外国人児童とどう接し、指導していけばよいかがわかる
日本語がわからない子供とのコミュニケーションの取り方や日本語指導、学習指導といった外国人児童指導における様々な悩みや、全ての子供がともに学び成長していける教室をどのようにつくればよいか、長年、外国人児童指導など、インクルーシブ教育に携わってきた多文化共生教育のスペシャリスト・菊池聡さんから、著書『学級担任のための外国人児童指導ハンドブック』の内容について詳しくお話を伺いました。
神奈川県公立小学校教諭(国際教室担当)・ 菊池聡さん
目次
外国人児童を支援するための具体的な対応法を漫画で解説
―本書の特徴を教えてください。
菊池 海外から来日した子供たちは、いろいろな背景をもち、子供たちの状態もさまざまです。母国語は話せるけれど読み書きできない子もいれば、日本の保育園に通い、日本語は覚えたけれど、母国語を忘れてしまった子もいます。本書では、外国人児童の受け入れから、コミュニケーションの取り方、学習指導、保護者対応まで、実際にあった事例を取り上げ、具体的な対応策を、4コマ漫画で紹介しながらわかりやすく解説しています。
―外国人児童を受け入れる際や支援するときに大切なことは?
菊池 まず、来日した子供たちを学級に受け入れるときには、日本に定住予定なのか、数年後には帰国する予定なのかを確認することが大切。
もしも数年後に帰国する予定なのに、その子に日本文化を強制してしまうと、母国に帰ったときにうまく適応できずに困難を抱えてしまうでしょう。
この場合は日本文化や日本語は体験させつつも、できるだけ母国語やアイデンティティを損なわないよう支援することが重要です。
日本に定住することを前提として来日した家庭の子には、「今後も日本語を使い、より豊かな生活をする家庭の子供」と大きく捉え、自立支援することも必要。私は、単に日本語を教えたり教科指導するだけでなく、日本の中でよりよく生活するための知恵や必要な情報、自分の夢を実現するための進学や職業の選択肢など、できるだけ広い視野で情報提供をしながら支援したいと考えています。
子供たちの様子を見て指導内容を選ぶ
―学校に「国際教室」がない場合にはどうすればよいですか? 「言葉」を指導する際のポイントは?
菊池 学校長か教育委員会などに相談し、専門家による支援を依頼するとよいでしょう。小学校の先生は、クラスのことは自分で全て見ようとしがちですが、専門家に相談し、連携するという視点も大切です。
もし担任が日本語を指導する際には、前提として、その子が望む場面でないと、子供は言葉を覚えようとしないということを意識しておきましょう。その子供にとって必要な会話でないと子供は関心を示さないし、その場だけの学習で終わってしまいます。ですからテキスト通りのレッスンではなく、子供たちの様子を見て、指導内容を選ぶとよいでしょう。
例えば、ある子が遊びに誘われたけど、うまく返事ができないような場面を見つけたら、国際教室では誘われたときの返事のレッスンをします。そして、日本人の子供たちに「○○くんはお返事の勉強をしたから、今度『遊ぼうよ』って誘ってみてくれる?」と伝えたりします。このように、具体的な場面で活用してこそ初めて言葉を覚えられるのです。会話を学習する前に、学校の中で言葉を活用できる場面や覚えた言葉を活かせる活動を具体的にイメージし、学習を組み立て、実際に意図的にそうした場面をつくってあげることが大切です。
菊池聡さんの本
「学級担任のための外国人児童指導ハンドブック」
小学館
この記事はウェブサイト先生のための教育事典「EDUPEDIA」でも配信します。あわせてお読みください。
取材/大和信治(EDUPEDIA) 撮影/阿部活(小学館) 漫画/畠山きょう子 まとめ/出浦文絵
『教育技術 小一小二』2021年6/7月号より