いじめの定義の変遷をわかりやすく解説
「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子にも起こりうる」。これは平成8年1月に出された「文部大臣緊急アピール」の一節です。いじめ問題は、この考えを前提に指導に当たることが重要です。
執筆/福岡県公立小学校教諭・山崎邦彦
目次
いじめの定義とその変遷
時代の流れとともに、いじめの定義も少しずつ変化しました。
しかし、昭和61年以来、いじめは「不特定多数の児童」が関係する問題であるという認識に変更はありません。
さらに、いじめは加害者、被害者が短いサイクルで入れ替わり、その多くは大人の目の届かないところで巧妙化、過激化する傾向があることなどが指摘され、社会問題としても取り上げられています。
昭和61年における定義
- 自分より弱いものに対して一方的に、
- 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、
- 相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてはその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないものとする。
平成6年における定義
上記の①②③に加え、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。
平成18年における定義
昭和61年、平成6年の定義を基盤に、
削除→「一方的に」「継続的に」「深刻な」
追加→「当該児童生徒が、一定の人間関係のあるものから、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。
単発的、かつ軽微な事案もいじめと認知し、問題解消に向けた取組を推進する立場からのものです。
平成25年以降の定義
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。
いじめ防止対策推進法の施行に伴い、いじめが再定義されました(第二条)。
イラスト/高橋正輝
『教育技術 小五小六』2020年7/8月号より