子供に日記を毎日書かせる5つのメリット|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

独自の学級経営&教科指導で注目を集める、「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。
実は、子供たちと毎日欠かさず日記のやり取りをしているそうです。多忙を極めるぬまっち先生が、学年を問わず、毎年子供たちに日記を書かせるメリットとは何か、聞いてみました。

日記は毎日全員提出! コメントを書き即日返却

ボクは教師になってから毎日子供たちとの間で続けていることがある。

それはノートを1冊、必ず毎日提出してもらうこと。ノートには、翌日の時間割と、連絡事項、そして「日記」を書かせている。

日記は、何を書いてもよくて、書く量も問わない。だから、いっぱい書いてくる子もいれば、1行しか書かない子もいる。

とにかく毎日忘れずに書いて提出するように伝え、ボクも必ずコメントを書いてその日に戻している

何年も日記を続けているのは、ボクなりにメリットを感じているから。

今回は日記のメリットについて話そうと思う。

メリット1)毎日必ず、子供たち全員とコミュニケ―ションが取れる

休み時間になるとボクとおしゃべりしたい子たちが集まってくる。でも自分から教師に話しかけられる子もいれば、そうではない子もいる

そもそも教師とおしゃべりをすることに興味がない子もいるけれど、本当は先生と話したいけど、自分から話しかけるのが難しい子もいるよね

なかなか先生に話かけられない子を取りこぼすことなく、全員と一日一回必ずコミュニケーションが取れるのが日記の良さだと思っている。

メリット2)子供の本音を聞き出したり、気持ちを発散させるツールになる

もう一つのメリットは、子供たちの気持ちの出口になるルートができること。

困ったり悩んだときなどいざというときに、こっそり担任にSOSが出せたり、溜まった不満をぶちまけられるツールを確保しておきたいと思ったんだ。

先生は誰でも子供たちに対し、もし困ったことがあれば、なんでも相談してほしいと思っているはず。だからみんなに「何かあればなんでも先生に相談してね」と伝えているだろう。

保護者もおそらく家庭で「いじめられたら先生に相談しなさい」とか「困ったことがあったら、相談しなさい」と伝えているだろう。

もしその困りごとが他人に聞かれてもよい内容だったり、先生に何かを相談したことが他の人に気付かれてもよければ、そのアドバイスは効果を発揮するだろう。

しかし、誰にも気付かれずに、こっそり相談したいことがある場合は効果的ではない場合もある。

なぜなら、先生の勤務時間中に、誰にも気付かれず、先生と二人っきりになれるということは難しいからだ。

だから二人きりにならなくても個人個人とつながるルートをつくっておきたいと思っていたんだ。

悩みがある子だけがこっそりノートを出すと気づかれる恐れもあるけれど、原則全員が毎日出すことになっているからバレずに済むよね。

安心して秘密や本音を書けるように、子供たちには、「家族には見せないから正直に何でも書いていいよ」と言っているし、保護者にも「何か気になることがあればこちらから連絡するので、絶対に子供の日記は見ないでください」と伝えている。

メリット3)クラスや学校のさまざまな情報が入ってくる

自分の悩みだけでなく、学校やクラスで起きたいろいろなことを日記を通して子供たちがボクに教えてくれたりするのもメリット。聞いてもいないのに「今日告白された」なんて情報を教えてくれる子もいるけれどね(笑)。

「実は今日校庭でこういう事件が起きていた」
「Aちゃんがいじめられているみたいだから、なんとかしてほしい」
「●組の先生に叱られたけど、あれは○○先生の誤解だと思う」

など、ボクが知らなかった重要な情報がいろいろ日記に書かれていることがある。

トラブルは深刻化しないように、早期対策が大事と言われるけれど、教師が気付かないこともあるよね。子供からの情報は早いからものすごく助かるんだ。

よいことも悪いことも、子供たちは担任に見て欲しいことをピンポイントで日記に書いてくれるから、少なくともボクは気づいていない振りをしながら、ポイントを外さずに自分の目で確認できるし、すぐに対応することもできる

トラブルに対して、まずはコメントを書いて返して見守ることもあるけれど、そこに不満があるんだなということを理解した上で見守るのと、全く気付かないで見守るのでは全然違うよね。

もちろん、後でそっと本人や周囲の子に話を聞いたり、それとなく朝の会や帰りの会で話題に出し、子供たちに話し合わせることもある。

その時にはボクなり工夫をしているのだけれど、その話は別の機会にしよう。

ともかく、日記はなるべく早く全部読みたいと思っている。ボクの中では、ノートを読んでその日に返却するということを、一日の仕事の中でも最優先事項でやっているつもりだ。

メリット4)「書く力」の成長を可視化できる

日記だけでなく、授業以外に行う「家庭学習」はほぼこのノートに書かせている。計算ドリルや漢字ドリルは別のノートがあるけれど、調べもの学習などはこのノートに書いて提出させている。

1冊にまとめることで、使う側もチェックする側もとても効率的だし、ノートはどんどん溜まっていくから、自分の書く力や家庭勉強の蓄積を可視化できるところもいい。

学年末に4月に使った1冊目のノートの自分の日記を見て、「へたくそな字!」と笑っている子もいる(笑)。自分の書く力が成長したことを実感でき、やる気もグングン伸びていく

ちなみにボクが一年生の担任になったときは、ひらがなの学習を4月からスタートし、6月にはマスターさせ、そこからノートをスタートしたよ。

メリット5)日記は、子供と教師の
信頼関係の土台になる

ノートを毎日続けるのは大変だと思うかもしれない。

たしかに、毎日書かせて即日返却するためにはコツがあるし、また、重要な情報を書いてくれた子供たちにどう対応するのかにもポイントや留意点があるけれど、それについてはまた今度話そう。

ひとつ言えるのは、子供との信頼関係は一朝一夕でつくれるものではないということ。やっぱり日々の積み重ねから生まれてくるものだと思う。

だから、子供が「疲れた」「おやすみ」のひと言しか書いてこないとしても、忙しくてコメントを書くのをさぼりたくなったとしても、とにかく続けることを大事にしている。

日記を通して毎日一人ひとりとつながること。この積み重ねが、ボクと子供たちにとってお互いに信頼関係を築く土台になっていると思う。

コロナ禍の影響で、なかなか子供たち一人ひとりと密な関係を気付けないと悩んでいる先生がいたら、日記は試してみる価値があるんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

取材・構成・文/出浦文絵

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