小学校低学年向け オンライン授業のポイント!
コロナ禍で突如、注目されるようになったオンライン授業。オンライン授業を始めるにあたって、学校全体での協力体制は不可欠です。ICT環境の整備はもちろん、学年でチームを組んだり、学校全体で方針を決めたりして、みんなで協力しながら推し進めることが重要です。ここでは、オンライン授業を始める際に、押さえておきたいポイントをQ&A形式でまとめました。
監修/埼玉県公立小学校教諭・村上健也、宮城教育大学附属小学校教諭・三浦秋司
目次
オンライン授業全体について
Q1 オンラインに適した環境は、どのようにして整える?
A. まずは、学校全体で研究会などを立ち上げ、統一基準づくりから始めましょう。コンピューターの操作技術や機材について、オンデマンド型授業の配信や双方向型授業への接続ペースなどについても、この場でアイデアを出し合い、情報を共有します。そのうえで、コンピューターに精通している先生が中心となって、学年ごとに細かなところまで決めていくとよいでしょう。
各学年では、「算数はA先生」「国語はB先生」など教科ごとの担当者を決め、お互いに授業動画を撮影するのがおすすめ。すると、クラス担任一人ひとりがすべての教科の動画を撮る必要がないため、個人の負担が減ります。また、担当教科の動画研究にもじっくり取り組めるため、質の向上にもつながります。
その他、撮影、編集、配信など、学年ごとに各作業の係を決めておくと、授業動画の配信が継続しやすくなります。
Q2 保護者との連携のポイントは?
A. 動画を見る手順、配信予定などを、あらかじめ保護者には伝えておきましょう。
各家庭の端末の操作には、保護者のサポートが欠かせません。機械操作に不慣れな保護者でも操作しやすいように、手順書を配付したり、電話での問い合わせ窓口などを設けたりすることが必要です。
また、子供が配信された動画を見たかどうかのチェックや、課題として出した練習問題の丸付けなどの協力をお願いする際も、学校側の姿勢や考え方をていねいに説明して理解を求めることが大切です。
Q3 オンライン授業の際に気を付けることは?
A. 直接のアクセスだけでなく、YouTubeなどの利用も検討しましょう。各家庭から学校のパソコンに直接アクセスする方法では、授業動画のデータ量やアクセスの集中によって、「つながらない」「動画が見られない」といった不具合が生じることも。無料の配信ソフトを利用したり、YouTubeにアップロードした動画を各家庭で視聴してもらったり、双方向型授業に偏らない工夫をしましょう。
また、使用するソフトやサービス、課題の出し方などに関して学校全体で統一すると、きょうだいがいる家庭での混乱が少なくなり、使いやすくなります。学校側も、例えばリモートワーク中でクラス担任や担当者が不在の場合でも、家庭からの問い合わせに対応しやすくなります。
オンデマンド型授業について
Q1 授業動画の時間の目安は?
A. 1本10〜15分にまとめるのがベストです。低学年が、授業に集中できる時間は長くて15分程度。それを考えると、授業動画も1本を10〜15分でまとめるのが理想的です。
特に、一方的に解説を聞くオンデマンド型の授業は、子供たちも飽きてしまいがち。1本ごとに伝えるべきテーマを絞って、内容をコンパクトにまとめるのがおすすめです。
Q2 授業動画を撮影するときのコツは?
A. 基本的にはふだんの授業通りでOKです。カメラで撮影されていると緊張するかもしれませんが、ふだんの授業と同じように、黒板にチョークで数式や漢字を書いたり、展開図などの紙を貼ったりして、子供たちに説明するのが基本です。さらに「子供たちのリアルな反応を想定して、少しゆっくりめに話す(間をあける)」「伝わりやすいように、声を大きめにする」「(スマートフォンなど小さい画面でも読みやすいように)字は大きめに書く」などに気を付けるとよいでしょう。
Q3 撮影には専門的な機材が必要?
A. スマートフォンやタブレットなど、今あるものを活用しましょう。動画撮影に、音声マイクやカメラなど専門的な機材を揃える必要はありません。スマートフォンやタブレットのカメラ機能を使えば、十分に撮影が可能です。スマートフォンやタブレットは、画面が揺れないように固定しますが、専用の三脚がなくても大丈夫。本や段ボールなど、身近なものを利用して、高さや位置を調節する工夫をしましょう。
双方向型授業について
Q1 双方向型に向いている授業は?
A. まずは、朝の会や帰りの会などに活用するのがよいでしょう。双方向型は、画像や音声を通じてリアルタイムに子供とコミュニケーションがとれるため、健康観察や担任とのコミュニケーションなどに活用できます。体調を確認したり、じゃんけんゲームをしたり、「朝ごはんがパンだった人、手を挙げてください」と問いかけたりするなど、オンラインでのやりとりを楽しみましょう。こうした「雑談」の時間は、休校中で人と触れ合えないというストレスを軽減することにもつながります。
Q2 双方向型の授業のコツは?
A. 双方向型のオンライン授業の場合、数人が発言すると、騒がしくなりすぎて先生の指示が届かなくなってしまいます。発言は一度に一人だけ、自分が発言しないときはミュート(無音)にしておくなど、基本的なルールをつくりましょう。「手を挙げる」「両手で〇をつくる」など、声を出さなくても意思表示する方法も伝えておきます。
構成・文/ひだいますみ イラスト/きつまき
『教育技術 小一小二』2020年10月号より