振り返ります。
(よかった活動・もっと工夫したい活動・課題となった活動)
2 出された意見をもとに係を再編成します。
①継続したい活動 ②統合したい活動 ③分割したい活動 ④廃止したい活動 ⑤移行したい活動 ⑥新設したい活動
3 各係におおむね必要な人数を確認します。
4 希望を優先しながら各係に全員が所属します。

係活動再編成の具体例

係活動の具体的な再編成の方法としては、次のような六つの視点で考えることができます。

①継続したい活動

○生き物係 ○図書係 ○かざり係 ○誕生日係

②統合したい活動

○レク係 ○歌係 ○クイズ係 → ○集会係

同じ係でも今までより楽しくて、クラスのためになる活動をしたいね。

前の係のよいところを取り入れよう。

③分割したい活動

○新聞係 → ○かべ新聞係 〇プリント新聞係 ○クイズ新聞係

④廃止したい活動

○落とし物係 ○整理整とん係

自分の大事な物だから、落とし物や整とんは自分でやろう。

⑤移行したい活動

○電気係 ○窓係 → ○日直当番

⑥新設したい活動

○学級のあゆみ係 ○イラスト係 ○よいところ探し係

新しくできたイラスト係は、とても楽しそうね。

秋の行事への事前準備をしよう

秋の行事に向けての事前準備は大切です。

生活科の学習の発展として、また学級活動の実践活動として、さらには学年行事や児童会活動等として秋の行事を行うことがあります。

それらのねらいによって、実践活動は異なりそのための準備も違いますが、次のような事前の準備をしておくことが求められます。

お店屋さん等の行事

活動するお店等の設定によって事前の準備は異なります。プリンカップや牛乳パック、空き箱等の廃材を活用する場合は事前に、早めに保護者に連絡しておくことが大切です。

お店屋さんの活動

秋の自然を活用する行事

落ち葉や木の実等を活用する行事は、校内や近隣に多くの自然がある場合には、校務員等の職員に事前に連絡をし、確保できるようにしておきます。また地域の公園等に出向く場合には自然の状況を確認し、必要な事務手続きへの着手を計画的に行うことが大切です。

落ち葉で工作を作る子

イラスト/畠山きょうこ

『小二教育技術』2019年9月号より

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