ジグソー学習の効果とは? 学力向上を目指す指導法
学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、教育現場で見て気になったことについて、ズバリと切り込みます。今回はジグソー学習について考えてみます。
文/元埼玉県公立小学校校長・稲垣孝章
目次
まずは指導法の見直しから
「計算ドリルに漢字ドリルの繰り返し学習に力を入れて基礎基本の定着を図っています」標題の質問に対して、ある研修会で若手の教員が答えた言葉です。
この回答は、決して間違っているわけではありません。漢字などの繰り返しの学習は、当然、必要な学力のベースとなるものです。しかし、あくまでもこれは学力の一部ととらえることが大切です。
OECDの調査から「学級の雰囲気がよいほど、学級のモラールが高いほど学びの数値は高くなる」とされています。学力向上を目指すために、まず教師側の指導法について見直し、改善していくことが求められます。
「ジグソー学習」とは
ジグソー(jigsaw)学習は、アロンソンら(Aronson et al.1975)の考案した学習法を蘭千寿氏(1980)が紹介したものです。この学習法を用いて、蘭氏は小学校4~6年生を対象に、国語と社会の授業で 1週間6~7時間のジグソー学習を6~12週間実施し、学業成績の低い児童にも好ましい効果が6週間で見られると報告しました。またメンバーを交替すると さらによい影響を与えると報告しています。
「ジグソー学習」から学ぶこと
ジグソー学習の効果は、どの子も自分なりの役割を担い、学びを通して他の子の学習の役に立ち、効力感が高まるということに起因するものと思われます。
具体的な学習方法としては、まず原グループの「グループ1」に所属する「a1」が、「教材①」のグループで、各グループから来た「a」の仲間とグループ学習を行います。その後、「教材①」で学んだ内容について、原グループに戻ってグループの仲間に伝え合うという学習形態です。同様に「グループ1」に所属する「b1」が、「教材②」のグループで、というように五つの原グループのメンバーが、六つの教材のグループに分かれて学習した後、原グループに戻って学んできたことを伝え合うという学習法です。
ただし、この学習方法は、じっくりと思考する時間を設定するため、1単位時間で実践するには移動時間などを考えると時間的な制約があること、自分で 学ぶ教材以外の他の教材について十分な学習ができないという課題も考えられます。したがって、単元全体を見通して、このような課題に対処する視点を考慮し て活用すると効果的です。ジグソー学習で構想される“どの子にも活躍する場がある”という学習方法は、授業の基盤となるものです。
学級内にあって、人(子ども)が幸せを感じる視点は、四つあると言われます。
①「人(担任・級友)から愛されること」
②「人(担任・級友)からほめられること」
③「人(担任・級友)から必要とされること」
④「人(担任・級友)の役に立つこと」
様々な学習方法は、あくまでも手法のひとつです。学級集団としての実態、個々の子どもたちの実態を踏まえ、子どもたちに即した学習形態を構想していくことが、今、まさに求められているのです。
『小一~小六教育技術』2014年4月号~2016年2/3月号連載「正襟危座--伝えたい--耳に痛いかもしれないけれど、教室で大切な基礎基本」より