学年末保護者会&個人面談の進め方
保護者会や個人面談は、保護者からの信頼を得る大切な行事です。コロナ禍で保護者が学校に来る機会も減り、コミュニケーションが取りにくかった今年度。子供たちの成長や今後の課題を、コロナ禍でもしっかり保護者に伝え、来年度の成長につなげるための指導を樋口先生に教えていただきます。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
ひぐち・あやか。Instagram では、ayaya_t として、#折り紙で学級づくり、#構造的板書、#国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。みんなの教育技術にて「すてきやん通信」大人気連載中!
目次
コロナ禍だからこそ、 大切にしたいこと
保護者にとって、今年度はどんな1年だったでしょうか。コロナ禍により、参観や行事が例年通りにはできず、不安や緊張が払拭されないまま、1年の終わりを迎えようとしているのではないでしょうか。
そのような状況の中、今年度最後の保護者会や個人面談では、保護者の不安や緊張が少しでも緩和できるよう努めることが大切です。子供たちの様子が分かる具体的なエピソードや、学級全体で取り組んで成長を感じた行事などについて、思いを込めて伝えましょう。
保護者会&個人面談までの準備
1 学校・教室環境
玄関から教室まで、まずはゆっくり保護者の気持ちになって歩いてみてください。気になるところはありませんか。整理整頓や清掃は大変重要なポイントです。
教室の中は、整然と片付いていることが大切です。児童机の横にはできるだけ何も掛けず、 机がきれいに並んでいる状態にします。
また、棚の上や教員用の机の上も、置いてあるものは最小限にして、見た目がすっきりするように心がけます。特に黒板は、教室に入って一番目立つ場所です。黒板をきれいに消し、桟や黒板の下に粉が残っていない状態にしましょう。
2 掲示物
保護者会や個人面談は、限られた短い時間で行われます。その中で、担任として伝えたい思いのすべてを保護者に伝えるのは難しいかもしれません。そこで、掲示物を活用することがおすすめです。
教室の後方や廊下の掲示板には、普段は図工の作品や、生活科の観察カードなどが貼ってあることが多いです。そこへ、一年の成長が表れるものを掲示します。次のような掲示物はいかがでしょうか。
- 1年間をふり返った作文
- 年度当初の作品と年度末の作品を隣同士に掲示
- 1年間の学習や行事などの様子が分かる写真
- 次年度に向けた目標
- 自学など宿題のノートをコピーしたもの
担任として、特に力を入れてきた取り組みがあれば、それに関わるものを掲示するとよいでしょう。私は、春から冬まで毎月みんなで折った折り紙で掲示板を彩り、そこへ行事ごとに書いた作文を掲示しました。教室が1年間の思い出で満たされるようにしたのです。
言葉ですべてを伝えることは難しくても、きっと掲示物から教師の思いを汲み取ってくれる保護者もいることでしょう。
3 学年団での打ち合わせ
学年団で、保護者会や個人面談で何を話すかを事前に打ち合わせます。主な内容は次の通りです。
- 保護者会、個人面談の目的
- 保護者会、個人面談の内容
- かかる時間と流れ
保護者会の目的については学校で共有されていますが、学年団でもう一度しっかり確認し、なんのために行うか、そのために何を話すか、共通認識をもっておくことが重要です。
万が一、学年団で話す内容が違った場合、不安になる保護者も少なくありません。その場合、不安を解消するために、保護者同士が連絡を取ったり、担任へ確認したりと、事が大きくなる可能性もあります。学年団での打ち合わせは、直前ではなく、少なくとも1週間前には打ち合わせておき、教室環境や掲示物についても確認しておくことが無難です。
保護者会の進め方
今年度は、コロナ禍の中で行われます。3密を避ける対策を第一に考えます。
1 感染対策をした場の設定
感染対策の観点から、窓は開けておきます。座席は密集した円形ではなく、十分に距離を取った円形。あるいはスクール形式で配置することをおすすめします。
距離を取るということは、それだけ教師と保護者だけでなく、保護者同士でも心理的距離を感じてしまいます。さらに、マスクをした状態では声が小さくなったり、表情が読めずに不安になってしまったりして、話しづらくなります。
教師が率先して、明るい声で話したり、うなずきなどの反応を多く示したりするようにしましょう。
2 学級経営方針と子供の姿
学期末の保護者会では、「成長した子供たちの姿」を伝えたい思いが強くなります。これは、もちろんとても大切なことです。しかし、具体的な姿ばかりを取り上げても、一貫した子供の成長は伝わりません。重要なのは、どのような学級経営方針のもと、どんな取り組みをして、子供たちがどう変わったのかということです。
保護者に、成長した子供の姿を伝えたいときは、次の順序で話します。
(1)学級(学年)経営方針
(2)学級(学年)経営方針に則った取り組み
(3)具体的な子供の姿
(4)成果(他者との関わり
この順序で話すと、教師の話にも一貫性があり、どんな子供を育てたいと考えて授業や行事に取り組んできたかが伝わります。
(1)は、学年団の事前の打ち合わせから、学年経営か、学級経営かを決めておくとよいでしょう。年度当初に書いておいたノートなどから、めざしてきた子供像を確かめておきます。
(2)では、学級での具体的な取り組みを伝えます。朝学習や、係活動、当番活動、宿題、給食、休み時間、グループやペア活動、授業の中での取り組み、行事など、意図をもって実践してきた内容と、教師の思いを伝えるようにします。
(3)の「具体的な子供の姿」を話す際は、低学年の保護者は、まだ学校でどのような行事や取り組みがあるか、詳しく知らず、想像しにくい可能性があります。そのため、写真を交えて話したり、例年の取り組み方と、今年度の取り組み方で違っていることなどをていねいに解説したりすると、学校の様子がよく分かり、安心します。
学級の子供たちの得意なことや苦手なことを把握し、成長した姿とともに伝えられるよう、事前にまとめておくとよいでしょう。
(4)の成果では、子供たちが協力している様子を積極的に伝えるようにします。学校は、他者と協働しながら学ぶ場所です。友達関係がうまくいっているか、気になっている保護者も多くいるため、ホッとできるエピソードや写真を用意しておくようにします。
課題については、多くを伝えるのではなく、一つか二つに絞ります。今、できていることに対して、「こうすると、もっとよくなる」という視点や、子供の個性や特性を生かして、課題を克服するアドバイスをするように心がけます。
3 今後の予定と春休みおすすめの学習ゲーム
今後の予定で決まっている内容は、プリントにして伝えます。
しかし、まだ決まっていない内容や分からない内容に対する質問に関しては、その場で即答せず、後日回答するようにします。焦って間違った情報を伝えないように、気を付けましょう。
忙しい合間を縫って来てくれた保護者のために、最後に春休みおすすめの学習法や遊びを伝えるようにします。私は、ひらがな・カタカナ・漢字を復習できるアプリや、たし算やひき算の復習ができるドリルをダウンロードできるサイトを伝えたりしています。
今年度、一人1台のタブレットが入った学校も多いと思います。春休みの間に家庭での活用を想定して準備をしておくことも大切でしょう。
個人面談の進め方
個人面談では、時間を守って進めることが大変重要です。大幅に時間が遅れたことで、保護者が立腹したり、担任の信頼が失われたりしてしまい、面談の雰囲気が悪くなってしまうこともあります。
時間通りに進めるために、事前に、時間厳守で進めることの通知を、連絡帳や学級通信などで保護者に対してしておくこと、話す内容を明確にしておくことが肝要です。
まずは、保護者から話してもらう
教師から話し、そろそろ面談が終わろうとしているときに、「何か最後にありますか?」と問いかけると、保護者が「実はお伝えしたいことがありまして……」と話し始めてしまい、大幅に時間を超過する結果になったことはありませんか。
このような事態を防ぐため、個人面談では、保護者にまず、「話しておきたいことや、相談などはありませんか?」と投げかけます。
保護者から話し始めることは、通常あまりよい内容ではありません。学級や担任に対する不満、学習面や生活面、友達関係に対する心配事などが考えられます。保護者の話に耳を傾け、できるだけ不安を取り除けるよう、子供の具体的な姿で伝えるようにします。
担任に対する不満や要望の場合は、まずは真摯に言葉を受け止め、子供や保護者を不安にさせてしまったことを詫びます。子供と話す必要がある場合は、次の日にきちんと対応することを伝え、保護者とさらに話す必要がある場合は、個人面談がすべて終わったあとに連絡を取り、改めて対応するようにします。
学年末の個人面談では、来年度のクラス替えにも関わるような内容が相談として寄せられることもあります。その場で勝手な判断や約束をするのではなく、保護者からのクレームも同様に、学年団や管理職に報告、連絡、相談することを忘れないようにしましょう。
教師から伝えるのは子供たちの生活面と学習面
低学年の保護者は、「友達とよい関係がつくれているか」「宿題や持ち物を忘れていないか」を気にしている方たちがたくさんいます。先述したように、先に保護者に話をふったとき、この二つを問われることも少なくありません。そのため、生活面においては、友達関係や忘れ物に関して、細かく記録を付けておくことが重要です。
学習面においては、子供のノートやテストファイルを準備しておき、文字が正しく、バランスよく書けるようになったことや、テストでよい点数を取った単元など、具体的な話をしながら、がんばったところを伝えていくとよいでしょう。
注意してほしいことは、面談を行う子供のノートやテストファイル以外を机の上に出さないことです。他の子のテストファイルの内容や、教師のノートに書いた成績に関する内容が保護者に見えてしまうようなことがあれば、保護者の信頼を失いかねません。成績に関する内容は、学年にかかわらず、特に取り扱い注意です。細心の注意を払いましょう。
次年度に向けて、保護者へのお願い
1年間の子供の成長は大きいものです。教師も、保護者も、子供の成長に驚き、喜びを感じます。その後、保護者の中には、子供の自主性に任せてしまうことがあります。例えば、宿題や持ち物をチェックしなくなる、学校の授業の様子を質問しなくなるなどです。
低学年の子供たちが、教師や保護者の手を借りずに、すべて自主的に行動することなど、できるのでしょうか。子供は、ほめられ、認められることを繰り返して、自分で行動したり考えたりすることの価値を感じ、成長していきます。ほめられること、認められることが減れば、自分の行動や思考を価値付けることも減り、自主的な活動も少なくなっていくことが考えられます。
また、学校での様子を尋ねられなくなると、だんだん学校のことを話さなくなるのが普通になってしまいます。高学年になると、学校での様子を話さない子が増えますが、それを加速させる恐れもあります。
私は、最後の個人面談では、必ず次のように伝えています。
「○○さんは、〜〜ができるようになったり、〜〜ができるようになったりしました。次の目標に向かって、〜〜にも挑戦しています。これまで以上に行動の幅が広がり、考える内容も深くなっていきます。その様子をできるだけたくさん見付けて、ほめてあげてください。それがさらに○○さんを成長させます」
次年度、突然手放してしまう保護者を減らすためにも、このように伝え、自分の子供をよく見てもらうようお願いしています。
待っている保護者への配慮
いくら時間通りに個人面談を進めようと努力しても、遅れてしまうこともあります。また、早めに来て待っている保護者もいるため、廊下で順番を待っている保護者に、少しでも時間を有意義に使ってもらえるよう考えます。
私がこれまで行った、待っている保護者のために準備していたものを紹介します。
- 子供がつくった物語を展示する。
- 子供のノートを展示する。
- 教室で読み聞かせした絵本を展示する。
- 子供たちの思い出ムービーをタブレットでループ再生しておく。
- 担任おすすめの小説を置いておく。
- 学級通信ファイルを置いておく。
- 面白自学ノートの紹介。
- 座布団とひざかけ
毎年同じではなく、その年の子供たちや取り組んだ内容に合わせて、保護者と共有したいものを選んで準備していました。
担任おすすめの小説は、一見学級の児童とは関係がないように感じますが、本の趣味を伝えるというのは、とても個人的な部分です。担任の自己開示を受け、保護者も好きな本を教えてくれたり、本好きの一面を見せることで話題が広がったりと、保護者と楽しくコミュニケーションを取る一助になったりします。
小さな心遣いから、温かなコミュニケーションが生まれることを願っています。
イラスト/斉木のりこ
『教育技術 小一小二』2021年3月号より