支援を必要とする子にも、他の子にも優しいユニバーサルデザインの授業環境を
ユニバーサルデザインの視点を取り入れた、どの子にも優しい環境づくりについて解説します。
執筆/東京都公立小学校教諭・桐川瞳
目次
今こそ、ユニバーサルデザインの視点を
新型コロナウイルスの影響が続く中、教育活動にもさまざまな制限があることと思います。対話することやグループ活動ができない中で、多くなってくるのは個人で行う活動です。しかし、学級の中には指示が通りづらい子や、支援を必要とする子が少なからずいるでしょう。
「教科書の○ページの△行目から〜に気を付けて読みましょう」と教師が伝えたとします。大半の子は指示を受け止めて教科書を読み始めるでしょう。では、そうではない、配慮を必要とする子供にはどのような手立てが考えられるでしょうか。
例えば、耳から情報を得ることが難しい子供には、手順をワークシートで示すなど、視覚的支援が必要になります。一度に情報を処理することが難しい子供には、手順を短い言葉で示すことが必要になるでしょう。気を付けるポイントが捉えづらい子供には、キーワードを四角で囲ってみよう、といった声かけが必要になるかもしれません。
しかし、毎日行われる授業の中で個別支援を行うことが難しい現状があります。そこで大切になるのがユニバーサルデザインの視点です。
言葉を短く、メリハリのある指導を行い、確認のために板書で手順を示し、文章を読みながらキーワードを四角で囲む作業を、クラス全員に行わせます。
この指示は、支援を必要とする子供だけでなく、他の子供にとっても活動内容を明確に捉えるための助けにもなるのです。「ないと困る支援」だけでなく、「あると便利で、役に立つ」支援を教師が行うこと。これこそが今の授業づくりに求められる視点ではないでしょうか。
ハンドサインで意見を伝えやすい環境づくり
発表する場を設けにくい中でも活用できるのがハンドサインです。
などで、友達の発表に対して自分の考えを示す方法を取り入れているところは多いと思います。ハンドサインのよさは、全員が授業に主体的に参加できるところにあります。ハンドサインを出すためには、友達の考えをよく聞くことが必要になります。人前で発表することを苦手とする子供がいることを考え、ハンドサインで考えを示した後に「では、発表してみようと思う人?」と一声かけてから発表の場を設けることで、全員が安心して考えを示すことができる環境づくりにつながります。
3つのハンドサインに慣れてきたら、クラスオリジナルのハンドサインを取り入れてみるとよいでしょう。「共感」や「質問」といったクラスオリジナルのハンドサインを子供たちと一緒につくることで、考えを聞く場がより深いものになっていきます。ハンドサインの種類は、掲示物で示すと使いやすいでしょう。
イラスト/山本郁子
『教育技術 小三小四』2020年10月号より