「学校のマネジメント力」とは?【知っておきたい教育用語】
学校現場の課題がますます複雑化・多様化している現在、学校をよりよく運営していくためには「チームとしての学校」の力が必要です。そのためには、学校のマネジメント力を見直し、強化していくことが求められます。
執筆/茨城大学教授・加藤崇英

目次
「学校の自主性・自律性」を確立するために
学校において「マネジメント」という語が頻繁に用いられるようになりましたが、その最初の契機は、2000年12月に提出された「教育改革国民会議報告」において「学校に組織マネジメントの発想を導入し、校長が独自性とリーダーシップを発揮できるようにする」と指摘されたことにあります。
そして2004年3月には、文部科学省の「マネジメント研修カリキュラム等開発会議」によって「学校組織マネジメント研修─これからの校長・教頭等のために─(モデル・カリキュラム)」が示されました。
この中で、「学校における組織マネジメント」について、「学校内外の能力・資源を開発・活用し、学校に関与する人たちのニーズに適応させながら、学校教育目標を達成していく過程(活動)」と位置づけています。
21世紀に入ったころから特に、学校は内外環境の激しい変化に対応して自ら変化することが求められてきました。そしてそれに応えるためには、教職員の協働的な関係によって改善・開発的なプロセスを構築し、実践する「マネジメント力」が必要であることがいろいろな場面で提唱されています。
制度的には、2000年以降、職員会議の法制化、学校評議員や学校運営協議会(コミュニティ・スクール)の制度化などが進められてきました。こうした制度の中で「特色ある学校づくり」と「開かれた学校づくり」を進めるために、リーダーシップを発揮する校長等の管理職にこうした「マネジメント力」が必要であると指摘されたといえます。
教育の質保証と責任体制の構築
OECD(経済協力開発機構)によるPISA(生徒の学習到達度調査)が2000年に初めて実施されましたが、2003年の結果が公表され教育界は衝撃を受けました。日本の生徒の学力低下が明らかになったのです。
こうした学力、すなわち子どもたちが将来において必要とする学力をいかに身につけるか、そしてこれを学校がいかに保証するか、同時にその保証を実現するための学校における責任体制の構築が課題となってきたといえます。
2006年に教育基本法、その翌年には学校教育法の改正により、副校長や主幹教諭、指導教諭(いわゆる「新しい職」)の創設、学校評価の義務化などが規定されました。また、全国の公立学校ではそれまでの勤務評定に代わる新たな教員評価が実施されるようになりました。こうした教育政策は、すべて「学校のマネジメント力」と関係しています。
さらに、2011年に発生した東日本大震災などの災害の教訓から安全対策が見直されたり、2013年に公布された「いじめ防止対策推進法」に則った組織体制を構築する課題が生じたりするなど、子どもの命・健康・安全を守る組織づくりがいっそう重要になってきました。
このように、教育の質保証のための学校における責任体制の構築が大きな課題となっていますが、これらの諸課題を実施・運用するための「マネジメント力」も強く求められるようになっています。