【小三・小四向け】読書指導とジャンル別おすすめBOOKガイド

中学年は、「お話の中に自分が入りこんでいた」時期から「お話を読む自分を俯瞰できるようになる」時期です。興味の幅も広がり、読む力にも差が出てきます。個々の子供に合った本を手渡すときに心がけていることを紹介します。

監修/神奈川県横浜市立緑園東小学校・学校図書館担当

小三・小四向け!ジャンル別おすすめBOOKガイド
イラストAC

読書指導の3ポイント

ポイント1 子供の興味や読書経験を大切に

これまでの生活や読書経験から蓄えられた言葉や読んだり聞いたりした言葉、文章から想像する力は、子供個々で異なります。本を手渡すときに子供一人ひとりに寄り添うことが、とても大切です。その子の興味、お気に入りは何かなど、子供との会話から見えてくるものがあります。

ポイント2 読み聞かせも続ける

耳から入ってくる言葉から人物や情景を思い浮かべる力を育てることは、とても大切です。章立てのある本を選び、「続きはまた明日ね」と次回に楽しみを取っておくことで、物語に一層愛着を感じるようになります。

ポイント3 日常から本に親しむ工夫を

一人で読書をするだけではなく、日常生活のなかに本がいつもあることがとても大切です。担任がお気に入りの本を紹介したり、係活動や集会活動を行ったり、さまざまな工夫をしましょう。

不思議で楽しいお話

お話の世界にすっぽり入り込む時期から、ファンタジーとして楽しむ時期へと成長する中学年。不思議な物語の世界に入り込んで、心を自由に遊ばせましょう。魅力的な登場人物から、いろいろな生き方も学べます。

『たんたのたんけん』

中川李枝子/作
山脇百合子/絵(学研プラス)

たんたの誕生日に、不思議な地図が舞い込みます。それは探検地図のようです。さっそく、たんたは探検に出かけます。

『くまの子ウーフ くまの子ウーフの童話集』

神沢利子/作
井上洋介/絵(ポプラ社)

何を見ても不思議に思う、くまの子ウーフ。今日はどんな不思議を見付けるのでしょうか。

『さいごのまほう』

中島和子/作
秋里信子/絵(金の星社)

もうすぐ魔法の力が消えてしまう年老いた魔女が、最後の魔法を使って…。ほんのり切なく、心温まるファンタジー。

語り継がれる昔話

語り継がれてきた昔話は、耳で聞いて分かるように書かれています。お話を聞きながら情景を思い浮かべる力は、これから一人で本を読んでいくときにも、生活していくためにも大切な力です。中学年までにたっぷりと楽しみましょう。

『日本の昔話 ①~⑤』

小澤俊夫/再話
赤羽末吉/画(福音館書店)

「はなさかじい」「したきりすずめ」「ももたろう」など、日本全国の昔話のなかから、次代に残したい珠玉の話が集められています。

『子どもに語る グリムの昔話1~6』

佐々梨代子、野村 泫/訳
ドーラ・ポルスター/扉絵(こぐま社)

原文に忠実な翻訳で、グリムの魅力を伝えます。練られた訳文は、声に出して読みやすく、子供自身が読んでも楽しめる文章です。

『イギリスとアイルランドの昔話』

石井桃子/編・訳
ジョン・D・バトン/画(福音館書店)

「ジャックとマメの木」「三びきの子ブタ」など、世界中の子供たちに読み継がれてきたおもしろい話、怖い話などが多彩に入っています。

『世界のむかしばなし』

瀬田貞二/訳
太田大八/絵(のら書店)

イギリス、ドイツ、ノルウェーなど主にヨーロッパに伝わる、愉快なお話14編が楽しい絵とともに集められています。

『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』

萱野 茂/文
どいかや/絵(あすなろ書房)

万物に神が宿ると考えて、自然に敬意を抱き、自然の一部として生きる人たちの姿が伝わります。

子供の世界を生き生きと描く

同じ世代の子供たちがさまざまに活躍する姿には、自然に興味が湧いてきます。子供たち自身の等身大の世界が広がります。

『学校ウサギをつかまえろ』

岡田 淳/作・絵(偕成社)

転校生が、うっかり逃がしてしまった学校のウサギ。夕暮れの工事現場で繰り広げられる四年生6人の友情物語。

『しっぱいにかんぱい!』

宮川ひろ/作
小泉るみ子/絵(童心社)

達也のおねえちゃんは、小学校のリレーで失敗をしてしまいます。失敗は誰にでもあるもの。そんな気持ちに寄り添ってくれる物語です。

『チョコレート戦争』

大石 真/作
北田卓史/絵(理論社)

ケーキ屋さんのガラスが割れて、そこに居合わせた明と光一が犯人にされてしまいます。大人を相手に考えた作戦とは…

ノンフィクション

本当にあった物語だからこそ迫力満点で、真に感動が伝わってきます。先人たちからのメッセージは、子どもたちの心にまっすぐに届きます。

『土の中からでてきたよ』

小川忠博/著(平凡社)

日本各地で発掘された縄文土器や石器。昔の人がどのように使っていたのかを想像すると、ワクワクします。

『しっぽをなくしたイルカ 沖縄美ら海水族館フジの物語』

岩貞るみこ/作
加藤文雄/写真(講談社)

尾びれをなくしたイルカ、フジに尾びれをつくるプロジェクトが立ち上がります。多くの人たちの協力のもと、フジはまた泳げるようになるのでしょうか?

『雪の写真家 ベントレー』

ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン/作
メアリー・アゼアリアン/絵
千葉茂樹/訳(BL出版)

雪の美しさにあこがれ、一生をかけて雪の写真を撮り続けたベントレー。素朴な木版画で綴った伝記絵本。

いろいろなことを考える

自分で考え、自分で行動することが、これからの生活で大切です。いろいろなことを知り、考え、視野を広げる手がかりにしましょう。

『10歳の質問箱 なやみちゃんと55人の大人たち』

日本ペンクラブ「子どもの本」委員会/編
鈴木のりたけ/絵(小学館)

子供の素朴な悩みに55人の作家が答えます。考え方は人それぞれ。答えは必ずしも一つではないことを子供たちに伝え、自分で考え、導き出す手がかりに。

『天使のいる教室』

宮川ひろ/作
ましませつこ/画(童心社)

小児ガンのあきこちゃんは笑顔を絶やさない天使のような子。先生とクラスメートは奇跡を願って…。実話に基づいた感動の名作。

『どんなかんじかなあ』

中山千夏/文
和田 誠/絵 (自由国民社)

友達のまりちゃんは目が見えません。「『見えない』って、どんな感じかなあ」と考えました。そして、何かに気付いたのです。

詩や言葉を味わう

詩や言葉の世界を楽しむことは、言葉に関心をもつ入り口になります。日本語の豊かな言葉をたっぷりと味わいましょう。

『のはらうたⅠ~Ⅴ』

くどうなおこ/作(童話屋)

小学校の国語の教科書でもおなじみの詩。真実のありかを見つめ、野原の動物たちや植物たちのつぶやきをまとめました。

『おっと合点承知之助 ことばをつかってみよう』

NHK Eテレ「にほんごであそぼ」制作班/編
齋藤 孝/監修(金の星社)

10年以上続く番組「にほんごであそぼ」が本になりました。名文、伝統芸能、童
謡や方言から、リズムがよく声に出して読みたい、覚えたい文をセレクト。

緑園東小学校の実践

読書カードのビンゴに挑戦」
折り紙製のしおり

図書委員手作りのしおりは、子供をいろいろな本に出合わせる仕掛けです。「読書カードのビンゴに挑戦」で、1ビンゴになったら小さなしおりが1枚、オールビンゴで、折り紙製のしおりがプレゼントされます。子供たちは、自然に新しく出合った本を読むようになります。

取材・文・構成/浅原孝子

『教育技術 小三小四』2021年1月号より

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