【相談募集中】小学校から中学校への「引き継ぎ」に疑問を感じる

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「全国教育交流会」代表

中野敏治

小学校から中学校へ一人ひとりの子供について引き継ぎをしても、学級を開いてみれば、引き継がれた内容とは全く違う実態。小学校から中学校への引き継ぎにははたして意味があるのか? と感じてしまったという中学校の先生からの相談がありました。「みん教相談室」で、元中学校校長で「全国教育交流会」代表の中野敏治先生が回答してくれた内容をシェアします。 

中学生
写真AC

Q、小学校から中学校への引き継ぎの意義に疑問を感じる

中学校の教師です。今年は1年生の担任です。小学校から一人ひとりの子どもについて引き継ぎをしたのですが、私のクラスの生徒は小学校から引き継いた状況とは全く違うのです。リーダーであると思った子がリーダー性を発揮しなかったり、気になる子がクラスをより良い方向にリードしたりしています。小学校との引き継ぎに疑問を感じてしまいます。(匿名先生・30代男性)

A、目の前にいる子供を見ることが一番の児童理解です

中学校に入学する前、どんな子どもが入学してくるのかを、中学校1年生を担当する先生は知りたいものです。

ピアノが弾ける子どもがどのクラスにもいるようにクラス分けをする中学校もあります。それは合唱コンクールなどでクラスの誰一人ピアノが弾けないとコンクールにもならないという理由だそうです。

新入生を迎える中学校の先生が知りたいことは、どんなことでしょうか。そのことを明確にする必要があります。一人ひとりの子どもの何を知りたいのか、それを知りたいのは何のためなのか。そのことを担任として、学年として、学校として明確にし、小学校へお願いする必要があります。伝えられるものを知るだけでなく、知りたいことを知ることが大切です。

子供は日々変化している時期

しかし、どんなに新入生一人ひとりの様子を中学校の学級担任として知ったとしても、子どもは日々成長し、変化する時期です。中学校で担任をしていると、このことに気づくものです。中学校一年生から二年生に進級した時、さらに最上級生になった時、中学校の三年間でも子どもたちは大きく成長していきます。前年度の状態とはまったく違い、目立たなかった子どもが学校のリーダーとして成長することも多くあります。

まずは、新入生の担任となった時、このクラスをどんなクラスにしたいのか、クラスの一人ひとりの子どもたちがどのように成長してほしいのかをイメージすることが必要ではないでしょうか。目の前にいる子どもたちに直接聞くことが一番子ども理解に繋がります。4月の学級開きの時にアンケートを取り、自分について、どんな生徒になりたいかなどを書いてもらうと子どもの意欲も知ることができます。

それでも、学級担任としては一人ひとりの家庭環境や友達関係を知りたいものです。入学後でも、その方法は面談や家庭訪問などで、知る必要があれば知ることができます。

小学校から中学校への引き継ぎで、中学校側は「小学校の先生が、あまり伝えてくれなかった」「ちゃんと伝えてもらえていたら、こんなトラブルは起きなかった」など、いろいろな思いが出てくることがあるかと思います。

引き継ぎシートを使い、必要なことをそのシートに書き込んで、そのシートを基に引き継ぎをする小・中学校もあります。

でも、その引き継ぎシートは開示請求の対象となり、開示請求されれば、開示しなければならない場合があります。公立学校なら学校を管轄している行政における個人情報の扱いを確認しておく必要があります。

小学校・中学校・保護者が引き継ぎ内容への認識を一致させておく

小学校では、事前に教師と保護者とで「このことは中学校に伝えた方がいいですね」「このことは中学校に伝えてほしいです」などと相談をし、大切なことをきちっと中学校に引き継ぎをされたほうがよいでしょう。場合によっては、小学校の担任が保護者に「このことは、直接、保護者から中学校に伝えた方がいいですね。アポは私がとりましょうか」「その時、担任の私も同席をしましょうか」など伝えると、保護者も安心をします。

引き継ぎが基で小・中学校の関係が崩れては連携もできなくなります。引き継ぎのあり方について、事前に小・中学校で話合いを持ち、両者がお互いに「こうしてほしい」という要望を出し合うことが大切です。

開示請求が出され、保護者が予想もしていなかったことが引き継ぎシートに書かれてあれば、良かれと思って引きついたことが子どもや保護者にとって、辛いものになってしまいます。

大切なことは、小・中学校の9年間の義務教育は、小・中学校の先生が共に力を合わせて一人ひとりの子どもを育てていくということです。


いかがでしたか?
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生が、親身になって相談者様のお悩みに答えてくれます。ぜひ、お気軽にご相談くださいね。

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