「清掃活動をゲーミフィケーション」で主体的なお掃除に

フリーランスティーチャー

田中光夫

「フリーランスティーチャー」という型にとらわれない教職を貫く田中光夫先生が、多様でアイディアあふれる授業実践を紹介します。

文/フリーランスティーチャー・田中光夫

お掃除クエストすごろく

「ゲーミフィケーション」ってなんだ?

あなたはゲーム好きですか? 僕は大好き。テレビゲーム、カードゲーム、ボードゲーム、いろいろなゲームにはまりました。オンラインゲームははまりすぎて4年間に渡りネトゲ廃人を経験しました。

そして子どもたちもゲームが大好き!

Nintendo Switchで対戦ゲームにはまる子、スマホのソシャゲ、TPS系の『フォートナイト』や『荒野行動』なんかが流行ってますね。学校でも、お楽しみ会などでゲーム大会をすると大盛り上がりです。

※TPS……「サード・パーソン・シューター」 ゲームのこと。プレーヤーキャラクターを後ろからカメラが映す表示スタイルのこと。第三者目線での操作システム。対して、一人称目線の操作システムをFPS(ファースト・パーソンシューター)という。

今回は「ゲーミフィケーション」の話。

ゲーミフィケーションとは、「ゲームではない活動にゲームの要素を組み込むことで、主体性を引き出したり、継続して取り組ませたりする」というものです。それによって「活動の習慣化」が期待できます。

ゲームに内在する素敵な力

 ゲームは、私たちを惹きつけてやまない様々な秘密を内在しています。いくつか例を挙げてみましょう。

〇「明確なルールがある」

 ゲームには、試行錯誤によって作り出された明確なルールがあります。ルールに従って遊ぶことで仲間と楽しむことができます。

〇「ゴールがある」

ゲームにはゴールがあります。例えばRPGなら「ラスボスを倒す」がとりあえずのゴール。これを目指してさまざまなミッションをクリアーしながら進めます。

〇「繰り返すうちに上達する」

はじめのうちはなかなか上手くいかなくても、繰り返すうちに次第にスキルが身につき、スムーズに遊べるようになります。自身の成長を実感することは楽しく、のめりこんでしまいますね。

〇「具体的報酬が与えられる」

ゲームには「報酬」があります。 「勝敗」「経験値獲得によるレベルアップ」「アイテム」など。最近は「ログインボーナス」なんてのもあります。 得た時に嬉しくなる「わかりやすい報酬」はゲームへの継続性を高めます。

〇「仲間との交流が進む」

一人でやるゲームもありますが、誰かと競ったり協力したりして課題をクリアーするというのも楽しさの一つ。私がネトゲ廃人だった時、やめたくてもやめられなかったのは全国の仲間とのやりとりが楽しかったからでもありました。

他にもゲームの持つ特性はありますが、これらの要素は人々をゲームに熱中させる鍵です。

ゲーミフィケーションは、ゲームではない活動にこれらの要素を組み込むことで「やってみたい」「続けたい」を引き出すことができるという考え方です。

今、さまざまな企業が顧客を虜にするためゲーミフィケーションを取り入れています。 次回の「行動経済学」の回でも紹介しますが、私たちの多くは、自己決定をしているようで実は他者の意図に「乗せられている」ことが多いです。 よい響きではないように感じる人もいますね。

ゲーミフィケーションを教室に

先にも述べましたが、子どもたちはゲームが大好きです。つまり、ゲームではない活動にゲームの要素を組み込むことで、子どもたちの主体性を促進させ、継続性を高めることが可能と考え、さまざま取り組んできました。その具体を紹介します。

毎日の清掃活動をゲーミフィケーションしました。 清掃活動では、土作彰さんや岩瀬直樹さんが取り組まれてきた「プロフェッショナル清掃制度」を実践してきました。これは、自分で決めた清掃場所を一定期間担当するという方法です。

多くの学級では、班ごとに毎週清掃分担場所が変わります。自己選択・自己決定の機会はそこにありません。自己選択・自己決定により責任感が生まれ、より工夫した清掃にレベルアップしていきます。

この自己選択・自己決定の機会を毎日の清掃活動に保証したいと考えてきました。そして、そこにゲームの要素を取り込んで作ったのが「お掃除クエスト」です。

ゲームにストーリーがあると、その世界に入ってより楽しむことができます。

ゲーミフィケーションでこどもたちが考えたごみの怪獣
大怪獣ゴミラ

「ソージー国という国がありました。そこに、大怪獣ゴミラとその仲間が現れ、国中はゴミだらけ」(物語の背景設定)

「皆さんは『清掃戦隊キレイジャー』になって、ソージー国に迫り来るゴミラに追いつかれないようにしながら、ゴミモンスターを退治し、ゴールを目指しましょう!」(ゴール設定)

「途中、宝箱を開けると新しい清掃アイテムをゲット!経験値を積みながらゴールを目指そう!」(報酬の設定)

このように、物語の背景、ゴール、報酬等を確認し、「お掃除クエスト」は始まります。

「お掃除クエスト」では、清掃終了後、各担当場所のメンバーが集まり「自分たちで決めた清掃の目標が達成できた!」となればサイコロを振ってすごろくを進めることができます。 自己選択・自己決定の機会を保障することで、フェアに楽しもうという雰囲気が生まれ、ズルすることなく正直にゲームは進みます。

お掃除クエストを始めると、清掃活動に組み込まれた「物語」「明確なルール」「ゴール」「報酬」「レベルアップの実感」「達成感」を楽しむ中で、どんどん進んで取り組むようになります。

教科学習にもゲーミフィケーションを取り入れることは可能です。 算数ドリルや漢字学習など、毎日ある活動ほどゲーミフィケーションは有効です。頻度が多いほどトライアンドエラーで学べるからです。 学級内通貨を使った取り組み(トークンエコノミー)もゲーミフィケーションと相性がよいです。トークンエコノミーについてはまたの機会にご紹介します。

ゲーミフィケーションはただ単に「ゲームをすること」と捉えられがちですので、今回その違いを紹介しました。 ゲーミフィケーションの実践を電子書籍「AND ON」にまとめてあります。もし興味があればAmazonで「田中光夫」と検索ください。

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