オンライン授業【教育用語】

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新型コロナウイルス感染症の拡大により、「オンライン授業」が注目されるようになりました。教室に行かなくても授業ができることに利便性を感じる人もいれば、子どもたちが感じる「オンライン疲れ」に頭を抱えている先生もいます。教育のデジタル化が進んでいないことを実感した人も少なくないことでしょう。そこで、今回は「オンライン授業」を取り上げます。

執筆/筑波大学特任研究員・田中 怜

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同時双方向型とオンデマンド型

オンライン授業の定義は様々ですが、
①同時双方向型(リアルタイム配信型)
②オンデマンド型(課題配信型)

の2つに分けるのが一般的です。

同時双方向型とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの機器を使用して、相手とリアルタイムで互いにコミュニケーションをとる方法です。教室の中で行われている先生と子どもの「対面授業」を、そのまま電子空間に移動させるイメージです。

一方、オンデマンド型とは、授業の資料やあらかじめ撮影しておいた授業動画をネット上にアップロードし、子どもたちがそれぞれダウンロードした資料で学習を進める方法です。自分のリズムに合わせて好きな時間に映像を視聴しながら勉強ができるスタイルです。

オンライン授業のメリット

2020年3月、日本中の学校で休校措置がとられ、対面式の授業が実施できないという未曽有の事態が発生しました。そのような状況のなかで、全国の小・中学校でオンライン授業が手探りで試みられるようなりました。オンライン授業の最大のメリットは、先生と子どもが一堂に会する「教室」という場を必要としない点です。そのため、教室での授業ではできなかった多くのことが可能になります。

第1に、遠く離れた地に住む子どもに対しても等しく教育を提供する「遠隔授業」ができます。これにより地域によって生じていた教育格差を解消する道が拓かれています。

第2に、空間的制約のないオンライン授業のメリットを生かせば、外国に住む人々との交流も一層スムーズになります。例えば、社会科の授業で地球の反対側の国の人々とやり取りすることや、英語の授業で「ネイティブスピーカー」とコミュニケーションをとることができるようになるでしょう。

ほかにも、不登校の子どもがオンライン授業には抵抗なく参加しているなどの事例が報告されています。

こうしたオンラインを生かした授業は、対面式の授業を行う場合でも応用可能なものであるため、大きな可能性を秘めています。

克服すべき課題

オンライン授業の普及には乗り越えるべき課題も少なくありません。最大の問題は、日本の学校における環境の未整備状態です。国際的に比較して、日本は学校でデジタル機器を備えている割合が極めて低い国の一つです。OECDが実施しているPISAの調査(2018年)では、日本では実に約80~90%の子どもたちが国語・数学・理科の時間でデジタル機器を利用していない実態が明らかになっています。

オンライン環境の地域間格差も指摘しなければなりません。内閣府の2020年6月の調べでは、「学校の先生からオンライン授業を受けている割合」は東京23区で26.2%、地方圏ではわずか6.7%、全国では10.2%でした。オンライン授業をする機会に大きな差があることがわかります。

この数値を踏まえると、オンライン授業に慣れ親しんでいない先生や子どもたちがまだまだ圧倒的に多いといえそうです。なおこうした差は、住んでいる地域の違いにとどまらず、家庭の経済的な格差などとも関係していることが明らかとなっています。

このような状況で、慣れないオンライン授業で新しいことをしようとすると、先生は空回りをして児童生徒は混乱してしまいます。オンライン授業をするからといって、授業の内容や方法を丸ごとリニューアルする必要はありません。特に同時双方向型のオンライン授業であれば、今まであった「教室」が各家庭の「机」に、「黒板」が「パソコンの画面」に替わった程度の認識から出発することも大切です。オンデマンド型でも、無理に新たな教材を作ったり授業動画を編集したりする必要はなく、最初は授業風景をそのまま録画したものをアップロードする取り組みから始めるだけでも十分です。

大事なのは、子どもの実態に合わせながら、オンライン技術を授業に少しずつ馴染ませていくことです。

オンライン授業の可能性

オンライン授業は将来、教育にどのような可能性をもたらしてくれるのでしょうか。海外の多くの国でも、オンライン授業において多様な取り組みがなされており参考になります。

ドイツは、2016年から政府機関と研究所の協力で「学校クラウド(schul. cloud)」という学習アプリの開発に取り組んでいます。このアプリの特徴は、自分のノートパソコンやスマートフォン、タブレットを使って登録すれば、先生も児童生徒も簡単にアクセスできる点です。授業で使用可能なデジタル教材が数多く用意されており、映像や音声を伴って学習を進めることができるようになっています。コロナ禍で対面での授業実施が困難になると、この「学校クラウド」は政府により無償開放が決定されました。

このような便利なシステムが登場すると、「教育や授業の姿が様変わりしてしまうのでは?」、「教師の役割が小さくなってしまうのでは?」という懸念もあります。しかし子どもたちの「学び」の支援に特化したシステムは、「何をどう教えるべきか」という点に答えを与えてくれません。いろいろな教材は用意されていても、教育内容を適切に選び、それを使ってどのようにいい授業をするかは、あくまで教師の役割です。

オンライン授業のような新しい技術の登場は、それに合わせた教育観の変容を私たちに要求しがちです。しかし本当に大切なことは、私たちが日々よりよい教育をめざし、オンライン授業のような新しい技術を使い馴らしていくことでしょう。

同時双方向型でもオンデマンド型でも、これからオンライン授業に取り組む必要がいろいろな場面で出てくるはずです。その機会を利用して、新しい学び方を発見していくことが必要ではないでしょうか。

▼参考文献
国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」2019年
多喜弘文・松岡亮二「新型コロナ禍におけるオンライン教育と機会の不平等〈プレスリリース資料〉」2020年
内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」2020年

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