#33 誰のために練習しているの?【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は芸術祭の映画の台本より、いよいよ本番が近づいた親善運動会の長縄練習のシーンです。本番までのカウントダウンが始まります。

第33話 校庭4 長縄跳び練習(芸術祭)

足を怪我したあきら

先生「みんなに残念な知らせがある。この前けがをしたあきらだが、右足の複雑骨折で全治3か月と診断された。」

みんな「えーっ!」

先生「親善運動会には間に合いそうもない。仕方ない。残りのみんなでがんばることにしよう。よし、練習を始めるぞ!」

(跳び始めるが、やはりうまく跳べない)

(先生は「もっと前で跳べ」とか「その調子だ」とか叫んでいる)

(並んでいる人は、その間、友達とおしゃべりをしている)

先生「やめやめ、みんなもっと集中しろ! 並んでいるときにしゃべっているんじゃない!」

あやか「ロベルト先生、キャプテンのあきらくんがいないとみんなの気持ちがまとまりません。」

女の子2「私たち、もうだめ。」

男の子2「やっぱり無理なのかもしれない。」

先生「ちょっと座れ!(少し間をおいて)いいか。おまえたちは誰のために練習しているんだ。先生のためか? 違うだろ。緑ヶ丘小学校のため、家族のため、あきらのため、そして何よりも自分のためだ。それに、何だその服装は、そんないい加減なことじゃだめだ。シャツを入れて、靴下をピッと伸ばせ!」

(仕方なく、言うとおりにする)

たかし「ロベルト先生、質問です。体育着をきちんと着ると、何で縄跳びが跳べるようになるんですか?」

先生「たかし、たまにはいい質問するじゃないか。それはな、『すべてがつながっている』ということだよ。つまり、体育着もきちっと着られない、いい加減な気持ちが、長縄跳びの7分間に出てしまうということだよ。だから、体育着だけでなく、靴そろえや挨拶もしっかりやるんだぞ。」

たかし「なるほど。」(みんな頷いて納得する)

先生「他に質問はあるか?」

ひろし「はい、ロベルト先生。」

先生「ひろし、何だ。」

ひろし「先生は、なんで日本人なのに、ロベルトって言うんですか。」

先生「(質問が言い終わるか終わらないうちに)そんなことはどうだっていい。よし、じゃ練習始めるぞ!」

みんな「オー!」

(練習を再開する)

(しばらく跳んでいると、めぐみがひっかかって転ぶ。そこへサッカーボールを持っただいすけが来る)

だいすけ「おまえ、そんな跳び方じゃだめだよ。もっとリズムよく跳ばなくちゃ。」

めぐみ「だいすけくん。」

だいすけ「先生。なんかリズムに合わせて跳んだ方がいいんじゃないですか?」

先生「そうだなあ。何かいい方法はあるか?」

ガリ勉太郎「先生。そういう時は、メトロノームを使うといいんじゃないですか?」

男の子5「なるほど。さーすが太郎!」

女の子3「じゃあ私、音楽室から持って来ます。」

(メトロノームに合わせて跳び始める)

先生「よし。まずは、1分間に60回ペースだ。」

(リズムに合わせて跳び始めると、うまく跳べるようになる)

こうへい「だいすけの言う通りだ。よし、今度は1分間に80回ペースで跳んでみよう。」

みんな「いくぞ! オー!」

(だんだんペースを上げて練習していくみんな)

(ひっかかって助け合う仲間たち)

(なな子に跳び方を教える友達)

(あきらの代わりにリーダーになるだいすけ)

(雨の日は体育館で練習するみんな)

(カレンダーに丸印を付けて、本番までのカウントダウン)

(記録表に数字を書き込んでいく)

挿入歌  ゆず「夏色」

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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