2021年度から段階的に「小学校のみ35人」学級へ【教育ニュース】
先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマは2021年度から段階的に導入される「小学校のみ35人」学級についてです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子
目次
文部科学省と財務省による攻防の結果、小学校のみが35人に
新年度予算編成で焦点だった、公立小中学校の少人数学級化。30人学級を求めた文部科学省と、無駄な出費を抑えたい財務省の攻防は、「小学校のみ35人」の痛み分けで折り合いました。「アプローチの違いで、議論がかみ合わないところもあった。しかし、一歩を踏み出すことができた」。2020年12月18日の閣議後会見。萩生田光一文科相は、前日に行った麻生太郎財務相との閣僚折衝で合意するまでを、そうふり返りました。
現行の上限は小一が35人、その他の学年は40人。両大臣合意によると、2021年度に小二を35人に引き下げ、以後、下の学年から1学年ずつ段階的に減らし、25年度に全て35人にします。
これまで萩生田文科相は、テレビ番組や会見でたびたび少人数学級に言及。「30人学級をめざす」と明言したこともありました。
財務省は負けじと10月の財政審作業部会で、少人数学級への懸念を示す資料を提出。教職員定数と子供の数の推移から「教職員は実質20万人の増加」と指摘し、学級規模と学力の相関も「縮小の効果はないか、あっても小さい」と主張しました。これには文科省も強気で抵抗し、ホームページで財務省の主張一つ一つにデータを添えて反論。両省のつばぜり合いが続いていました。
学級規模の上限は義務教育標準法で定めていて、50人の時代もありました。40人になったのは、1980年。一律引き下げは約40年ぶりです。ただ文科省が唱えた「30人」には届かず、中学校については見送りになりました。
新型コロナウイルス禍が少人数学級を後押し
教職員の数は、学級数で算出する「基礎定数」と、いじめなど現場の課題に政策的に追加する「加配定数」を足した数。学級規模が小さくなれば学級数が増え、それに応じて基礎定数も増えます。
財務省は恒常的な財政負担につながる基礎定数より、政策判断で左右できる加配で応じたい。文科省は不安定な加配でなく、基礎定数を増やしたい。そんな両者の議論が進んだ一因は、新型コロナウイルス禍。教室の「密」を避けるため、与野党や全国知事会などから少人数学級を求める声が高まったのです。加配からの振り替えや少子化で、財政への影響が小さいことも説得材料になりました。
上限引き下げの義務教育標準法の改正案は、年明けの通常国会に提出される見通しです。ただ教室不足などの課題は残っています。教員の長時間労働が定着して教員志望者が減る中、処遇改善も考えなくてはなりません。
「限られた財源をいかに有効に活用するかが大事。40人と比べて35人のほうがいいという証明をしてもらわないと」。悔し紛れかはともかく、麻生財務相は12月18日の閣議後会見で、今後の検証の必要性を説きました。35人学級は、目的ではなく、あくまで手段。教育の成果を形で示すのは難しいものですが、どんな効果があったかは、後々説明できなければなりません。
『教育技術』2021年2月号より