ケンカ発生! 口を閉ざす子にどうする!?【4年3組学級経営物語22】

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学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
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2月①「心の交流」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。いつもは仲良しの児童二人が大ゲンカするトラブルが発生! 教師たちは、ケンカの理由を聞き出して解決をしようとするが…。児童のトラブル解決には、まず子どもを理解し信頼することから。子ども同士、教師と子どもの「心の交流」にレッツ・トライだ!

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一 歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。
大和川強

大和川くん(大和川強/やまとがわつよし)
西華小学校にボランティアで手伝いに来ている教育学部生。小学生時代、イワオジのクラスで、イワオジに憧れて教師をめざす。ルックスがイワオジに似ていることから、クラスメートから「小イワオジ」と呼ばれていた。

チーム4年にふりかかったトラブル案件

学級経営物語イラスト

「ええっ、ヒロとタカがケンカを…!」

出勤早々の渡来勉先生と葵ゆめ先生が、驚きの声をあげました。朝一番に『昨夜遅く、公園で小学生二人が…』と地域から学校に連絡が入ったのです。

「幼馴染で大の仲良しなのに…」と、ヒロの担任の渡来先生は首を傾げます。タカの担任の葵先生が、「どうして…?」と思わず聞きました。

始業前の職員室、生徒指導主任の大河内巌先生が、厳しい表情で詳しい状況を説明します。

「地域の方の仲裁で、大事に至らなかったがな…。連絡によれば無抵抗のタカに、ヒロが一方的に向かっていったそうだ。ケンカの原因については、何一つわからん。…一切しゃべらないそうだ」

「まずは事実確認ですね。我々で対応します!」

主任の話を受け、素早く動き出す担任たち。 *POINT

「よし、任せたぞ!」

主任は大きく頷きました。

友達関係の課題を持ち越さないために

年度末になり、子どもたちの様子はどうでしょうか。うまくいっている時は、誘い合って楽しく活動していると思いますが、そうでない時は、子ども同士がぶつかり対立したり、友達を仲間はずれにし たりすることもあります。友達関係のトラブルは、年度をまたぐと解決がより難しくなるので、早期発見・早期解決が何事も大切です。休み時間は要チェックです。授業中とは異なり教師の目の行き届かないことがあるので、子どもたちの友達に対する態度や言葉遣いが乱暴になっていることもしばしば見受けられます。

沈黙の二人

「原因は言えない。…ゴメン」と辛そうな顔のヒロ。休憩時間の教育相談室で繰り返される問答。頑なに心を閉ざすヒロ。辛抱強く話を続ける渡来先生が、ため息をつきながら呟きました。

「これでは一方的に乱暴したことになる。ヒロがそんなことをするとは…信じられないんだ」

苦しそうなヒロを見つめる渡来先生は、様々なことを思い出していました。みんなのために頑張るヒロ。学級活動の司会役での活躍、友だち想いで良識的、…あのヒロとは違い過ぎる。

そう考えていると、ヒロの言動に隠れている<何か>がボンヤリ見えたような気がしました。

「ヒロ、理由は無いけれどさ…」と静かに伝えます。「答えられないのは…、タカへの気遣いなんだろ。…多分そんな事かなって先生は思うよ。だってさ、ヒロはすごく友だち想いだからなぁ」

「…トライだ先生」

泣き出しそうな表情のヒロの頭を、黙って優しく撫でます。

その時ドアが開き、葵先生が難しい表情で入ってきました。

首を横に振り、ため息をついて呟きます。

「タカは何もしゃべらないわ、何度尋ねても…」

何一つ解決せずに、チャイムが鳴りました。

沈黙の理由とは…

「やる気ゼロだな、ヒロは…」試合形式のサッカーの授業の後、片付けをしながら不満を漏らすカズ。

「ヒロがシャキッとしないから、負けたんだぞ。クラブチームのレギュラーなのにさ!」

傍らのジュンが、大人びた口調で答えます。

「お疲れモードね。チームの練習、厳しいんだ」

「そうか、同じチームだったんだ。…あの二人」

思い出した渡来先生に、ジュンが告げます。「2組のタカも…。試合前で毎日シゴかれている。でもタカは上手くないから、いつも補欠」

その時、ずっと渡来先生の心に引っかかっていた<何か>の正体がはっきり見えてきました。

そして、先生は決心しました。『ヒロとタカを…、直接話し合わせよう。すぐにトライだ!』

(2月②につづく)

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『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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