三学期の総まとめにトライ!【4年3組学級経営物語20】
1月①「総まとめの三学期」にレッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。どう終わらせて未来につなぐのか…。「総まとめの三学期」は、子どもたちにも教師にも重要な時期。さあ、ラストミッションに全力トライだ。頑張れチーム4年!
目次
<登場人物>
冬休み宿題は学級のラストミッション計画
「明けましておめでとうございます、大河内先生!」
「本年もよろしくご指導ください!」
年末年始の休み明け。久しぶりの職員室で挨拶する葵ゆめ先生と渡来勉先生に、ニッコリ応える大河内巌先生。
「今年も頑張ろう。ミッション、完成したかな」
大きく頷く二人。急いで席につくと、葵先生が鞄から資料を取り出して説明を始めます。
「私は、学習の総まとめに取り組みます。一般的ですけれど、基礎基本の定着は大切なので…」
熱心に耳を傾ける主任、学生ボランティアの大和川強くんも、興味深そうに聞いています。
「…小テストを実施し、各単元の理解度を再チェック。弱点を補強して、高学年になっても困らない学力を養います。もちろん学級づくりも、総まとめの心構えでしっかり取り組みます!」
資料を示しながら、ますます熱く語る葵先生。
イワオジの叱咤激励
話は半月前に遡ります。
いつもなら指導法や教材の分析等を丁寧に教えてくれる主任が、二学期最後の打合せでこんな宣言をしたのです。
「三学期の指導計画は、君たち自身のプランをもとに組み立てることにする。…4年のラストミッションだ、しっかり構想してくれよ! *POINT
「えっ!」「…」「…なぜ?」と戸惑う三人。温かい眼差しで見つめながら、主任が続けます。
「三学期は短いが、子どもにとっても教師にとっても大切な時期。子どもたちが実り豊かな時期となるか否かは、担任の力量次第・・・。担任も、その実現を目指して試行錯誤する過程で、指導力、教師力が磨かれる。…教師としての総まとめだ。だから私に気兼ねせず、頑張ってほしい」
長い沈黙の後で、きっぱり答える渡来先生。
「トライします。自分のラストミッションに!」
「教師としての成長の機会を、私たちに与えてくださって…本当にありがとうございます」
深々と礼をする葵先生に、微笑みを返す主任。
「意図を理解してくれたな、二人とも…。困った時はいつでも支援する。だから自分のラストミッションを、冬休みにしっかり構想してくれ」
力強く頷く二人に、羨ましそうな大和川くん。
「早く卒業して、チームに入りたいよぉ!」
大和川くんの雄叫びが、みんなの心を温かくしました。
4年生の三学期は、心身ともに大きく成長する時期です。「4年生としてこれだけは」というところを、きちんと整理しておきましょう。
また、もうすぐ迎える高学年に向けての心構えも伝えていき、ゆとりをもって5年生になれるようにしましょう。
【学習】【生活】【体力づくり】どの項目についても「自分で決めたことを続けて取り組む」という場面を設定することで、
◦ 課題を見つける力
◦ 自己決定をする力
◦ 継続して努力する力
◦ 根気強く取り組む力
など大切な力を育てていくことができます。
「勉・強」コンビ誕生!
自分のミッションを語り終えた葵先生を、絶賛する渡来先生。
「ホント最高です! それに2組の雰囲気も。…葵先生のニックネームも!」
「それは言わないで!」。眉間に皺がよる葵先生。
「ゴホン…。次は渡来先生のミッションだな」
地雷を踏むな…、と視線で注意を促す主任。
「は、はい…、私は授業方法の工夫です。子ども一人ひとりの習熟度に応じた指導の充実。勉(つとむ)と強(つよし)の勉強コンビで」
渡来先生の熱弁と、「フルパワーで頑張ります!」と興奮気味の大和川くん。
話が終わると同時に、主任が言い放ちました、
「君たちのラストミッションを中心に、4年は総まとめの三学期に全力でトライするぞ!」 *POINT
「ウォ―!」。雄叫ぶ「勉・強」コンビ。葵先生は、小さくガッツポーズ。三人を温かく見守る主任。
中学年の総仕上げにレッツ・トライ!
【学習】
○ 漢字の読み書き、割り算の筆算、分数の計算など基礎的な学習の取りこぼしがないように、計画的に復習を積み重ねる。
○ 一人ひとりの課題をつかみ、放課後に「頑張りタイム」を設けて支援したり、自主学習の形で家庭学習としても取り組めるようにしたりして、着実に力を付けられるよう工夫する。
学習用具の準備、発言の仕方、板書の取り方など学習の構えについても、きちんと身に付いているか確認する。
ゆめ先生のラストミッション!
そして、1月も終わりに近いある日の事…。
「アツシとノリ。漢字の小テスト、やり直しよ」
チャイムが鳴り、ボールを抱えて汗だくで教室に戻って来た二人に、言い渡す葵先生。頭を抱えるアツシ。口を尖らせるノリ。
「チェック厳しすぎだよ…」「今日は勘弁してよ、先生!」
「絶対ダメ! こんな熟語も読めないんだから」
『熱意』と記された箇所を示す葵先生。困った顔をする二人。
「ええと…、何だったけな?」
「あなた方に不足していること…。放課後学習で身につけましょうね」
ニヤリと笑う葵先生。
(1月②につづく)
『小四教育技術』2017年8月号増刊より