読み書き障害の子への支援のポイント|できることを見つけ、増やすこと
通常「読み書きの力」は、生活経験や学習の中で自然に伸びていきますが、発達に遅れや偏りのある子どもは、自然にとはいかず苦労していることがあります。
周囲から気づかれにくい「読み書き障害」を、どのように理解し、支援していけばよいのでしょうか。著書『発達障害・ひらがなが苦手 どの子も伸ばす ゆっくりよみかきトレーニング』(小学館)をもとに、多くの発達障害の子どもたちを診察・支援してきた、小児科医の武田洋子先生にお話を伺いました。
武田洋子(たけだ・ようこ)さん
小児科医

目次
読み書きが苦手な子どもの特徴は
――読み書きが苦手な子にはどんな特徴がありますか?
武田 気づきの手がかりとして、 次のような症状があります。
- 音読をおっくうがる
- 初めの1行目は一生懸命読むけれども、後のほうになると疲れて読み間違いが増える
- 語句を間違った箇所で区切る
- 板書をノートに写せない
- 文字の書き順を覚えない
これらは本人の努力不足によるものではないのですから、一人ずつ音読させる際は、辛い思いをしないように、短いフレーズを読ませるとよいと思います。「読み書き」は、全ての学習の基礎になる力であり、ご家族の心配も多いので、その大切さと困難をご理解の上、上手に支援していただきたいと思います。
「心の目の力」への配慮が必要

――先生の著書には、どのような工夫がありますか。
武田 まず心がけたのは、1ページの課題や文字数を少なく、余白を広くしたことです。そのため、読み書きが苦手でも、集中力が不足していても、短時間で1ページの課題を達成できます。この点は、これまでに出した教材でも「負担なく取り組めます」と多くの読者に喜ばれました。
次に、「心の目の力」への配慮です。人は、目が見えるだけでは文字を読むことはできません。そこで問われるのが、専門用語で言うと「視覚認知」の力です。私の教材では、これを「心の目の力」として解説しています。
例えば、文字の上下や「は」と「ほ」などの似ている文字を見分けたり、回り方やはねの方向を覚えたり、視力とは異なる、見てわかる・覚える力を訓練します。特に、「上手な音読」はどの子にも共通する目標ですが、気がかりな点もあります。
この『ゆっくりよみかきトレーニング』では、文字の形を見分ける力、行に沿って視線を動かす力、文字列を適切に区切る力など、つまずきやすい様々なポイントを念頭に、こうした苦手を補い克服するための内容が段階的に掲載されています。