音楽授業で学級づくりだ!【4年3組学級経営物語7】

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学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」
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6月②「研究授業」にレッツ・トライだ!

文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ

4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。苦手教科の音楽の授業を克服するため、研究授業を音楽で挑むことにした渡来先生。音楽が得意な葵先生にも協力してもらいながら、研究授業本番に向けた“トライだ流の音楽授業”を完成させていきます。

<登場人物>

トライ先生
トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
主人公。教職1年目。教師になる熱意に燃えて、西華小学校に赴任。 やる気とパワーは人一倍あるものの、時には突っ走り過ぎるのが玉にキズ。しばしば飛び出す口癖から「トライだ先生」と 呼ばれるようになる。4年3組担任。
イワオジ
イワオジ先生(大河内巌/おおこうちいわお)
教職20 年の経験豊富な学年主任。4年1組担任。一見いかついが、 温かく見守りながら的確なアドバイスをしてくれ、 頼れる存在。ジャグリングなど意外な特技も。
ゆめ先生
ゆめ先生(葵ゆめ/あおいゆめ)
教職3年目。4年2組担任。新採のトライ先生を励ましつつも一歩リード。きまじめな性格で、ドライな印象を与えてしまうことも。音楽好きでピアノが得意。

研究授業の指導案作成に全力トライだ

学級経営 指導案づくり

木曜日…。夜も更けた職員室。指導案作成に励む渡来先生の机の横には、チーム4年の面々。

「〝歌う声”の概念と〝合唱スキル”の定着。問題は、それをどう指導するか…。例えば、教え合いやグループ練習なんかどうでしょう…」

「いいわね! でも、もう少し具体的に」

考え込む渡来先生。いつの間にか気が遠くなり…。

「こらっ…、寝るな!」

葵先生の大音量に、無意識に謝る渡来先生。

周囲の先生方が大爆笑。

「頑張れ。レッツ・リトライだ!」

主任が、渡来先生の机にドリンク剤をドンと置きました。

研究授業直前! 指導案の仕上げだ!

金曜日…。恐ろしいほどの放課後の1組教室。

指導案を囲む3人。ゴソゴソ赤ペンを動かす主任。

「うん、音楽の授業らしくなった。これでいこう」

書き直し続けた指導案、やっとOKです。

「指導の基礎固めはできたわ。いよいよ来週から、子どもたちとの真剣勝負ね」

微笑む葵先生。

徹夜続きでフラフラの渡来先生がホッと一息。

「きょ、今日はゆっくり休んでもいいですか…」

不安顔の渡来先生に、チーム4年が見事な二重唱で〝今後の突貫作業”を詳しく指示します。

「今日は週末だ。この土日で指導案完成だ!」

「月曜からの実践プラン、計画してくるのよ!」*ポイント1

ニカッと笑う主任と葵先生。

真っ赤に訂正された指導案を、フリーズした渡来先生に手渡しました。

●授業計画書は、自分が使いやすいテンプレートを作る!
毎週管理職に提出している学習指導計画案(いわゆる週案)とは別に、1単位時間を手早くデザインできる計画書を、工夫して作るとよいでしょう。
下記のような授業計画書を作成し、ファイリングしていくことで、自分の授業が記録として残っていきます。また授業を振り返ることもでき、不十分だった点が見えてくるので、次の時間にすることが明確になります。授業に一定の流れができ、子どもたちにとっても分かりやすい授業を組み立てることができるようになっていきます。

授業計画の例
【授業計画書の例】
クリックすると別ウィンドウで開きます

〝歌う声”とは何だ?

音楽室。何度も大きく深呼吸する渡来先生。

『今日からは、学んだ指導法を基盤に、オリジナル〝トライ流の音楽授業”を築くんだ!』

『頑張れ、ゆめ先生のファンクラブ!』

チーム4年の激励を胸に、元気に第一声。

「今日から、楽しい合唱の勉強です! まず、〝いろんな声”で元気に挨拶しましょう!」

おじさんの声、甲高い声…、本当にいろいろな声の〝こんにちは”が教室中を飛び交います。*ポイント2

●いろいろな声であいさつしよう
歌声と話し声は違うということを、認識することが大切です。そのために、いろいろな声であいさつをしてみましょう。
はじめに、元気な4年生の朝のあいさつ。きっと「おはようございます」の大きな声が、教室中に響き渡ることでしょう。次は、ロボットの声、宇宙人の声、幼稚園の子どもの声などいろいろ楽しみます。
その後、アナウンサーの声や、オペラ歌手の声といった、響く声に近づきそうな声であいさつをします。教室に美しい声が響いたところで、思いきり褒め、その声のままで歌えるか、チャレンジしてみましょう。
すぐに歌声に結び付けることは難しいと思いますが、歌うときは、こんな声で歌うといいというイメージをもつことが大切です。

教室は、お茶目な妖精たちが舞うような、楽しい雰囲気に。

突然、「ちょっとストップ!」と制止する渡来先生。何事かと、注目する子どもたち。

「今の、すごく〝やさしい声”は…。アキだ!」

みんなに注目され、モゾモゾするアキ。

「アキのようなやさしい声で、あいさつできるかな!」

やさしい声を出す工夫が始まります。

チャンス到来!「じゃあ、グループに分かれてトライしてみよう。教え合いもOKだよ」

授業の流れが変わり始めました。

次は、〝やさしい声”で、グループ別の斉唱にトライです。

〝合唱スキル”にトライだ!

「天使の歌声に近づいてきた!」

絶賛する渡来先生。

トライ流の授業を数回積み重ねた成果が、表れてきました。

斉唱は、「子どもの世界」から「パレード ホッホー」という曲に移ります。

「じゃあ2つのパートに分かれるぞ。1回目は、先生vsみんな。先生の声をよく聞くんだぞ!」*ポイント3

●旋律を重ねて歌ってみる
いきなり旋律を上手に重ねることは難しいと思います。 そこで、先生と子どもたちとに分かれ、挑戦します。
「先生の声を聴きながら、歌うことはできるかな」と声かけをしてください。先生と上手に合わせることができるようになってきたら、少しずつ先生グループの人数を増やしていきます(同時に先生は音量を下げていきましょう)。
最終的に、先生が歌わなくてもできるようになると、成就感が味わえます。

「先生も、頑張ってね!」

アキたちが、楽しそうに渡来先生を応援。

曲はパート別の部分にかかり、先生は懸命に独唱にトライです。

「合わさって聞こえた!」

嬉しそうな声。

次の指示を出す先生。

「今度は、先生チームを増やそう!」

選ぶのに困るほど、手が挙がりました。

合唱の基本的スキルの定着も、順調そうです。

研究授業にレッツ・トライだ!

そして、研究授業の日。

大勢の参観の先生方に囲まれても、ノビノビ活動する子どもたち。

「子どもの世界」を、楽しく優しく斉唱。

次に、各グループでパート別に分かれ「パレード ホッホー」の練習。

子どもたちで聞き合い、磨き合い、瞬く間に時間が過ぎていきます。

「最後は、みんなで合わせよう!」

渡来先生の合図に、全員が答えます。

「レッツ・トライだ! 4年3組!」

楽しそうに大合唱。

歌い終わった時、一番最初に大きな拍手をしたのは葵先生です。

「子どもたちの学習意欲が全然違う。なかなかやるなぁ…。まだまだ未熟だが」

主任も、嬉しそうに拍手に加わりました。

(※文中で紹介した、 「子どもの世界」「パレード ホッホー」 は、2曲とも教育芸術社「小学生の音楽4」に掲載されている歌です)

(7月①につづく)

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『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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