コロナ禍の難局で注目されている 「カリキュラム・マネジメント」【教育ニュース】
先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマはカリキュラム・マネジメントについてです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子
目次
今求められる教育課程や時間割の編成などでの工夫
新型コロナウイルス禍による休校の影響で、授業時間をひねり出すのに苦労している学校も多いことでしょう。
この難局に注目されているのが、「カリキュラム・マネジメント」。教育課程や時間割の編成などで多様な工夫が求められています。
文部科学省がこのほど、コロナ禍を受けたカリキュラム・マネジメントを巡る教育委員会や学校の取り組みを、ホームページで紹介しました。感染症対策と子供の学びの保障を両立する考え方について、5月に各教委に通知した内容に沿った事例です。
ある教委は、年間指導計画などを再編成する際の考えを提示。年間の授業時数の見込みを算出したうえで、全教科の指導計画を見直し、関連する単元の統合や教える内容を選び抜く改善案や教科ごとの見直しプロセスを示しました。
別の教委では、感染予防に配慮した授業アイディアのリーフレットを作成。子供たちに話合いをさせるときにどうするか。一度に大勢が発言せずに子供の意見を確認するには。そんな悩みと対応策をQ&A形式でまとめました。
時間割の工夫も取り上げています。例えば、小学校で40分の短縮授業を基本に時間割を組み、短縮で生じた時間を活用して1週目は週3日の7時限授業と1日の補習を実施。翌週は発達段階を考慮し、7時限授業を減らして負担を軽くするなど柔軟な組み立てを示しました。他にも学級活動の重点化や、学校行事の見直し方針例を紹介。
「カリマネ」で組織的、計画的に教育の質の向上を図る
ところで、カリキュラム・マネジメントとは何でしょうか。
言葉自体は前からありました。ただ、本年度から全面実施の小学校学習指導要領で重視され、「カリキュラム・マネジメントの充実」が謳われています。
小学校で英語が教科になり、コンピュータのプログラミング教育が始まり、学習内容も増加。それに伴い、自校の状況に応じた時間割や授業を組み立て、指導効果を高める工夫が学校に求められました。
指導要領の総則にもカリキュラム・マネジメントについて記され、「教科等横断的な視点で教育内容などを組み立てる」「教育課程の実施状況を評価し、改善する」「必要な人的・物的体制を確保する」などを通じ、組織的、計画的に教育の質の向上を図るよう促しています。
要は自校の特色を踏まえ、学校として何を目標に教育を進めるかを明確にし、教科や学年のつながりも考えカリキュラムを組んで動かし、評価と改善を重ねて、学校を切り盛りすると言えるでしょうか。それには校内の体制づくりに加え、学校の考えを家庭や地域と共有することも欠かせません。「子供が自ら問いを立て、多角的に考え、問題解決する力」が近年、重視されています。でも、めざす教育の具体的な中身は、学校によって異なるでしょう。みなさんは先行き不透明の時代を生きる子供たちに、どんな力を身に付けさせたいですか。
『教育技術』2020年10月号より