デジタル教科書の 使用制限撤廃を促す提言がまとまる【教育ニュース】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」

先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマはデジタル教科書の使用制限撤廃についてです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

デジタル教科書の 使用制限撤廃を促す提言がまとまる【教育ニュース】メイン

昨年12月、文部科学省の有識者会議で提言

社会の流れに違わず、教科書もデジタル化に向けた動きが加速しています。肯定と否定の声が混じり合う中、政府は本格導入に腰を上げました。

「授業時数の2分の1未満」。紙の教科書の内容をタブレット端末などに取り込んで表示するデジタル教科書には、そんな使用制限があります。けれど、昨年12月に開かれた文部科学省の有識者会議で、撤廃を促す提言がまとまりました。

提言では端末一人1台体制などの取り組みが加速し、デジタル教科書を使う環境が整いだしたと指摘。他国では使用制限は見当たらないとも言い、撤廃するべきだとしました。ただ、それは「必要に応じて有効に使う環境を整えるため」で、2分の1以上使うよう強いるわけではないとも記しています。萩生田光一文科相も閣議後会見で「当面、紙とデジタルを上手に併用するのが望ましい。急ハンドルを切るのではなく、デジタル教材も取り入れ、何ができるか考えたい」と強調しました。

元々平井卓也デジタル改革相が2020年10月に制限の見直しを提案し、萩生田文科相も緩和する考えを示していました。文科省は告示を改正し、2021年4月から運用。小学校では、次に教科書を改訂する2024年度に本格的に取り入れることを見据えています。まずは2021年度予算で約20億3300万円を計上し、デジタル教科書導入を希望する小中学校に、小五~中三の1教科分の費用を補助し、普及するうえでの課題を探ります。

デジタル教科書 導入小学校は8.1%

教科書とは、文科省の検定を受けた「教科用図書」のこと。基本的な教育内容を子供たちが身に付けられるよう保障する教材で、学校教育法で使用を義務付けています。義務教育段階は国が購入費を負担し、無償で子供たちに配っています。2020年度の購入費は約460億円。対象は紙の教科書のみです。1冊400円台~800円台の紙に対し、200円~2000円と価格に幅があるデジタルを導入する場合、市町村教育委員会などが負担しなくてはなりません。

デジタル教科書は2019年度から紙と併用で使えるようになりました。ただ、使用制限や有償のためか、2020年3月時点で導入している小学校は、8.1%にとどまっています。

使用制限が設けられた一因は、視力低下など健康面への配慮からです。提言でも、授業中に30分に1回、20秒ほど目を休ませたり、端末から30~50センチ離したりするよう促しました。

今後は子供たちが一斉に使用するのに耐えられる通信環境も整えなくてはなりません。

とはいえ、時代の流れを踏まえれば、デジタルの利点を活用して取り入れることは欠かせません。とかく「紙かデジタルか」で意見が対立しがちですが、それぞれによさがあります。大切なのは、子供たちに何を教えるか。この先、「教科書」の形が変わっても、その本質は変わらないはずです。

『教育技術』2021年3月号より

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