「依存症」とは?【知っておきたい教育用語】
ゲームのことが気になって授業に集中することができない、家庭でもゲームに熱中して誰とも話をしなくなる、睡眠も不規則になっている……。そんな状態に陥っていたら、依存症の兆候が疑われます。子どもの依存症が問題になっていますが、解決の道筋を探ってみます。
執筆/立正大学准教授・奥野誠一

目次
「物質依存」と「行動嗜癖」
依存とは他に頼って生活・存在することを意味します。特定の対象に頼ることは誰にでもありますが、依存症はそうした対象の扱いを自分の意思でコントロールできなくなり、日常生活や心身の健康に悪影響が生じている状態のことを指します。
依存には、物質依存(アルコール・ニコチン・薬物などを対象とする依存)と行動嗜癖(ギャンブルなどを対象とする依存)の2つのタイプがあります。
アメリカ精神医学会の「DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)」や、世界保健機関の「ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)」には、物質依存ではアルコール・たばこ・薬物が、行動嗜癖ではギャンブルが診断名として存在します。
依存症の診断名には挙げられていませんが、買い物、性行動、インターネット、ゲームなど、自分の意思でコントロールできなくなる対象はいろいろあります。
どうして依存症になるか
アルコールや薬物などを体内に取り込んだり、インターネットやゲームをしたりすることで、喜び・安心感などの快感を得ます。これが「報酬」になります。依存症の場合、こうした報酬をもたらす特定の物質や行動を求めるような神経回路(報酬系)が脳内につくられます。
これを繰り返すと、それまでと同じ刺激では報酬と感じにくくなり、より強い報酬刺激を求めるようになり、物質の使用量や行動の頻度・強度が増加します。
このように依存症は、脳に変化が生じ、自分の意思でコントロールできなくなることを特徴とします。はじめは快感を得たり、日常生活での苦痛を紛らわしたりするために気分転換として行いはじめたものが、徐々に習慣になり、コントロールできなくなるのです。