「安全教育」とは?【知っておきたい教育用語】
巨大地震や自然災害が起こったら子どもたちをどう守るか。交通事故や痴漢の被害に遭わないためにどのような指導が必要か。災害も事故もいつ起こるかわかりませんから、学校は常日ごろから「安全教育」を怠ってはなりません。
執筆/玉川大学教授・寺本潔

目次
拡大する安全教育のジャンル
安全教育のジャンルは、大別すると自然災害などから身を守る「防災」と、痴漢や誘拐などへの注意喚起を促す「防犯」、通学路や地域での「交通事故回避」の3つが代表的な項目でした。
近年では、新型コロナウイルスに代表される感染症への注意喚起、情報化社会におけるネット犯罪被害への注意、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)や個人情報の流出など、安全教育が担うテーマは多岐に及んでいます。
そのため、安全教育を行う機会が限られている状況でいかに児童生徒の危機回避の能力を養うかがポイントとなるでしょう。年間数回の避難訓練や不審者対応を行事的にこなす対処的な教育では実質的な効果は上がりません。
学校における安全教育
文部科学省は2001年に安全教育の資料として『「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育』を作成し、2010年と2019年に改訂しています。
作成の目的は、「子供たちの生涯にわたる安全に関する資質・能力の基盤を培う」ことであり、その資質・能力を身につけた子どもたちが社会人となってから「社会全体の安全意識の向上や安全で安心な社会づくり」に貢献することにあるとしています。
構成は「第1章 総説」「第2章 学校における安全教育」「第3章 学校における安全管理」「第4章 事故発生時における心のケア」「第5章 安全教育と安全管理における組織活動」で、各学校で広く活用されることを願っています。
そして安全教育においては、「日常生活において、危険な状況を適切に判断し、回避するために最善を尽くそうとする『主体的に行動する態度』を育成するとともに、危険に際して自らの命を守り抜くための『自助』、自らが進んで安全で安心な社会づくりに参加し、貢献できる力を身に付ける『共助、公助』の視点からの安全教育を推進することが重要である」としています。