教材研究とは? 「ごんぎつね」を例に指導計画と授業の展開を解説
教材研究とは何なのか? 細案を作れば時間はかかるし、頑張った分だけの効果が出ているのかもわからない…。そんな先生は多いのではないでしょうか? ここでは、全国の小学校で若手教師の育成をしている多賀一郎先生に、国語の文学作品「ごんぎつね」を例に教材研究の「指導計画と授業の展開」の考え方について解説していただきました。
執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎
目次
指導計画を考える
教材を読み込んで、めあてを確認して、言葉を調べたり吟味したりしたら、いよいよ授業そのものを考えます。
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まず、単元の指導計画を立てます。
下記は大まかな単元計画の一例です。
こうやって、単元全体の流れを考えるのです。
単元全体の流れで大切なのは、細かい指導についてではなく、単元を通してのつながりです。これを意識しないと、各時間がバラバラになってしまい、全体を通しての目標に達することができません。
初発の感想を書かせるのなら、それが以後の時間にどう関わっていくのかを考えるのです。
例えば、上記のノートで言うと、初読の後、感想をまとめる時間を取ってから、感想を出し合って授業の視点をつくっています。
- ごんと兵十は理解し合えたのか
- ごんのいたずらはどういうものなのか
という読みの視点をそこで作ろうという時間です。特に前者の視点が、後の「心情曲線」を使っての指導とつながっていくのです。後者の視点については、心情曲線に入るまでに授業をして、考えさせます。
次の板書は、そのときの授業の板書です。
授業の展開を考える
授業の展開を考える時には、初読の範読をして感想を書くことや、感想を発表し合って読みの視点を作ること、最後に読み終えた感想をまとめることなどまで、詳しく書く必要はありません。
授業として本文を読み込んでいく指導に関してだけ、具体的に展開を考えればよいのです。
「ここは力を入れたい!」という時間だけは、展開を考えて授業に臨むということです。
『ごんぎつね』の三時間目の展開例
『ごんぎつね』の三時間目の授業を例に、展開を書いてみましょう。
- 一場面の「……もずの声がキンキンひびいていました」までを各自の速さで音読する
- 「ごん」はどういうきつねだったかを読み取る
- 「ごん」のいたずらが村人にとってはどういうものだったかを考える
- いたずらするごんの気持ちを読み解く
展開に合わせて発問を練る
話すこと(発問)は、僕は、全て書きます。
この二十年くらいは、全ての授業の発問を書いて授業に臨んできました。授業を動かすのは、発問だからです。
「指導計画」や「本時の展開」は、設計図のようなものです。設計図だけでは家は建たないように、展開だけでは授業は動きません。発問を考えることが、授業づくりそのものなのです。
では、先ほどの第三時の展開から発問計画を立ててみましょう。
(1は、各自の音読)
2 「ごん」はどういうきつねだったかを読み取る
「ひとりぼっちの小ぎつね」とあります。ここから分かることを考えましょう
小さいきつねだから、大人だけど小型のきつねなんだ
ひとりぼっちということは、家族もいない。友達もいないんだ
3「ごん」のいたずらが村人にとってはどういうものだったかを考える
ごんのいたずらはどんなものでしたか?
いもをほりちらす
菜種がらのほしてあるのに火をつける
とんがらしをむしりとる
「いたずら」って、どういうものでしょうか?
ふざけてやること
軽い気持ちでやる
さびしくて、相手をしてほしいからやる
では、それらを村人からの視点で考えてみましょう。
いもをほりちらす…迷惑
生活するのに困る
菜種がらのほしてあるのに火をつける…火事になったらこわい
命の危険
とんがらしをむしりとる…食べ物がなくなる
4 いたずらを繰り返す「ごん」の心情を読み解く
ごんはどんな気持ちでいたずらをしているのかなあ?
さびしい
かまってほしい
困らせてやりたい
このように、教師の発問と、それに続いて予想される子供の反応を想定していきます。
ポイントとなる授業に絞って細案を
今回は、文学教材の教材研究について解説しました。
教材研究は、素材としての教材分析から始まり、授業を具体的に仕組むまでのことを指します。教材分析の段階から、自分の指導する子どもたちを頭において考えることが大切です。
授業にはメリハリが必要です。すべての時間に対して細かい指導まで考えていくということは必要ありません。
ポイントとなる授業だけに絞って、細案を立てていきましょう。
●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。