子供を活発に動かすには〈後編〉【伸びる教師 伸びない教師 第18回】
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「システムの中で人を動かすにはどうするか」の後編です。今回はシステム作りの失敗談です。豊富な経験で培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする平塚先生の人気連載。
※本記事は、第18回の後編です。
プロフィール
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県上三川町立明治小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を歴任。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
伸びる教師はシステムを与えるだけでなく、そのシステムの中で人を動かすにはどうしたらよいかを考えます。伸びない教師はシステムだけを与えます。
先生が楽になる校務支援ソフトを導入
教頭になり校務支援ソフトを導入したいと考えました。
これが導入されれば、今までエクセルで行ってきた作業を一元化でき、もっと先生方の仕事が楽になると考えたからです。導入に当たっては、校長の説得、学校予算の確保、業者との値段交渉、通知表・要録等の係との話合いと、やるべきことはたくさんありましたが、すべてクリアでき導入することができました。この時も、先生方はエクセルよりも使い勝手がよくなったと言ってくれました。
その後、調子に乗った私は、グループウェアの導入に乗り出しました。
スケジュール管理、掲示板、出退勤管理、施設予約等、機能が豊富で、導入すれば職員室の黒板に1日の計画を書かなくてもよくなりますし、これまで紙に書いて配付していた先生方への連絡も掲示板ひとつで済みます。学校のスケジュールだけでなく個人のスケジュールも作ることができます。家でも教室でも見ることができ,いろいろな点で先生方の業務改善につながると考えました。
より便利になるという思い込み
これでさらに先生方の仕事が楽になり喜んでもらえると思っていたのですが、それは大きな間違いでした。
先生方にグループウェアの導入を伝えたところ反応は微妙でした。明らかにこれまでの導入時と違う反応です。質問もたくさん出ました。
「職員室の黒板に予定表はもう書かないのですか。結構見ていたのですが……」
「施設予約はこれまでの磁石で貼り付けた方が見やすいのではないですか……」
その後、導入した際にも混乱がありました。
40代の女性の先生はあまりパソコンが得意ではありませんでした。掲示板への投稿の仕方がわからず、「私はついていけない」と叫びパニックになってしまいました。そんなことが重なり導入してからしばらくは、連絡事項を紙で配る先生とグループウェアを使う先生の両方が混在する形となりました。
私はグループウェアを使うことで、より便利になると考えていましたが、先生方はこれまでのシステムを変えてまでそこを便利にしたいという意識がなかったのだと思います。私がひとりで勝手に進めシステムを押し付けたことが今回の失敗の原因でした。しかも、導入までいろいろな先生と話をしたり、導入に関して丁寧に説明したりするなどの配慮が欠けていました。
システムを与えるだけでなく、システムの中でいかに人を動かすことが大切か、痛感した出来事でした。
構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ
※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。