保護者納得の「学年末懇談会」成功へのポイント
コロナ禍に振り回された今年度。学級での取り組みや子供の成長などを懇談会で伝える際には、例年以上に保護者を納得させる必要があります。懇談会での留意点や次年度に向けて、保護者の期待に応えるようなポイントについても考えていきます。
監修/千葉県公立小学校教諭・飯村友和
目次
学年末懇談会の準備の工夫
懇談会のお知らせ
事前に配付する「お知らせ」では、安全対策のために保護者にも検温してから来校することや手指の消毒、マスクの着用に協力していただくことを伝えておきます。
スライドやムービーを用意
子供たちに「1年間での思い出」「楽しかった教科」などのアンケートをとり、結果をスライドにまとめておきます。スライドは文字だけでなく、写真があるとよいでしょう。
また子供たちの写真を準備しておき、スライドショーやムービーに編集し、懇談会の開始直前や懇談会の中で流すのもお勧めです。できるだけ笑顔のものを集め、子供の写っている枚数に偏りがないように注意しましょう。不公平感を抱かせないために、面倒でも誰が何回写っているかは数える必要もあります。
なお事前に、学年の先生にはこのアイデアを伝えておくとよいでしょう。学級差が出ないように、他のクラスでもできるようにお手伝いをするとスムーズです。写真の材料が必要なので、できるだけ早くアイデアを伝えるのがポイント。遅くとも1か月前には伝えておいたほうがよいでしょう。
次学年担当にヒアリング
次年度の行事や教科の特徴を伝えられるように、現在次の学年を担当している学年主任の先生にヒアリングを行います。例えば、四年生になったらクラブが始まることや理科室を使った理科の授業が始まること。五年生になったら宿泊学習があることや家庭科で裁縫があり、裁縫セットの注文を五年生になってからとるなど。写真があると、より伝わりやすいでしょう。
当日の教室環境の工夫
自治体のルールに従い感染予防対策を徹底
机の配置は自治体ごとのルールに従います。普段であれば、参加者同士の顔が見える、コの字型の机の配置が一般的ですが、今年度は感染予防のため、机と机の間の距離をとり、講義型の並びのほうがよいでしょう。
感染予防のために行うこと
- 検温チェック
- マスクの着用をお願いする
- 教室前に手指消毒用のアルコールを準備する
学年末懇談会当日の進行展開例
懇談会の構成例
- 感謝の言葉。
- (初めての懇談会の場合)保護者の自己紹介。
- (授業参観がなかった場合)子供たちのスピーチ動画。
- 1年間の教育活動のふり返り。連絡・お願い。
- 保護者にお願いしたいこと。
- 次年度について。次の学年の行事や教科について。
- 役員の方々へねぎらいの言葉。
- 1年間の協力へのお礼の言葉。
懇談会の進行・展開のポイント
① 感謝の言葉
懇談会の冒頭では、このような状況のなか、そしてお忙しいなか、来ていただいたことへの感謝の言葉を述べます。さらに保護者に対し、1年間の協力へのお礼の言葉を必ず伝えましょう。
特に今年度は、休校中の課題を見ていただいたり、毎日の検温があったり、例年よりも多くの負担をおかけしているはずです。最初に、保護者の協力のおかげで教育活動ができたことへの、感謝の言葉を述べるようにしましょう。
② 保護者の自己紹介
今年度は懇談会が中止され、これが最初で最後の懇談会であるという学校もあるでしょう。初めて顔を合わせる保護者もいるので、時間に余裕があれば、最初に自己紹介をしていただくのもよいでしょう。
「猫の好きな飯村です」などと、最初に今はまっていることや好きなことを言ってから名前を言ってもらったり、「猫の好きな飯村さんの隣の、鬼滅の刃にはまっている佐藤です」のように、前の人の自己紹介を言ってから自分の自己紹介をしたりすると盛り上がります。
③ 子供たちのスピーチ動画
今年度は授業参観ができない学校もあるでしょう。その場合は授業動画や一人10秒から15秒くらいの短いスピーチを撮っておき、懇談会で見ていただくのもよいでしょう。スピーチは「1年間の思い出」「来年度がんばりたいこと」など、1年間の子供の成長が分かるようなテーマを選び、きちんと指導もします。
④ 1年間の教育活動のふり返り
子供に書いてもらったアンケートや撮った写真を見せながら、1年間の教育活動についてお話しします。アンケートや写真など事前に準備したものがあると話しやすいでしょう。
また、1年間の教育活動や子供の様子については、よかったところを伝えるようにします。特に必要がなければ、マイナスなことは言わなくてもよいでしょう。
⑤ 連絡・お願い
子供たちの実態から、保護者にお願いしたいことを伝えます。
例えば、保護者から相談の多い、オンラインゲームやSNSの使い方などについて、注意を喚起しておくとよいでしょう。
まず、夜遅くまで友達といっしょにオンラインゲームをしている、保護者が「やめなさい」と言っても「友達もやっているから抜けられない」など、保護者から相談が上がっていることを伝えます。そして、学校では家庭ごとに事情があるので、家庭のルールに従うように子供に指導をしていることを伝えつつ、あくまで各家庭で管理をすることをお願いします。
スマートフォンやSNSの使い方も子供任せにするのではなく、保護者の責任で管理をすることをお願いしておきましょう。
⑥ 次年度について
次年度の学習内容や行事については、写真を見せるなど、内容がよく分かるように伝える工夫をします。
⑦ 役員の方々へねぎらいの言葉
役員を引き受けてくださった方々へも、お礼の言葉を述べましょう。仕事を抱えていたり、他にすることがあったりするなか、学校の教育活動のために多くの時間を使っていただいたことに対して感謝を伝えます。
⑧ 1年間の協力へのお礼の言葉
最後に再度感謝の言葉を伝えます。すてきな子供たちや保護者のみなさんとの出会いに感謝の言葉を伝え、終わりにします。
今年度は、感染症予防のために交流は避けたほうがよいと思いますが、例年であれば、少人数でサイコロトークをします。
サイコロの目の数に合わせて、1「スマホやオンラインゲーム」、2「我が子の好きな料理」、3「我が子のよいところ」、4「最近ほめたところ」、5「習い事」、6「家庭学習」など六つのテーマを決めて、サイコロを振って出た目に割り振られた話題で話をします。
ありがちな保護者からの相談・要望とその回答例
学習の遅れについて
年度はじめに休校があったり、分散登校があったりしたなかで、学習の遅れを気にしている保護者もいます。懇談会ではこの1年間で、どの程度学習ができていたのかを説明する必要があるでしょう。もしやり残した部分があるとしたら、それを今後どのように補っていくのかを伝えるようにしましょう。
クラス分けについて
「来年度、同じクラスにしてほしくないお友達がいます」という要望が懇談会で上がったら、「要望は要望として受け止めますが、それを約束することはできません」と伝えます。
要望に応じる姿勢を保護者全体の前で示してしまうと、「うちもお願いしたい」と次々と要望する保護者が増えてしまうことにもなります。全体の前では話題にせず、個別にお話をするようにしましょう。
中止行事について
中止行事についての質問に対しては、今年度は教科で遅れが出ないことを優先して取り組んだので、代替の行事はする予定がないなど、学校で決まったことをはっきりと伝えましょう。こうした内容の質問への回答は、学校全体・学年全体で同じ答えができるように事前に確認をしておくとよいでしょう。
ゲームやSNSについて
今年度は休校時期に外で遊べないことで、オンラインゲームをする子が増え、ゲームに関する悩みが保護者から多く寄せられています。
特に多いのが、「オンラインゲームをずっとやっていて困っている」「友達といっしょにゲームをしていて、夜遅くまで抜けられない」という相談です。
個別にお答えするだけでなく、懇談会で保護者全体に対し、学校でもゲームをやりすぎないように指導はするが、ゲーム依存になってしまう恐れがあるため、各家庭でも時間を決めるといったルールをつくるなど、管理、指導の協力をお願いするとよいでしょう。
取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎
『教育技術 小三小四』2021年2月号より