【教師の働き方改革】仕事内容は「年・月・週・日」で把握しよう
先生自身が毎日笑顔で、子どもたちの前に立ち続けることは、実は、教育における大切な前提条件です。教師として仕事内容の全体像を把握し、子どもに向き合う時間の確保と質を高める仕事の進め方の工夫の紹介です。
執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一
目次
教師の働き方改革は子どものために
私たちが、働き方改革を目指すのは、仕事の質を高めるためです。もちろん、仕事の絶対量が多いという方もいるでしょうし、そうした方に必要なのは、むしろ職場改革でしょう。ここで提案する働き方改革は、通常の仕事量である人が、子どもに向き合う時間の確保と質を高めるために行う工夫です。ここを間違うと、ただ早く帰ることが目的になったり、手を抜くことが目的になったりします。あくまで、教師の働き方改革は、子どものためにあると肝に銘じましょう。
第一に、仕事の全体像を把握する
第一に行うべきことは、自分の仕事の全体像を把握することです。全体とは、「年間」「月」「週」「日」の4つを言います。まずは、年度はじめの職員会議で提出される「学校行事予定表」を見て、「二計測」「一年生を迎える会」「運動会」「校外学習」「遠足」「通知表下書き提出」……のように手帳に黒い文字で書き込んでいきます。
こうした年間行事予定表に書き込まれるような業務は、当然準備に多くの時間がかかります。実施期日を書き込むだけではなく、「着手時期」や「締め切り」を書く必要があります。例えば、運動会が6月であれば、4月の末には、子どもたちが取り組む種目を決定しなければならないでしょう。そこで、4月26日までに種目を決めると手帳で書き込みます。こうした締め切りに関わることは赤で書き込むようにします。
「刻む」ほうが効率がよい業務がある
「年間」の行事
ところで、行事には、その期日に対して早めに取り組みさえすれば支障がないものと、業務を「刻んだ」ほうがよいものがあります。
後者の最たるものは通知表の所見です。これを一気にやると、書いている時間より悩んでいる時間の方が長くなり、効率が悪いです。そこで、6月初旬に運動会がある場合、運動会終了後に所見を半分仕上げてしまうと決めます。
つまり、6月初旬にはすでに運動会に関わる部分の所見ができあがっていることになります。残りは、6月中旬から、生活や学習について1日5人ずつ付け加えていけば、余裕を持って書き上げることができます。また、書いているうちに「書けない子」が出てきたとしても、そうした子の観察を、その時点から特に念入りに行っていけば十分に間に合います。このように年間の業務に関しては、「刻んだ」方が効率よくできるものがあります。
「月」の行事
「月」の行事については、前月の職員会議で確認された際に手帳に書き込むようにします。ここでは、行事と合わせ、主要な教科の進度も調べましょう。生活科などでゲストティーチャーを招く、地域の施設を訪問する場合は、1か月前には少し詳しい打ち合わせを行わなければなりません。手帳に書くと同時に管理職に話を通し、すぐに先方にコンタクトしましょう。
「週」の行事
「週」の行事に関しては、学年の打ち合わせや学年便り(時間割)を作成する段階ではっきりします。この段階では、単元テストの実施日の目処と、次の学級通信の記事を何のテーマで書くのかを決めます。また、そのテーマはできるだけ通知表所見でも活用できるようなものを選んでおきます。こうすることで、無理なく学級通信を書くことができ、その上、通知表所見の「種」も蓄積できることになります。
日々の業務は質×場所×時間規模を意識
最後に、その「日」の業務の進め方について書きます。
まず、すべての業務を書き出す必要があります。一つ一つを付箋に書き出したり、通勤時間が長い人はスマホのタスク管理アプリを活用したりするとよいでしょう。このように、すべての業務を書き出したら、取り組む順番や場所を決めていきます。業務をいつ、どこでするかは、その質に大きく関わってきます。
仕事の質に合った場所を選択する
例えば、それが頭を使う作業であるのか、手足を使って行う仕事であるのかを考えます。
国語の教材解釈をするには、さすがに賑やかな職員室では難しそうです。そこで、放課後の教室ということになります。一方で、諸費納入袋への記名は、放課後、周辺の教師たちと雑談をしながらでもできそうです。
放課後、難しい仕事に、周囲の人に話しかけられたり、電話によって中断させられたりしながら取り組むのはいかにも効率が悪いと言えます。仕事の質に合った場所を選択することは、働き方改革において小さな問題ではありません。
時間規模を考えて仕事の順番を決める
また、その業務を行うのにかかる時間規模も、仕事の順番を決めるに当たっては大切な要素です。時間規模が小さい場合は、業間5分や給食の時間などを活用して、さっと終了させることにします。また、本来は時間規模が大きくても、刻んで行うと、後で楽になることが、1日の業務の中にもあります。
例えば今、国語の文学的文章の読解に力を入れて指導しているとしましょう。こうした場合、学級通信の材としてこの授業を使わない手はありません。授業後の5分間で、「7月15日 山田 登場人物の気持ちを会話文から想像して発表する」といったように、子どもの様子をすぐにパソコンに打ち込み、保存しておきます。
このたった5分の仕事を積み重ねるだけで、生き生きとした授業記録を学級通信に記載できるようになります。また、授業後すぐに数名のノートを回収して、職員室に戻ったついでにコピーしておけば、学級通信の材料になったり、通知表の所見の「種」になったりもします。
所詮、一人の人間ができる業務の量には、さほど差がありません。一つの業務をいくつもの業務に転用し、活用することで、より効率的な仕事の仕方を具現できるはずです。一石二鳥や一石三鳥を狙える仕事をすることが、働き方改革のポイントです。
山田洋一(やまだ・よういち)1969年北海道札幌市生まれ。北海道公立小学校教諭。教育研修サークル「北の教育文化フェスティバル」代表。著書は『気づいたら「忙しい」と言わなくなる教師のまるごと仕事術』(黎明書房)ほか多数
『教育技術 小一小二』2019年7/8月号より