安心して学校生活を送るための「1年生の生活指導」ファーストステップ
入学した一年生にとって、小学校は初めての環境ばかり。入学前に幼稚園や保育園などで学んでいたとしても、場所が異なれば見方も大きく変化します。一年生の生活指導は、小学校生活6年間の基礎になります。当たり前のことこそていねいに指導することが大切です。子供たちが安心して学校生活を送ることができるようにしていきましょう。
執筆/東京都公立小学校教諭・桐川 瞳
目次
靴箱の使い方はイラストで分かりやすく!
靴箱の使い方は、靴箱の前で実演しながら指導しましょう。靴を奥まで入れる、揃えて入れるなど、細かく伝えます。座らないと上履きが履けない子も多いので、混雑を避けるためにも上履きを取ったら、奥のスペースに進んで履き替えるなど、具体的に伝えます。
靴の入れ方のよいパターン・悪いパターンをイラストや写真で提示すると、ポイントが視覚的に伝わります。
始業前にすることを掲示してルーティン化
教室に入ったら何をするのかを黒板に掲示しておきます。高学年のサポートがある時期でもありますが、めざすべきは自分のことは自分でできる姿です。ロッカーへのランドセルの入れ方や道具箱への物の入れ方も靴箱と同じように、正しい方法を視覚化しましょう。
学校に来たら提出物を出すこともルーティンの中に入れておきます。特に一年生の学級開き直後は、提出する書類が多いものです。予備のお手紙と提出箱をセットにして用意しておくことで、どこに出すのかが明確になります。写真のように、出席番号順にいくつかのグループに分け、色分けしておくと、連絡帳やノートを集めるときに便利です。集めるものに色テープを付けておくと、子供たちが迷わずに提出することができます。
まずは「話す・聞く」姿勢から
聞く姿勢は、合言葉を決めて行います。「グー」のこぶし一つ分の間が空くように椅子に座り、「ピン」と姿勢を正し、「ピタ」と足の裏を床に着けます。慣れてきたら、「キラッ」と気持ちも相手に向けるなどのようにアレンジすると、子供たちはノリノリで取り組みます。
子供たちには、先生に話したいこと、友達と話したいことがたくさんあります。その時間を設けることも大切ですが、話すときと聞くときのメリハリをつけるようにしましょう。
例えば、先生が大事な話をする際は手を2回叩く、ハンドサインを出すといったきまりをつくっておきます。できたときには、その都度少し大げさなくらいにほめましょう。これを繰り返すことで、子供たちは切り替えるタイミングを判断することができるようになります。最後には、合図なしで聞く姿勢がつくれるようにしていきましょう。
また、発言するときは静かに手をまっすぐ挙げ、指名されたら「はい」と返事を1回する。話している人のほうに体を向けて聞く。この二つを、まずは徹底して指導しましょう。きまりやルールが多すぎると、子供たちは混乱してしまいます。できることを少しずつ増やしてレベルアップしていくことが大切です。
視覚化して時間を意識できるようにしよう
学校生活の時間は細かく区切られています。入学したての子供たちにとっては大きな壁になります。時計を読むことができない子も多いので、時間を意識させるためには視覚的支援が不可欠です。黒板の時間割マグネットの横に「今、この時間だよ」と分かるような星型のマグネットを貼ったり、開始時刻が分かるように時計の絵のカードを貼ったりしておくとよいでしょう。
給食の準備の時間や体育の着替えの時間、帰りの支度の時間は、それぞれの時間に合わせた音楽を用意して流すと効果的です。音楽が鳴り終わるまでに準備をすると決めておくと、子供たちが楽しんで取り組むことができます。慣れてきたら少し速いテンポにすると、やる気もグンとアップします。
休み時間の過ごし方の指導を
休み時間を子供たちはとても楽しみにしています。楽しみな気持ちが先走って廊下を走ってしまうことにつながりがちです。教室の入り口や階段など走ってしまいそうなポイントにポスターを貼ったり、ときには先生が立って指導したりして根気強く指導していきましょう。休み時間になったら、次の時間の準備をして、椅子を入れ、トイレに行くといった行動をルーティン化することが大切です。
子供たちにとっては環境が大きく変化し、初めてのことの連続です。1回でできることを期待せず、時間をかけて指導していきましょう。先生が余裕をもつことで、一人ひとりの「できた」瞬間に気付くことができます。
イラスト/バーヴ岩下
『教育技術 小一小二』2021年4/5月号より