小3算数「ひき算の筆算」:『繰り下がり』の教え方【動画】
【トモ先生の算数チャンネル】第10回
小学校の算数の授業づくりをお手伝いする『トモ先生の算数チャンネル』。今回は、3年生の「ひき算の筆算」編です。「数え棒」と「位取りカード」を使って数の仕組みを理解しながら、つまづきやすい『繰り下がり』を学習し、十進位取り記数法の考え方につながる指導法をトモ先生がお伝えします。
このシリーズでは、小学校高学年の算数を専門とする髙橋朋彦先生が、小ネタや道具に頼らずに、基本を大切にした質の高い授業づくりができるアイデアをお届けしていきます。
目次
3年生のひき算も「10とあと幾つ」が基本
今回は、3年生のひき算の筆算の学習です。
学習指導要領を読むと、
ア 知識及び技能
(ア)3位数や4位数の加法、減法の計算の仕方
第2学年で指導した2位数及び簡単な3位数の加法及び減法の計算を基にして、3位数や4位数の加法及び減法の計算の仕方を考えることを指導する。
小学校学習指導要領解説 算数編(H29年7月告示)より
と書かれています。
では、基になっている2年生ではどんなことを学習したかというと、
ア 知識および技能
(ア)2位数の加法とその逆の減法
第2学年では、初めに2位数の加法及びその逆の減法の計算を指導する。その際には、第1学年で指導した1位数と1位数との加法とその逆の減法及び簡単な場合の2位数の加法と減法を基にして、和と差を求めることができる。
小学校学習指導要領解説 算数編(H29年7月告示)より
ということで、前回のたし算と同様に、3年生の学習も1年生の学習が基本になっています。
その1年生の学習については以下のようにあります。
(ウ)1位数の加法とその逆の減法の計算
1位数と1位数との加法とその逆の減法については、和が10以下の加法及びその逆の減法と、和が10より大きい数になる加法及びその逆の減法に分けて考える。和が10より大きい数になる加法及びその逆の減法は、「10とあと幾つ」という数の見方を活用して計算する。
小学校学習指導要領解説 算数編(H29年7月告示)より
「10とあと幾つ」というのがポイントです。
100の束が10の束の「バラ」になる、という考え方が重要!
減法の場合は、加法にはない「繰り下がり」が出てきます。
繰り下がりの場合、「10とあと幾つ」の「10」は、10の「束」のままでは計算ができないので、「10の束を1の『バラ』にばらす」と1年生で学習してきました。
繰り下がりのときは、『バラ』を使って計算します。
この考え方を基にして、3年生のひき算の筆算では、100の束が10の束の『バラ』になるという考え方が重要になります!
授業の進め方《基本編》
では、こちらの問題で考えていきましょう。
【問題①】324−182
一の位の計算は、
4−2=2
と、問題なくできます。
そして、十の位になると⋯
あれ!? 「2−8」はできないな、どうしたらいいだろう?
となります。
百の位から借りてくるのですが、このとき、機械的に操作するのではなく、「百の位から借りてきて1になる」という数の仕組みについて、数え棒を使って考えさせます。
300というのは、100の束が3つ分です。
そこから「借りてくる」ということを、以下のように順を追って考えます。
100の束を10の束にばらすと十の位で計算できる。
⬇︎
それにより、十の位は10の束が10個分増えて12になる。
⬇︎
ということは、12−8=4になる。
このとき、十の位は「10の束が4つで40になる」ということを、位取りカードと数え棒を使って確認していきましょう。
ここで、「12−8=4」という計算を「10−8=2、2+2=4」と考える方法もありますので、どちらでもよいと思います。
このように、10の束を使いながら「十の位は10の束と連動している」ということを学習します。
授業の進め方《難題編》
さらに学習が進むと、
【問題②】304−189
のような問題が出てきます。
一の位は「4−9」だ
⬇︎
⋯できないな、どうしたらいいだろう?
⬇︎
そうだ、十の位から借りてくればいいんだ!
⬇︎
あれ?「0」だから借りられない! 困った!!
となりますよね!?
それなら、百の位から借りればいいということなのですが、ここでつまずいてしまいます。
そこでまた活躍するのが「数え棒」です!
「百の位から借りる」ってどういうこと?
⬇︎
100の束を10の束にばらして借りるんだ!
ということが理解できると、ばらした10の束を、さらにばらして十の位に9個、一の位に1個、すなわち「9」と「1」に分けて書くということがわかります。
あとは、【問題①】と同じように、
一の位: 14−9=5
(または、10−9=1、1+4=5)
十の位: 9−8=1
百の位: 2−1=1
と計算できるようになり、答えは『115』と求めることができます。
はじめに「位の意味」を理解することが筆算への道
このように、位取りカードを使って位を意識させ、その位の意味を数え棒を使って解説するとわかりやすくなります。
そして、理解が進んでいったら、数え棒を使わずに考えられるようにしていきます。
さらにもっと学習が進んだら、位取りカードも外し、筆算だけで計算できる子に育てていきます。
みなさんの算数の授業づくりのお役に立てたら嬉しいです!
『繰り下がり』とは、借りること!
『百の位から借りる』とは、「100の束」を「10の束」にばらすということ!
「繰り下がり」はつまずきやすい部分ですが、裏を返せば、ここで位の意味をしっかり理解できれば、計算が苦手な子も追いつくことができるチャンスかもしれません! 数え棒などを上手に活用した授業で子供たちの理解をサポートしていきたいですね。
「数え棒」と「位取りカード」を使った授業づくりは、トモ先生の算数チャンネル第9回:小3算数『たし算の筆算』〜十進位取り記数法もご覧ください!
トモ先生の「ちょこっと学習指導要領」全3回で学習指導要領の軸となるテーマを押さえましょう!
●Part1『主体的な学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント①『主体的な学び』は5ステップ!
●Part2『対話的な学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント②『対話的な学び』のポイントは3つ!
●Part3『深い学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント③『深い学び』のキーワードはコレ!
髙橋朋彦●1983年千葉県生まれ。第55回わたしの教育記録特別賞を受賞。教育サークル「スイッチオン」「バラスーシ研究会」に所属。共著に『授業の腕をあげるちょこっとスキル』『学級づくりに自信がもてるちょこっとスキル』(共に、明治図書出版)がある。算数と学級経営を中心に研究中。
Twitterアカウントは @tomotomoteacher https://twitter.com/tomotomoteacher
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