「チーム学校」とは?【知っておきたい教育用語】
教師が子どもと向き合う時間を確保したり、複雑化・多様化した学校の課題を解決する体制を構築したりするために、「チーム学校」の重要性が指摘されています。学校の組織特性を踏まえたチームづくりはどうあるべきでしょうか。
執筆/東京学芸大学准教授・末松裕基
目次
チーム学校を実現するために
中央教育審議会は、2015年12月、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」を答申しました。同答申は、「チームとしての学校」が必要な理由を、「心理や福祉等の専門スタッフの参画を得て、課題の解決に求められる専門性や経験を補い、教育活動を充実していくことが期待できる」とし、「チームとしての学校」を実現するために、下記の3つの視点に沿って施策を講じていくことが重要であると述べています。
- 専門性に基づくチーム体制の構築:学習指導や生徒指導等に取り組むため、指導体制の充実が必要である。加えて、心理や福祉等の専門スタッフについて、学校の職員として、職務内容等を明確化し、質の確保と配置の充実を進めるべきである。
- 学校のマネジメント機能の強化:専門性に基づく「チームとしての学校」が機能するためには、校長のリーダーシップが重要であり、学校のマネジメント機能を今まで以上に強化していくことが求められる。そのためには、優秀な管理職を確保するための取組や、主幹教諭の配置の促進や事務機能の強化など校長のマネジメント体制を支える仕組みを充実することが求められる。
- 教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備:教職員がそれぞれの力を発揮し、伸ばしていくことができるようにするためには、人材育成の充実や業務改善の取組を進めることが重要である。
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働き方改革とチーム学校
一方、日本の教員の長時間勤務が看過できない深刻な状況であることが明らかになってきたことから、学校における根本的な働き方改革と「チームとしての学校」のあり方が連動して考えられています。
2017年8月には、中央教育審議会初等中等教育分科会・学校における働き方改革特別部会によって「学校における働き方改革に係る緊急提言」が公表されました。同提言は、今後、国として持続可能な勤務環境整備の支援を充実させるためには、「チームとしての学校」の実現が必要であるとし、専門スタッフの配置促進のあり方を次のように提示しています。
- スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーについて、課題を抱える学校への重点配置を含めた配置の促進、質の向上及び常勤化に向けた調査研究
- 多様なニーズのある児童生徒に応じた指導等を支援するスタッフの配置促進
- 教員の事務作業(学習プリント印刷や授業準備等)等をサポートするスタッフの配置促進
- 部活動指導員の配置促進及び部活動の運営に係る指針の作成
- スクールロイヤーの活用促進に向けた体制の構築
それぞれの学校において、チーム学校としての具体的かつ実効性のある取り組みが求められているのです。
チーム学校設立への取り組み
2016年度には文部科学省により「チーム学校の実現に向けた業務改善等の推進事業」が行われ、いくつかの自治体で研究報告がなされています。例えば、栃木県佐野市では、「学外の専門家を活用した『学校サポートチーム』の設置による学校支援体制の構築」を研究主題とした取り組みが行われました。
そして、近年の複雑・多様化する学校の課題に対応するために、学外の人材を活用して教職員を支援する「学校サポートチーム」を設置し、「専門家による研修会・相談・助言・訪問をすることにより、学校・教職員を支援していく体制を構築する」ことが事業目的とされました。「学校サポートチーム」は、警察OB、社会福祉士、スクールソーシャルワーカー(SSW)、弁護士、臨床心理士、小児科医、4名の福祉・教育行政職員の計10名の専門スタッフで構成されました。
「学校サポートチーム」によって、学校教育をめぐるトラブルへの対処に関する研修会が実施されたことをはじめ、学校からの相談・助言・ケース会議・訪問・定期コンサルテーションが行われました。これらの取り組みを通じて、学校の課題解決に有効であるとの回答をした教職員の割合は研究実践校で70%を超えており、今後も「学校サポートチーム」が必要であると回答した教職員は約90%であったと報告されています。
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チーム学校の課題
チーム学校においては、教員が本質的に担うべき業務は何か、他のスタッフとの役割分担や連携のあり方はどうあるべきか、などについて考えていく必要があります。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、図書館司書等との連携・協働はもちろん、地域や学習支援団体との関係を構築していくことも重要です。
従来のままの学校組織の感覚では対応できない面もあります。チーム学校を機能させるためには、まず学校や教師集団が自らの理念やビジョンを持つことです。その上で、社会的な議論や対話をもとに、学校の使命の再定義を行っていくなかで、学校内外の連携・協働のあり方やチームづくりの進め方を模索していくことが重要になります。
▼参考文献
文部科学省(ウェブサイト)「『チームとしての学校』の在り方」
文部科学省(ウェブサイト)「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)【骨子】」
加藤崇英『「チーム学校」まるわかりガイドブック』教育開発研究所、2016年
水野治久・家近早苗・石隈利紀編『チーム学校での効果的な援助―学校心理学の最前線』ナカニシヤ出版、 2018年