クラスをまとめる!中学年の夏休み明けリスタート術
二学期での子供たちの成長を見据えた学級づくりのポイントとアイデアを紹介します。
監修/東京都公立小学校主幹教諭・佐々木陽子
目次
中学年の二学期リスタートの留意点
①物が揃わないという問題
夏休み前に、家庭に持ち帰った道具や教科書などが、どこにしまったのか分からなくなってしまう子がいます。
大半はしっかり保管できているのですが、長い休みの期間中に保護者が捨てた、もしくは部屋のどこにあるのか分からないと訴える子がいます。
保護者も子供が中学年になると、低学年のときほど、一緒に持ち物を確認することがなくなるので要注意です。
保護者会や学年便りなどで引き続き保護者の協力を仰ぎ、子供の成長の手助けをしてもらいましょう。
②学校外での遊びのトラブル
仲間意識が強くなるのが中学年の特徴です。夏休み中も、小人数でも大人数でも、遊び場や時間を決めて遊びを思いっきり楽しみます。
しかし、学校の中ならまだしも学校外になると、大人の目の届かないところでトラブルが徐々に大きくなることもあります。
「ゲームのカードを友達に取られた!」
「貸したはずの物が返ってこない!」
「遊びを約束したのに、違う人と遊んでいた!」
「帰宅する時間が守れていない!」
など、学校外でさまざまなトラブルが起きるようになり、そうした学校外で起きたトラブルやこじれてしまった人間関係を、二学期以降、学校の中まで持ち込むようになります。
子供たちへ指導することはもちろん、こうした問題が起こりがちであることを、保護者にもお知らせして見守ってもらいます。
子供たちの様子を見とるときのポイント
表情をよく観察する
特に子供の目は口ほどにものを言うので、よく観察しましょう。
例えば、生活のリズムが乱れている子は、目が半分閉じています。「眠くなくても時間になったらふとんに入り、寝たフリしながら横になろう」などと伝えるなど、クラス全体で早寝早起きを心がけるように声かけをしましょう。
休み時間の過ごし方の観察
休み時間の子供の様子を観察します。仲のよい友達で集まって元気に遊ぶことは問題ありませんが、いつも同じ子とだけで会話をしていたり、ポツンと一人で過ごしていたりする子もいるかもしれません。
休み時間は友達関係が図に表現できるぐらい浮き彫りになるため、よく観察しながら、おかしいなと思ったら声をかけるようにしましょう。
教師自身が特に意識すべきこと
いきなり通常の授業をしない
最初の3日間程度は、ゲーム式やクイズ式の学習を取り入れましょう。
なぜなら勉強も運動と一緒で、準備体操が必要だからです。「漢字のビンゴゲーム」や「都道府県ご当地うまいもんクイズ」など、楽しい学習を考えておきましょう。
夏休み中の話をじっくり聞いてあげる
休み中の話を聞くだけで、充実した日々を過ごしていたのか、生活のリズムが乱れているのか、一人ひとりの様子がよく分かります。子供の様子を早期に把握することは、二学期の学級運営に大きく関わります。
休み明けこそ、時間を惜しまずじっくりと話を聞いてあげましょう。
要注意! 二学期以降子供たちはこう変化する!
さらにグループ意識が強くなる
自分のことだけではなく、友達のトラブルにも自分ごととして口を出すなど、グループ意識が強くなります。
友達が入ることでトラブルが収まるケースもあれば、逆にトラブルがどんどん大きくなり、こじれてしまうケースなどさまざまです。
SNSトラブルに巻き込まれる
中学年になると、スマートフォンを持っている子も増えています。
LINEやメールを使いこなすようになり、SNS上で友達の誹謗中傷をしたり、ゲームの課金トラブルが起きるなど、現代ならではの問題行動も増えてくるので、家庭と連携して指導しましょう。
ルールを思い出し、定着させるアイディア
①本日のスター★
朝の会や帰りの会で、ルールが守れた人を賞賛する場面を用意し、先生から発表します。
②ヤッホーday 企画
- ろう下は歩きましょう!
- 次の学習の用意をしましょう!
- 人の話をしっかり聞きましょう!
など、学校の決まりやルールはたくさんあります。その中でも夏休み明けに特に崩れていると感じたルールは、「〇〇を守ろう!」などと書いた掲示を教室に貼り、常に子供たちが意識できるような環境にします。
そして、一日中そのルールを全員が守れていたら、次の日は「ヤッホーday」。お楽しみ会を次の日に設定したり、宿題なしの日にしたりするなど、子供たちがウキウキする企画をごほうびとして用意します。
子供たちのやる気をアップさせるアイデア
① To Change Feelings 音楽♪
5、6時間目や行事で忙しい時期は子供もダレてきます。
事前に一人ひとりから、自分が聴きたい音楽のアンケートをとっておき、アンケートの紙を出してくれた順番にクラスで流します。
例えば、ダレそうなときは、給食後や授業が始まる前に「今日は〇〇さんからのリクエスト曲、〇〇を流します。机の上で寝てもよいので、静かに聴いてください」と伝えて、音楽を流します。子供たちによると、これだけでダレそうな心がスッキリするそうです。
②ちょこっと手遊び
授業中にどうしても集中できない場合は、手を動かすことで心が安定します。
例えば、先生と「アルプス一万尺」をするのもよいでしょう。コロナ対策のため、子供たちは全員前向きで、先生の真似をするようにします。
このとき先生がハミングで歌いながら、徐々に速度を上げると盛り上がります。その他、子供がダレそうなときのちょっとした気分転換になるような手遊びを用意しておきましょう。
子供同士の関わりを深め、荒れを防ぐ活動アイデア
①学年対抗ゲーム大会
クラスで行うゲーム大会と違い、学年対抗で競い合うことで各クラスの団結力が強まり、クラスの雰囲気がよくなります。
クラスの中で、計画委員会を立ち上げ、活動の計画や実行の中心的存在になってもらいます。応援団係、プログラム係、得点係、審判係など、一人一役の係活動も取り入れてみんなで大会を盛り上げていくことで、子供たちのエネルギーや意識がゲーム大会に集中し、荒れを防ぐ効果があります。
②サインごっこ
子供はクラスの中で自分の存在意義がないと感じると、荒れやすくなります。
特に二学期は、クラスにも慣れて淡々と日々が流れていってしまうので、自分の存在意義を感じられるような工夫を考えましょう。
子供同士の関わりを深めるためにも、芸能人になったつもりで自分のサインを考えさせるのもおすすめです。例えば学習時にペアでノートを交換するとき、相手の考えが書かれたノートを読んだら、あらかじめ考えさせた自分のサインを書きます。この作業を入れるだけで、自分の考えを認めてもらえたと感じ、自己肯定感を高めることができます。
中学年は、このようなちょっとした友達同士の関わりがとても大切です。サインごっこなら無理なく楽しく取り組めるので、ぜひ取り入れてみましょう。
③仲間のキラリ!
帰りの会で今日がんばっていた友達や、よい行いをしていた友達を発表する場を設けます。互いのよさを発見して、認め合う人間関係を育てましょう。
取り組みを可視化するために、教室の後ろの黒板に友達の名前と友達のよいところ、自分の名前を書いたカードを貼るとよいでしょう。
子供たちの自主性を伸ばすアイデア
① 教師がしゃべりすぎない
学習面においても生活面においても、教師がしゃべりすぎて子供が考えたり、活動したりする時間を奪ってしまうということはよくあることです。
特に教師は立場上、指導をしていく場面が多いため、常に指示や指導を行い、子供たちの間では、「やりたいからやるのではなく、先生に言われたからやる」という受け取り方をしてしまいます。こうした悪循環をくり返していると子供は指示待ち人間、思考停止状態になってしまいます。
自主性を伸ばすためには、まずは、教師がしゃべりすぎる時間を減らし、子供の話をしっかり聞くようにしましょう。
② 〇〇ポスト
自主性を育てるには、子供たち一人ひとりの思いや考えを吸い上げる環境がなければなりません。
一人ひとりの思いや考えを吸い上げるための工夫として、クラスにいつでも自分のやりたいことを書ける紙を用意しておき、その紙を箱(ポスト)に入れるシステムをつくります。
例えば、学級会で使用する「議題ポスト」には、「5分前行動ができるとよい」とか「もっと運動がしたい」などの意見を書いて入れる。
そして学級会では、ポストに入っていた意見について話し合うようにします。
また係活動で各係にやってほしいことや意見を入れる「係ポスト」を用意しておくなど、いろいろな場面で活用できます。
③ごほうびシールやスタンプ、表彰状作戦
ごほうびには賛否両論がありますが、大人でもがんばったことに対して「ごほうび」がもらえたら、次もがんばろうと思いますよね。子供にも「ごほうび」は効果抜群です。
「忘れ物ゼロが1か月続いた人には表彰状」「給食を残さず食べた人にはキャラクターのスタンプ」など、ちょっとしたごほうびは、自主性を伸ばすことにも役立つものです。
取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎
『教育技術 小三小四』2021年8/9月号より